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第1章

第9話

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こうして始まった私の家政婦ライフは
はじめのうちはもう壊すことが怖くて
ひとつひとつ丁寧に掃除をすれば
終わるのはほぼ夕方ごろになって
ヘトヘトだった。

接待のない日は家で食べると言っていたけど
ほとんど夜遅くに帰ってくるし
たまに早く帰ってきたと思えば
美女連れである。

はじめは彼女がいたのか!
やっぱりイケメンだからいるよね!

なんて思っていたら
また別の日に違う女性を連れて帰ってきて

思わず次の日の朝聞いたのだ。

彼女ですか?

と。

すると社長はシトラス入り笑顔で
ワンナイトだよ。

と言った。はーと付きで。


その瞬間
あ。うん。クズ確定。
そう結論に至ったのだ。

そりゃあ最初はブスブス言われたけど
やっぱり社長はイケメンだし
そんな彼と2人きりの生活に
少しばかり…いやものすごく何かあるかと
期待したけども!

最初に連れてきた女性をみて
少しだけ…いやかなりがっかりしたけども!


2人、3人、4人…と知らない女性を
見るたびに
私の中での社長の地位がどんどん、
どんどんと下降していった。

それも美女揃いで中には絶対に
誰にも言えない芸能人だったりモデルだったり。

もうそれを目の当たりにして
あ、私に間違ってもお手つきはないわ。
と嫌でも確信する。

しかし不思議なことに今まで訪れた
美女たちは一度も乗り込んでは来なかった。

社長はイケメンだけどすごく優しい(本当はクズ)から本気になる人だって多いはず。

現に連れられてきたほとんどの女性の目は
真剣そのものだった。

家に入れば私がいて
チラリと鋭い視線を投げるも
私の姿を見とめたあとは
みんな揃ってふっと鼻で笑いながら
社長にしな垂れかかる。

[私のが上ね。]

と言っているかのように。


そんな彼女たちが一度も乗り込んでくることが
ないのが不思議で仕方なかった。

まぁそんなこんなで
はじめは器物破損しないかヒヤヒヤとしていたけども
3ヶ月も過ごせば慣れてくるものがある。

最初のインパクトが強すぎた社長も
それ以降はちゃんと私を名前で呼ぶし
それなりに良好な関係を築けていると思う。

そうは言ってもほとんど顔を合わすことがないので
1月に3回会えたらいいくらいだ。

ほとんどこのだだっ広い家に
1人で住んでいるのだと錯覚するほどに
私はこの生活に慣れてしまったのだろう。


あてがわれたお部屋は客室の一つらしいが
自分の部屋の何倍もの広い部屋で
インテリアひとつひとつがもうお洒落。

そんなこんなで
3ヶ月も過ぎた間に
すっかり備え付けられていた
本棚には私のだーいすきな
異世界物語のコミック、文庫本、
アニメDVDがたくさん並べられている。

「なんだかんだ実家にいた時とほぼ変わらない生活だけどお給金が素晴らしいおかげでたっくさん読み放題だわ!」

社長ありがとうー!

と心の中で叫ぶ。

自立を決意したものの
こんなんでいいのかとも思うが。
とりあえず社長から頂いている
お給金の半分は両親に仕送りしている。

それでも多いお給金はほとんど
貯金していて
(いつかここを出るときに社長に賃貸料として返すつもり)
それで残り余ったお金で
大好きな趣味に投資しているのだ。

「やっぱり悪役令嬢転生ものが一番すき!」

さっき買ってきたばかりの新刊を
読み終わった後興奮冷めやらぬまま
独り言を言う。

主人公の時点で悪役じゃないじゃん
ヒロインじゃん。

といつも突っ込みつつも面白すぎて
読み漁るんだけど。

「あぁ。私も転生したい~」

リアルに不満があるわけでもないし
痛い思いもしたくないし
大好きな家族だっている。

だけど異世界転生には憧れる。

ヨーロッパ風の街並みで
魔法が使えたり
レベル違いの王子と恋に落ちたり。

もしそんな世界に行けることができるなら
私は迷わず冒険者になるだろう。

日本とは違う世界を全部堪能したいじゃない?

どこがどう違うのか
その世界のステキな場所を
この目で直に見て確かめたい。


異世界のお料理も気になる!

美味しかったりまずかったり。
知らない食材にヘンテコ名前の食材。
馴染みある食材なのに名前が違ったり。

結局空想上の世界だけど
物語を読むことで
その世界に入った気にさせてくれるのだから
この趣味はやめられない。


私はただ現実逃避をしているだけなのか
わからないけども…。


はぁー。とため息がこぼれた。

「そろそろ夕食の用意するか。」

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