62 / 199
62.I want to know you more④
しおりを挟む
彼の顔が近づくにつれ、同じように自分の顔を見られていると思うと羞恥心もMAX。お互いの身体の隙間からなんとか手を伸ばし、指先で天井の方を示した。
「っ...恥ずかしいから、電気...を」
「消してください」というな否や、その願いを最後まで言い終わらないうちに指は絡めとられられ、ベッドにその手は縫い付けられてしまう。そして、唇を難なく奪われ、息継ぎが上手くできなくなるような深い口づけの連続。
さっきソファーでしたものと同じようだったけれど、逃げ場がない。私は舌を絡ませ合う唇の交わりにいつしか夢中になり、気がつくと煌々とした蛍光灯の灯りは、薄い暗い蛍火のようなものに変えられていた。
「あ...っ.......ふぁっ...」
時々、唇が離れると吐息が漏れる。それは先ほどとは違い、顔だけでなく、他の部分にも唇を這わされているから。同時に彼の黒髪が肌の上を緩やかに撫でてゆく感覚が伝わる。その2つの刺激に翻弄され、それが繰り返されるたび、身体の奥が疼くような熱がジワジワと内側から広がってゆく。
私の反応を探るように彼が触れる範囲はだんだんと広がり、いつの間にか胸元の部分まで唇が辿り着いていた。
その時に、ちくっと吸われるような軽い痛みが断続的に。
「っ...あんっ...」
その初めての刺激に思わず声が出てしまい、彼の腕の中で身体が自分の意思とは関係なしに、跳ねてしまう。その原因を作った彼は、再び私の首筋に唇を這わせくる。
「声が甘くなった...優里はこうされるのが好きなのかな...?」
低くかすれた声は私に意地悪く囁き、答えようとしない私のその場所に同じことを繰り返してゆく。
「...ぃやっ...あぁ...」
肌に触れる小さな痛みのたび、勝手に恥ずかしい声が口から漏れる。
気持ちがいいけど、苦しくて、辛い。
その変な感覚が、彼よって研ぎ澄まされていくのが分かる。
それが自分ではどうしようもなくて、身をよじり、逃げようとしても、ひとまわりも大きい男の人の身体に抑え込まれてしまうとひとたまりもなく。身動きがとれず、全てを受け入れるしかなかった。
「...やっ...もうっ...んっ...!」
感極まった嬌声があがり、背中が反り返る。その反動で無防備になってしまった喉にチュッと軽く口づけられたかと思うと、背中にまわった腕でふわっと身体を持ち上げるように起こされた。
...え、なにっ?
その勢い余ってコテッと身体が何かにもたれかかり、顔にかたいものが当たる。それが彼の胸だと知ったのは、蛍光灯の灯りが再び灯った時で。その明るさに目をパチクリさせていると、「驚いた?」と藤澤さんに小さく笑われた。
どうして、こんな風に身体を起こされているのかよく分からない。
抱きしめられてはいるけど、どう考えても先ほどの続きではなく。
冷静になってなんとなく自分の身体を見ると、彼の目の前でパジャマの胸元の部分が盛大にはだけている。私は彼の胸から飛び出し、慌てて腕をクロスしてその胸を隠した。
「きゃあっ!やだっ!!」
その驚きように彼もつられてビクッと後ずさり、成り行きでベッドの上で胡座をかく。
「ほら、やっぱり無理してた」
...無理?
意外な言葉をかけられ目を真ん丸くしてしまうと、彼は両腕を組み、うーんと唸った。
「気持ちは分からなくもないけど、優里とはこういう事を勢いでしたくない...かなと思いまして」
『勢い』
その言葉に後頭部を思いっきり何かで叩かれたようなショックを受ける。
「...勢いなんかじゃない...です」
はだけた胸元のボタンを留めるふりをしながら、彼から背を向けるのが精一杯な私。彼の告げた言葉でショックを受けているのが、バレたくなかったからだ。
いつもみたいに向き合えない...かも。
私が拒んだから2人の関係が壊れかけて。
だから、揺るぎない確かなものが欲しかっただけなのに。
そういう風に思うのっていけない事?
考えたら、ボタンを留める手が震えていた。泣きそうだった。
今度こそ関係がダメになるかもしれない。
やり方を間違えたのかもしれない。
そこに追い討ちをかけるように背後から「ごめん」と声をかけられる。
...やだ、もう。
謝らないで下さいって、喉まで出かかったけれど、言えなくて惨めな気分。
でも、彼はもう一度「変な事言ってごめん...」と謝ってきた。
だから、謝らないでくださいって今度こそ言おうとしたら、その前にぎゅっと背後から抱きしめられた。
「藤澤さん...?」
「...話を、聞いてくれるかな?」
彼の吐息が耳元にかかってくすぐったいかったけれど。
その距離が心地よかった。
身体にまわされた腕に胸が苦しいけど。
なぜか、嬉しかった。
「...なん...ですか?」
どういう内容の話か聞くのは怖かったけれど、聞かなければ先に進めないと思った。
「こんな風に止めて、ごめん。俺も実は少し不安だった」
...不安?
私はまわされた腕にそっと手を添える。
何を聞かされても気持ちが揺らがないように。
でも、その理由は意外なもので。
「...実は俺も、久々の何年ぶりかの彼女で緊張していたんだ。だから、優里も焦らないで大丈夫って言いたかった」
...え?何年ぶりの?彼女?藤澤さんの?
頭の中で言葉の整理がうまくできず、まとまった途端。
「ええっー?」
...あれで!?
そんな風に絶対見えない藤澤さんの発言に、思わず振りかえってしまうと。
「やーっと、こっちを見てくれた」
そんな私にペロッと彼がお茶目に舌を出す。
しまったと思ったけれど、今更、顔を背ける事は出来なかった。
彼は彼で、藤澤さんの正直な気持ちが分かったから安心したという私の気持ちの変化が分かったみたいで。
さっきとは明らかに違う緩い流れの中、さらに重大事実発覚。
「その...実はもう1つ出来なかった理由があって、アレがない」
...アレ、とは?
私がはてなマークで首を傾げてしまうと、それを察した藤澤さんはしれっとオブラートに包まず直接的な表現をする。
「コンドーム、もしくは避妊具。流石に最初っからナシというのは...ちょっと、どうなんだろう?」
そんな風に意見を初体験の私に求められてもと、それには俯いてノーコメント。
かくして、私の『勢い』とやらは見事に未遂に終わる。
そして、藤澤さんのそっち方面に自信がないとかいう言葉は、私を安心させるための嘘だと、後に身をもって分かるのであった。
「っ...恥ずかしいから、電気...を」
「消してください」というな否や、その願いを最後まで言い終わらないうちに指は絡めとられられ、ベッドにその手は縫い付けられてしまう。そして、唇を難なく奪われ、息継ぎが上手くできなくなるような深い口づけの連続。
さっきソファーでしたものと同じようだったけれど、逃げ場がない。私は舌を絡ませ合う唇の交わりにいつしか夢中になり、気がつくと煌々とした蛍光灯の灯りは、薄い暗い蛍火のようなものに変えられていた。
「あ...っ.......ふぁっ...」
時々、唇が離れると吐息が漏れる。それは先ほどとは違い、顔だけでなく、他の部分にも唇を這わされているから。同時に彼の黒髪が肌の上を緩やかに撫でてゆく感覚が伝わる。その2つの刺激に翻弄され、それが繰り返されるたび、身体の奥が疼くような熱がジワジワと内側から広がってゆく。
私の反応を探るように彼が触れる範囲はだんだんと広がり、いつの間にか胸元の部分まで唇が辿り着いていた。
その時に、ちくっと吸われるような軽い痛みが断続的に。
「っ...あんっ...」
その初めての刺激に思わず声が出てしまい、彼の腕の中で身体が自分の意思とは関係なしに、跳ねてしまう。その原因を作った彼は、再び私の首筋に唇を這わせくる。
「声が甘くなった...優里はこうされるのが好きなのかな...?」
低くかすれた声は私に意地悪く囁き、答えようとしない私のその場所に同じことを繰り返してゆく。
「...ぃやっ...あぁ...」
肌に触れる小さな痛みのたび、勝手に恥ずかしい声が口から漏れる。
気持ちがいいけど、苦しくて、辛い。
その変な感覚が、彼よって研ぎ澄まされていくのが分かる。
それが自分ではどうしようもなくて、身をよじり、逃げようとしても、ひとまわりも大きい男の人の身体に抑え込まれてしまうとひとたまりもなく。身動きがとれず、全てを受け入れるしかなかった。
「...やっ...もうっ...んっ...!」
感極まった嬌声があがり、背中が反り返る。その反動で無防備になってしまった喉にチュッと軽く口づけられたかと思うと、背中にまわった腕でふわっと身体を持ち上げるように起こされた。
...え、なにっ?
その勢い余ってコテッと身体が何かにもたれかかり、顔にかたいものが当たる。それが彼の胸だと知ったのは、蛍光灯の灯りが再び灯った時で。その明るさに目をパチクリさせていると、「驚いた?」と藤澤さんに小さく笑われた。
どうして、こんな風に身体を起こされているのかよく分からない。
抱きしめられてはいるけど、どう考えても先ほどの続きではなく。
冷静になってなんとなく自分の身体を見ると、彼の目の前でパジャマの胸元の部分が盛大にはだけている。私は彼の胸から飛び出し、慌てて腕をクロスしてその胸を隠した。
「きゃあっ!やだっ!!」
その驚きように彼もつられてビクッと後ずさり、成り行きでベッドの上で胡座をかく。
「ほら、やっぱり無理してた」
...無理?
意外な言葉をかけられ目を真ん丸くしてしまうと、彼は両腕を組み、うーんと唸った。
「気持ちは分からなくもないけど、優里とはこういう事を勢いでしたくない...かなと思いまして」
『勢い』
その言葉に後頭部を思いっきり何かで叩かれたようなショックを受ける。
「...勢いなんかじゃない...です」
はだけた胸元のボタンを留めるふりをしながら、彼から背を向けるのが精一杯な私。彼の告げた言葉でショックを受けているのが、バレたくなかったからだ。
いつもみたいに向き合えない...かも。
私が拒んだから2人の関係が壊れかけて。
だから、揺るぎない確かなものが欲しかっただけなのに。
そういう風に思うのっていけない事?
考えたら、ボタンを留める手が震えていた。泣きそうだった。
今度こそ関係がダメになるかもしれない。
やり方を間違えたのかもしれない。
そこに追い討ちをかけるように背後から「ごめん」と声をかけられる。
...やだ、もう。
謝らないで下さいって、喉まで出かかったけれど、言えなくて惨めな気分。
でも、彼はもう一度「変な事言ってごめん...」と謝ってきた。
だから、謝らないでくださいって今度こそ言おうとしたら、その前にぎゅっと背後から抱きしめられた。
「藤澤さん...?」
「...話を、聞いてくれるかな?」
彼の吐息が耳元にかかってくすぐったいかったけれど。
その距離が心地よかった。
身体にまわされた腕に胸が苦しいけど。
なぜか、嬉しかった。
「...なん...ですか?」
どういう内容の話か聞くのは怖かったけれど、聞かなければ先に進めないと思った。
「こんな風に止めて、ごめん。俺も実は少し不安だった」
...不安?
私はまわされた腕にそっと手を添える。
何を聞かされても気持ちが揺らがないように。
でも、その理由は意外なもので。
「...実は俺も、久々の何年ぶりかの彼女で緊張していたんだ。だから、優里も焦らないで大丈夫って言いたかった」
...え?何年ぶりの?彼女?藤澤さんの?
頭の中で言葉の整理がうまくできず、まとまった途端。
「ええっー?」
...あれで!?
そんな風に絶対見えない藤澤さんの発言に、思わず振りかえってしまうと。
「やーっと、こっちを見てくれた」
そんな私にペロッと彼がお茶目に舌を出す。
しまったと思ったけれど、今更、顔を背ける事は出来なかった。
彼は彼で、藤澤さんの正直な気持ちが分かったから安心したという私の気持ちの変化が分かったみたいで。
さっきとは明らかに違う緩い流れの中、さらに重大事実発覚。
「その...実はもう1つ出来なかった理由があって、アレがない」
...アレ、とは?
私がはてなマークで首を傾げてしまうと、それを察した藤澤さんはしれっとオブラートに包まず直接的な表現をする。
「コンドーム、もしくは避妊具。流石に最初っからナシというのは...ちょっと、どうなんだろう?」
そんな風に意見を初体験の私に求められてもと、それには俯いてノーコメント。
かくして、私の『勢い』とやらは見事に未遂に終わる。
そして、藤澤さんのそっち方面に自信がないとかいう言葉は、私を安心させるための嘘だと、後に身をもって分かるのであった。
0
お気に入りに追加
1,079
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
デキナイ私たちの秘密な関係
美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに
近寄ってくる男性は多いものの、
あるトラウマから恋愛をするのが億劫で
彼氏を作りたくない志穂。
一方で、恋愛への憧れはあり、
仲の良い同期カップルを見るたびに
「私もイチャイチャしたい……!」
という欲求を募らせる日々。
そんなある日、ひょんなことから
志穂はイケメン上司・速水課長の
ヒミツを知ってしまう。
それをキッカケに2人は
イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎
※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる