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「ヒトリニナリタクナイ」
しおりを挟む暗闇の中でふと目を覚ますと、スマートフォンの灯りが目に入った。ゆっくりと寝返りをうって、灯りのもとを探す。
床に敷いた布団にパパが入っている。その手には、私物のスマホがあった。灯りの原因はこいつだ。
掛け布団を巻きつけたまま、ごろんごろんと転がって、ベッドからパパの隣に落ちる。
パパが驚いた様子で俺を見ていた。まあそれもそうだろう。ベッドから大きな子どもが落ちてきたのだから、当然といえば当然である。
パパがスマホの灯りを落とす寸前で、見ていたものがちらりと見えた。幼馴染みの姉から送られて来たメールだ。
「あぶねえな」
「スマホ見ながらにやにやするとか…………へんたい」
「誰が変態だ。さっさと寝ろ」
「パパも寝ろ。シワが増えるぞ」
「シワなんかないわ」という文句を聞きながら、いそいそとパパとの距離を詰めて、ぺたりと背中にひっつく。「暑い」と言われたけど、無視した。俺が寒いから良いのだ。
まだ告白してないようだけど、パパと幼馴染みの姉が付き合うのは規定路線だ。だって、仲が良いもの。見えない糸で繋がれてるっていうのは、きっとこの二人のことを言うんだと思う。出会いが漫画やアニメで見るそれだったから、くっつかない方がおかしいし、お姉さんを昔から知ってる身としては俺が信頼してる男と添い遂げて欲しい。
でもなあ……と寂しくなる心もある。
小さい頃から、いつか誰かのお嫁さんになるんだろうなあとは思っていた。そのいつかは、もっと先のことだと思っていたけれど、あっという間に来てしまった。
そしてパパも、お姉さんのものになる。この家は、今はパパと俺の家だけど、やがてパパとお姉さんの家になる。
いつまで、パパと暮らせるかな。俺、いつまでここに居ていいのかな。邪魔だから実家に帰れと言われたらどうしようか。実家には戻りたくない。また母親と喧嘩してしまう。俺が一番わかっている。
考えてたら、胃がもやもやとしてきた。
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