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シェニー視点

彼の隣と罪悪感

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◇◇◇
 
マーケル様とお昼を一緒に食べた日から
彼は本当に毎日のようにやってきて、
お昼をともに過ごすようになった。
 
彼の話は海の向こうの大国の話や生徒会の話、この国の未来の話。
どれも興味深くとても面白かった。
 
彼と話すようになって彼は小説通り、
とてもおだやかで優しく
彼を取り巻く空気は
とても居心地がよかった。
同じ3公なのにどうして
交流がなかったのだろうか。
 
国王様の誕生の祝宴の時も社交界の時も、それ以外でも会う機会はあったはずなのに。

とそこまで思ってとなりに座っている
アインス様に視線を向けた。
 
彼はものすごい視線を
マーケル様に向けている。
そんな視線に気づいているはずの
マーケル様はいたって気にもせず
目の前に座っている私と楽しく談笑してくれる。
 
それまでアインス様は
いつもサラさんの隣にいたのに
マーケル様がきてからサラさんの隣は、マーケル様で私の隣はアインス様になった。
 
 
昼食もはじめは、アインス様はサラさんに作ってもらっているお弁当だったのに、
マーケル様が私にぜひ
ノイッシュー家自慢の昼食をと
持ってきてくれて食べようとしたら、
アインス様がいきなり私の顎をつかみ

「シェニー。そういえば昨日の夜食べ過ぎた。と言っていたよな。
だったら今日はお昼抜きでいいんじゃないか。」
 
「あ、そういえば今日放課後、俺の母上と王妃教育するって言ってたな。
今のうちに教室に戻って予習しとけ。」
 
半ば強引に追い出された。
ちなみに前日の夕食を食べ過ぎたなんて一度も言っていない。
 
そしてなんと次の日からマーケル様に対抗するかのように
王家専属のシェフをその場でよんで熱々の料理を私たちに振舞ってくれた。
 
アインス様はどうやら
彼のことをあまり好きではないらしい。
だから私に仲良くしてほしくなくて
子供のころから
会わせないようにしていたに違いない。
 
じとっと見ていた私の視線に気づき
 
「なんだよ。」
 
と笑って私の頬を軽くつねった。
 
サラさんの前でこの人は何をしてくれているのだろうか。
 
サラさんのほうを見ると
下を俯いていた。
 
あ。
 
その瞬間、罪悪感に苛まれてしまった。

私は自分のことばかり
考えていたのかもしれない。
理由はマーケル様だったとしても
私の隣に来てくれるアインス様。
彼女の作ってくるお弁当がなくなったこと。
 
私は内心すごくうれしかった。
今彼女ではなく私が彼の隣にいるということが。
 
なんて卑しい考えなのだろうか。
途端に心は重くなって
持っていたフォークとナイフを置く。
 
やっぱり私は悪役令嬢なんだわ。

「シェニー様?ご気分がすぐれないのでしょうか?」
 
「シェニー様。大丈夫ですか?」
 
三人は私を心配してくれる。
 
「・・・・ぼーっとしておりました。大丈夫です。ありがとうございます。」
 
作り笑顔をしてしまった。
ちゃんと笑えてたかな。
 
「ふー。なんかあったら言えよ。」
 
とアインス様はため息を漏らして
また私の頬を今度は優しくつねった。
 
それに私は反応することができず
苦笑いを浮かべた。
さっきのサラさんのさみしげな瞳が脳裏に焼き付いて忘れられなくなってしまった。
 
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