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35.BlueChristmas①
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12月24日を金曜日に控えた週始め、藤澤さんから連絡があった。
「あの、実は24日のことなんだけど...」
彼の声の調子であまりいい話ではないと直感したら、案の定、出張が24日にずれ込み戻ってくる時間が読めないのでキャンセルしてほしいという話だった。
私はその話を途中まで黙って聞いていたのだけれど「...ひどいです」と、彼の話を遮る。
「クリスマスだけは藤澤さんと会えると思っていたのに...楽しみにしていたのに...」
「...三浦さんっ?」
プッ...。
彼は何かを言おうとしていたけれど、私は彼からの電話を一方的に電話を切ってしまう。ずっと我慢していたものが堰を切ったように爆発してしまい、彼からの電話を拒絶するように電源も落とした。
こんな風に藤澤さんに自分の気持ちを伝えたのは初めてのこと。
それだけ私は彼との初めてのクリスマスを楽しみにしていた。
持っていたスマホをポンッとベッドに投げてベッドの端に頭を寄せる。
「...藤澤さんのバカ」
仕事だから仕方のないことだけれど、楽しみにしていた気持ちが萎えた。
それでも、彼のことは嫌いにはなれないけれど...。
翌朝、彼からいつも通り『おはよう』のメールが届く。
そこには、いつもと違ってごめんという一言も添えられてこり、それにはいつも通りちゃんと返した。
12月23日、同期の真央ちゃんから24日に飲み会に誘われたけれど、私は表向き彼がいなかったのでギリギリまで迷う。
ただ、そういう賑やかな場所にも行きたくなくて、その誘いは用事があると断った。
こうして、彼ができて初めてのクリスマスは、BlueChristmasに決定する。
※※※
12月24日。
仕事が終わったのは定時過ぎ。
女子更衣室には今日が金曜日で予定がある人が多いのか、早めの時間にしてはわりと混んでいた。
私もその中に混じって帰り支度をしていたら、どこからか人の話し声が耳に入る。
「やっぱり、無理だった。今日、出張だって...」
「だから、言ったじゃない。あんな冷たい仕事人間やめとけって」
私のロッカーの向かいにあるロッカーの二人組の話し声。
どこの部署の人か知らないけれど、多分、今日のクリスマスイブの相手ことを話しているみたいだった。
一人の女子社員が「出張」とかいう単語を話していたので、私と同じ境遇の人がいたんだと二人の会話が気になってしまう。
「でも、彼にしたらサイコーじゃん。自慢できるし。だから、今日誘って押したら何とかなるかと...男なんだし」
「ばかね。ああいう人って何考えているか分からなくて、付き合ったら大変よ。それによっぽどじゃないと釣り合わないでしょう?諦めなさいって」
「でも、藤澤さん、超かっこいいから...」
振られたらしい女の子は肩を落としていたけれど、私からみれば、充分、可愛い。
それに。
...今、藤澤さんって言わなかった?
『出張』と名前で私の知っている彼のことだと思い当たる。
こんな風に女子社員が彼のことを噂しているを聞いたのは初めてのことだったので、少なからずショックを受けてしまう。私はその場に居たくなくて、ずっとロッカーに置いてあった紙袋を持って社外に出た。
街中に出ると、所狭しとカップルやら家族連れが楽しそうに歩いている。
...今頃、私だって。
自分の持っている紙袋。これは藤澤さんへのクリスマスプレゼントだった。
私は遅くなったけれど連絡して、気晴らしにこれから飲み会に混ぜてもらおうかとスマホのメールフォルダをスクロール。
真央ちゃんからの連絡メールを探していたのだけれど、今朝、藤澤さんから受け取ったメールの所で、指先が止まる。
いつもみたいに「おはよう」のメールだったけれど、そこには何時の便で帰りますと書いてあった。
それを道路の隅で立ち止まって、じっと眺めたのち、自宅とは全く違う場所へと向かった。
まだ、12月24日。
この日だからこそ、私は行動できたのかもしれない。
「あの、実は24日のことなんだけど...」
彼の声の調子であまりいい話ではないと直感したら、案の定、出張が24日にずれ込み戻ってくる時間が読めないのでキャンセルしてほしいという話だった。
私はその話を途中まで黙って聞いていたのだけれど「...ひどいです」と、彼の話を遮る。
「クリスマスだけは藤澤さんと会えると思っていたのに...楽しみにしていたのに...」
「...三浦さんっ?」
プッ...。
彼は何かを言おうとしていたけれど、私は彼からの電話を一方的に電話を切ってしまう。ずっと我慢していたものが堰を切ったように爆発してしまい、彼からの電話を拒絶するように電源も落とした。
こんな風に藤澤さんに自分の気持ちを伝えたのは初めてのこと。
それだけ私は彼との初めてのクリスマスを楽しみにしていた。
持っていたスマホをポンッとベッドに投げてベッドの端に頭を寄せる。
「...藤澤さんのバカ」
仕事だから仕方のないことだけれど、楽しみにしていた気持ちが萎えた。
それでも、彼のことは嫌いにはなれないけれど...。
翌朝、彼からいつも通り『おはよう』のメールが届く。
そこには、いつもと違ってごめんという一言も添えられてこり、それにはいつも通りちゃんと返した。
12月23日、同期の真央ちゃんから24日に飲み会に誘われたけれど、私は表向き彼がいなかったのでギリギリまで迷う。
ただ、そういう賑やかな場所にも行きたくなくて、その誘いは用事があると断った。
こうして、彼ができて初めてのクリスマスは、BlueChristmasに決定する。
※※※
12月24日。
仕事が終わったのは定時過ぎ。
女子更衣室には今日が金曜日で予定がある人が多いのか、早めの時間にしてはわりと混んでいた。
私もその中に混じって帰り支度をしていたら、どこからか人の話し声が耳に入る。
「やっぱり、無理だった。今日、出張だって...」
「だから、言ったじゃない。あんな冷たい仕事人間やめとけって」
私のロッカーの向かいにあるロッカーの二人組の話し声。
どこの部署の人か知らないけれど、多分、今日のクリスマスイブの相手ことを話しているみたいだった。
一人の女子社員が「出張」とかいう単語を話していたので、私と同じ境遇の人がいたんだと二人の会話が気になってしまう。
「でも、彼にしたらサイコーじゃん。自慢できるし。だから、今日誘って押したら何とかなるかと...男なんだし」
「ばかね。ああいう人って何考えているか分からなくて、付き合ったら大変よ。それによっぽどじゃないと釣り合わないでしょう?諦めなさいって」
「でも、藤澤さん、超かっこいいから...」
振られたらしい女の子は肩を落としていたけれど、私からみれば、充分、可愛い。
それに。
...今、藤澤さんって言わなかった?
『出張』と名前で私の知っている彼のことだと思い当たる。
こんな風に女子社員が彼のことを噂しているを聞いたのは初めてのことだったので、少なからずショックを受けてしまう。私はその場に居たくなくて、ずっとロッカーに置いてあった紙袋を持って社外に出た。
街中に出ると、所狭しとカップルやら家族連れが楽しそうに歩いている。
...今頃、私だって。
自分の持っている紙袋。これは藤澤さんへのクリスマスプレゼントだった。
私は遅くなったけれど連絡して、気晴らしにこれから飲み会に混ぜてもらおうかとスマホのメールフォルダをスクロール。
真央ちゃんからの連絡メールを探していたのだけれど、今朝、藤澤さんから受け取ったメールの所で、指先が止まる。
いつもみたいに「おはよう」のメールだったけれど、そこには何時の便で帰りますと書いてあった。
それを道路の隅で立ち止まって、じっと眺めたのち、自宅とは全く違う場所へと向かった。
まだ、12月24日。
この日だからこそ、私は行動できたのかもしれない。
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