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サラの片思い

サラの片思い14

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結局午前中は集めた花びらで
押し花にしてしおりを作ろうと思い
図書館で分厚い本を借りてきて
押し花を作った。

昼休みになると昨日に引き続き
マーケル様がやってきて
四人での食事が始まった。

相変わらずマーケル様はアインス様がいるのに
臆せずにシェニー様に話しかけている。

私はなんとか愛想笑いを浮かべて
その場を凌いだ。

午後になって教室に向かえば
鋭い視線を感じたと思ったら
レイニー様達が私をものすごく睨んでいた。

なんだかこの時背筋に悪寒が走ったような
気がしたけれど単なる気のせいだと思うことにして
授業に取り組んだ。

次の日から些細な嫌がらせが始まるとは
この時は思ってもいなかった。


「あれ?ない?」

次の日授業の合間に
少し席を外しただけなのだが
自分の机の上に置いてあったペンと教科書が
見当たらない。
カバンの中にしまったのだろうかと
探ってみてもない。
入れた覚えはないのだからあるはずもないのは
わかっている。

また隠された。

学園に転入直後良くモノがなくなっていたから
おそらく今回も誰かに隠されたのだろう。

そう思って教室を見回す。

いつもなら片隅に無造作に置かれていたり
するのだけど今日はどこにも
見当たらなかった。

次の授業の教師は厳しくて
忘れ物や遅刻は厳禁だ。

とりあえずまだ数分あるのを確認してから
教室を後にした。

アインス様と親しくなってから
嫌がらせはほとんど減っていた。
シェニー様ともお昼を共にしてから
尚更少なくなった。

これも二人のおかげだ。

なのに自分は未だにシェニー様に弁解できないでいる。

二人で話すタイミングがないと言えば
言い訳になる。

一度アインス様ときちんと話し合ってから
シェニー様ともちゃんと話したい。

探しながら考えていたけれど
いっこうに見つからない。

どこに隠されたのか見当がつかなくて
途方に暮れてしまう。

とりあえず教室付近の廊下など
あちこち探し回るも見つからず
知らないうちに噴水のある中庭まで
やってきていた。

このまま教室に帰っても
教師に怒られるだろう。
もういっそのことサボろうかと
とぼとぼ噴水前までくると
いつもは落ち葉一つないきれいな噴水の中に
見慣れた本が数冊浮かんでいるのが見えた。

嫌な予感がして急いで噴水を覗き込めば
いつも自分が使っている教科書が
噴水に投げ込まれていた。

「ひどい…。」

これまでの些細な嫌がらせや中傷は
それほどきついものではなかった。

教科書を隠されたりしても
使えなくなるようなところに置かれたり
汚されたりはなかった。

私は手を伸ばして教科書を拾おうとするけれど
大きな噴水の中央のほうにあるので
小柄な自分では手が短くて届かない。
台に手をついてなるべく前のめりに手を伸ばしても
届かなかった。

取りに噴水の中に入れば水浸しになって
午後の授業は全て受けられなくなる。
だけど早く取らないと教科書がダメになってしまう。

少し躊躇ったのち決心して
なるべく濡れないようにドレスの裾を持ち上げて
噴水の中に入ろうとしたら
それよりも先に自分より長い腕が伸びてきて
あっさりと教科書を拾ってくれた。

「誰がこんなひどいことを。」

小声で呟くのを聞いて
私は拾ってくれた人に視線を向ける。

「マーケル様」

私は拾ってくれたひとがマーケル様だと知って
目を丸くする。

マーケル様は拾い上げたビジョ濡れの教科書をみて
悲痛な面持ちになった。

「君はいつもこういうことされてるの?」

「いつもはここまで酷くはないので…。」

問いかけられたから素直に答えたら
マーケル様はより一層険しい顔つきなった。

「ここまで酷くはってことは頻繁に嫌がらせを受けているんだね。」

言われて素直に言ったことを後悔する。

「でっでも本当に些細なことなので今日のはたまたまというか」

「たまたまでこんな嫌がらせがあっていいというの?」

尚も険しい顔のまま言われて
私は押し黙ってしまう。

「…誰がこんなことをしたのかわかる?」

誰かと言われて咄嗟に思い浮かんだひとが
いたけれど憶測だけで判断してはいけないと思い

「…いえ知りません。」

俯いて答えると
ふぅというため息をマーケル様が吐いた後
一歩私に近付くと
ハンカチを取り出してから
私の頭を優しく拭いてくれる。

その行動に思わず顔を上げると
至近距離にマーケル様の顔があって
ドクンと心臓の音が跳ねる。

「水しぶきで髪が濡れてたからね。」

拭い終わるとそのまま視線を私に合わせて
優しく微笑まれる。
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