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清風の頃
洒涙雨
しおりを挟む「また雨だね」
ぱらぱらと、細い雨が窓を打ち付ける。
ちょっと晴れたと思ったら、直ぐ雨が降る。梅雨はこれだからダメだ。おかげさまで、外でするドラマの撮影が進まなくて(晴れの日でという指定が入っているとなおさら進まない)、帰りが遅くなったり、予備日に持ち越しとなったりと大変である。
俺自身は台本覚えて行くだけだからまだいいけど、パパは他のタレントさんの面倒も見ているから、どこかの現場で一つ予定が狂うとバタバタだ。今日も俺を他のスタッフさんに任せて、自分はどこかの現場に行ってしまった。
自力で帰れないのでスタッフさんに送って貰ったのだが、パパはまだ帰って来てないようだ。電気を点けるまで暗かった部屋は、少し寂しい空気。
一人で居るのもつまらなくて、幼馴染みに電話を掛けてみた。この間、部屋に遊びに行った方。実家が隣同士で、胡散臭い表情をよく見せて、ご先祖様に菩薩が居る菩薩の末裔君。バイトに行っているかもと思ったけど、予想に反して直ぐに出た。危うく、携帯を落としそうになる。
『どうしたの?』と、電話の向こう側で笑う気配がした。
「なんでもないよ」と素っ気なく返して、ぱらぱらと音がした方を見る。
真っ黒な窓に、雨粒がついている。
「雨が降ってきた」
『こっちはお昼頃に強く降ってたよ』
「そうなの? 今日は中に居たから気づかなかった」
『今日も撮影?』
ちょっとだけ固い声音で問われる。珍しい声だなと思いながら「そうだよ」と答えた。
しばらく会話に空白が出来てから、末裔君が口を開いた。
『七夕に降る雨は誰のせいか知ってる?』
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