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サラの片思い
サラの片思い6
しおりを挟むシェニー様が倒れたことを
知ったのは3日後のお昼休みだった。
朝から王太子様が一度も来なくて
周りがついに飽きられたんだ。と
色々言われながらも
私は自分が前よりも周りのことを
気にしなくなっていることに
気づいた。
慣れってすごいわね。
むしろシェニー様が傷つくから
王太子様は来ない方がいいなんて
思うし。
…マーケル様にも誤解されるのは
嫌だしね。
そこまで思ってから
自分の存在自体、マーケル様は
知らないのだろうな。
って思うと悲しくなる。
どこまで初恋を拗らせてるのか…。
「ふぅー…」
とため息が小さく漏れる。
外に目をやれば
マーケル様がいつものように
木陰にくるのが見えた。
相変わらずの見目麗しい姿に
見惚れてしまう。
たった一度それもずっと昔の
子供の頃の話なのに。
今でも胸が締め付けられるほど
私はマーケル様が好き。
まだ学園に来るまで。
お爺様に引き取られてから
平民から貴族になった時
いつか絶対マーケル様と結婚する!
なんて思ったのに…。
「貴族同士なのに身分差があるなんてねー…」
マーケル様は今日も誰もいない
ベンチをじっとしばらく眺めていた。
そんな日が3日続いた翌日。
学園内は少しだけ騒ついていた。
3日前からシェニー様と王太子様が
休まれていた。
3日も。
何故休まれたのか知るものが
いないため、いろんな噂が
飛び交っていた。
そして4日目に王太子様だけ
学園に登校してきたのだ。
「サラ、久しぶり!」
3日も休んでいた感じを見せない
王太子様。
だけど随分とお疲れの様子だった。
「お風邪でもひかれたのですか?」
心配になってそう聞けば
「ん?あー…サラには後で話す。」
どこか歯切れ悪い王太子様だ。
シェニー様も休まれていたし
2人に何かあったのでは?
と心配になる。
心配になりながらも授業は
きちんとでてからお昼やすみ。
「実はシェニーが倒れたんだ。」
悲痛な面持ちで言われた言葉に
私は驚きを隠せなかった。
「…え?」
「サラがあの後去ってからシェニーが倒れてしまって…」
シェニー様が倒れた?
あんなに元気に王太子様と
喧嘩していたのに?
「昨日やっと目を覚ましたから少し安心したんたけど、公爵に追い出されてさ。」
そう笑いながらいう王太子様だけど
心配なのがありありと伝わってくる。
王太子様は経緯を話していたけれど
私の耳には入ってこなかった。
シェニー様は毅然としてて
だけどどこか儚げだった。
私からみたシェニー様は
いつもどこか気を張ってるように
見えてた。
そう見えてたはずなのに…。
「私が…私が王太子様のそばにいてシェニー様を傷つけたから…?」
思わずドレスを強く掴んでしまう。
皺になるから。
令嬢がみっともない。
お爺様に怒られるたびに
強く握れば
直すようにまた叱られる。
それでも治らなかったこの癖。
王太子様は皺になったドレスを
一瞬だけ見てから
私に向き直ると優しい眼差しになる。
「サラは悪くない。俺がやり過ぎただけだ。」
そう言ってくれたけど
私は納得なんてできなかった。
私が王太子様と一緒にいたから。
好きな人が知らない女の子と
一緒にいれば
誰だって不安になる。
私だってマーケル様が特定の人と
ずっと一緒にいて
それもニコニコと笑い合っているのを
見れば悲しくなる。
マーケル様の場合、
シェニー様をお慕いしてるから
他の女性に目をくれることは
今の時点ではないと思う。
だから視界にさえ入らない私だけど
そこまで傷つくことはない。
だけどシェニー様は違う。
目の前で好きな人と笑い合う
女の子を見たんだから。
どうしてあの時ちゃんと
誤解だと言えなかったんだろう。
信じてもらえない。なんて
思ったせい?
マーケル様にこんなとこ
見られたくないって思った?
それともまた虐められることが
怖かったの?
わからない。
わからないけど
私は取り返しのつかないことを
したんだ。
「…はい。」
私はそう一言だけ返すと
その後に続く言葉は出てこなかった。
そしてそのままその日のお昼は
普段とは違ってお互い話すこともなしに
昼休みは過ぎていった。
シェニーが学園に戻ってこられたのは
それからさらに3日後だった。
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