Salut d'amour

Prologue Ⅱ

中学校最後のコンクール。
僕たちは結構強い学校だったので結構期待されていた。
課題曲は、「マーチ「プロヴァンスの風」」だった。完璧に仕上げた。
自由曲は「吹奏楽のための神話～天の岩戸の物語による～」だった。完璧に仕上げた。

きっと大丈夫。いける。

僕は念仏のようにずっと唱えていた。

禿げかかったおじさんが出てきた。いよいよだ。
「えー、全日本吹奏楽コンクール京都府大会A部門三日目結果発表並びに表彰式を行います。なお、金賞の場合は「ゴールド」をつけさせていただきます。
プログラム51番、京都市立神崎中学校…銀賞。
プログラム52番、京都市立五条中学校…銅賞。
プログラム53番、京都市立峰ヶ丘中学校…ゴールド金賞！」
『きゃあっ！』
「…プログラム54番、亀岡市立南輝中学校…ゴールド金賞！」
『きゃあっ！！』
僕たちは57番だ。金賞校の嬉しい悲鳴が響いている。
「プログラム55番、京都市立梅山中学校…銅賞。
プログラム56番、京丹後市立中宮中学校…銅賞。」
次だ。握る手に力がこもる。隣に座っている女子は今にも泣きそうな顔をしている。
「プログラム57番、長岡京市立池端中学校…ゴールド金賞！」
『きゃあっ！！！』
嬉しい悲鳴が上がるとともに、周りの力がすっと抜けた。
しかし、これは第一関門だ。関西大会へ進むには、金賞校の中から選ばれなければならない。
「…………プログラム74番、宇治市立宇治川中学校…銀賞。」
また隣に座っている女子が今にも泣きそうな顔をしている。
これで外れたら話にならない。あんなに頑張ってきたのだから。
「それでは、関西大会への県代表校を発表致します。なお、代表校数は3校です。………。
プログラム6番、」
『きゃあーっ！！！』
おじさんが言い終わる前に大きな声が上がる。
「プログラム31番、」
『きゃあーっ！！！』
「プログラム47番、」
『きゃあーっ！！！』


ダメだった。

俗に言う“ダメ金”というものだ。

もうおじさんの話なんか頭に入ってこない。

ダメ金なんだ。そうだ、ダメ金………。


隣の女子は涙を流していた………。