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31.社内恋愛のオキテ①
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私が案内したかったのは、うちの近所に新しくできたばかりの洋食屋さん。
ここは同期で同じマンションに住んでいる真央ちゃんと真奈美ちゃんが最近一押しのお店で、一度来てみたかった。
本当はみんなと一緒に来たかったけれど、プロジェクトを抱えているときは残業も多かったり、なかなか予定が合わずに今日の今日までとっておきのお店として楽しみにしていた。
そこに彼と来れるなんて、ますます今日という日が信じられない。
...気に入ってくれるかな?
私の不慣れな案内で辿りついたのは、こじんまりした個人のお店。
お店の外に出ていた黒板書きメニューとガラス張りの料理のディスプレイを眺めている時、藤澤さんが「美味そう...」と呟いていたのを聞き逃さなかった私は心の中でガッツポーズ。
「...気に入ってくれてよかったです」
そう第一関門突破と安心していたところに、お店の人からメニューを受け取った藤澤さんに何の気なしに声をかけられた。私は見惚れていたのがバレたかと思い、それには反射的にびくっと反応してしてしまったけれど、あー勘違い。
「三浦さんは何にします?」
彼はただ、私が何を食べたいか聞いてくれただけなのだ。
まずは自分の好みよりも私からなんて心遣いは嬉しかったけれど、私にとっては『メニュー選び』という新たなミッションが加わったにすぎない。
...こういう時、お可愛い彼女は何を選ぶのが正解なんですか?サラダ?がっつり系のハンバーグ?口が汚れたらダメだから、トマトソース系はNG?
テーブルに置いてあったもう一つのメニューを眺めながら考えれば考えるほど何を頼んでいいかわからず、悩みに悩んでしまう。そんななか、目の前のメニューをどこからか伸びてきた手で持っていかれてしまった。
そのおかげで、否応なしに私の視線はメニューから藤澤さんに移ると彼はにっこりと私に微笑んで。
「...アルコールは飲みますか?俺は車なのでお付き合いできませんが」
「あ、いえ...私は殆ど飲めませんから」
「なら、三浦さんは魚介類と肉類どちらが好きですか?」
「あ、...魚の方が」
「じゃあ、チーズとトマトだったら?あ、それとデミグラス」
「あ、チーズ系と...デミグラスも好きです」
彼から繰り出される質問はclosedquestion。
こういった質問には答えるのは感覚で済み、悩むことが全くなくてサクサクと答えることができた。
それを一通り聞いてくれた彼は、今度は私にメニューを見せることことなく、ウェイトレスを呼んで次から次へとよどみなく注文してくれる。
それも、私の好みドンピシャなものばかりで、さっきの質問で私の好みを把握してくれたようだった。
うだうだ悩んでいる私には頼んでもらえたのはありがたかったけれど、気が利く彼女というものは、彼にこんな風なことをさせない気もする。
少し複雑な気持ちでしんみりしてしまうと、彼は「折角ですから、好きなものを食べましょう」と言って笑ってくれた。
こういう時、すごいといつも思う。心の中をいつも読まれてしまう気がしていたから。
料理が運ばれてくるまでの手持無沙汰な時間、なんでも藤澤さんにはお見通しなんだと思っていたら、突然、スッと彼の表情が変わりテーブルの上で彼の両手が組まれる。
「食事の前で申し訳ないのですが、少し話をしてもいいですか?」
その表情は、神妙でさっきまで穏やかに笑ってくれていた彼とは違う。
これは仕事の時の彼の顔で、私も知っている少し空気の張りつめた真剣な時の顔だった。
「あの整った顔でじっと目をみられるとゾクッと来るよ。いろんな意味で」
以前、松浦が話していた言葉に今の私も頭の中でひどく同調する。
私、何かやらかしましたか?それとも?
ここは同期で同じマンションに住んでいる真央ちゃんと真奈美ちゃんが最近一押しのお店で、一度来てみたかった。
本当はみんなと一緒に来たかったけれど、プロジェクトを抱えているときは残業も多かったり、なかなか予定が合わずに今日の今日までとっておきのお店として楽しみにしていた。
そこに彼と来れるなんて、ますます今日という日が信じられない。
...気に入ってくれるかな?
私の不慣れな案内で辿りついたのは、こじんまりした個人のお店。
お店の外に出ていた黒板書きメニューとガラス張りの料理のディスプレイを眺めている時、藤澤さんが「美味そう...」と呟いていたのを聞き逃さなかった私は心の中でガッツポーズ。
「...気に入ってくれてよかったです」
そう第一関門突破と安心していたところに、お店の人からメニューを受け取った藤澤さんに何の気なしに声をかけられた。私は見惚れていたのがバレたかと思い、それには反射的にびくっと反応してしてしまったけれど、あー勘違い。
「三浦さんは何にします?」
彼はただ、私が何を食べたいか聞いてくれただけなのだ。
まずは自分の好みよりも私からなんて心遣いは嬉しかったけれど、私にとっては『メニュー選び』という新たなミッションが加わったにすぎない。
...こういう時、お可愛い彼女は何を選ぶのが正解なんですか?サラダ?がっつり系のハンバーグ?口が汚れたらダメだから、トマトソース系はNG?
テーブルに置いてあったもう一つのメニューを眺めながら考えれば考えるほど何を頼んでいいかわからず、悩みに悩んでしまう。そんななか、目の前のメニューをどこからか伸びてきた手で持っていかれてしまった。
そのおかげで、否応なしに私の視線はメニューから藤澤さんに移ると彼はにっこりと私に微笑んで。
「...アルコールは飲みますか?俺は車なのでお付き合いできませんが」
「あ、いえ...私は殆ど飲めませんから」
「なら、三浦さんは魚介類と肉類どちらが好きですか?」
「あ、...魚の方が」
「じゃあ、チーズとトマトだったら?あ、それとデミグラス」
「あ、チーズ系と...デミグラスも好きです」
彼から繰り出される質問はclosedquestion。
こういった質問には答えるのは感覚で済み、悩むことが全くなくてサクサクと答えることができた。
それを一通り聞いてくれた彼は、今度は私にメニューを見せることことなく、ウェイトレスを呼んで次から次へとよどみなく注文してくれる。
それも、私の好みドンピシャなものばかりで、さっきの質問で私の好みを把握してくれたようだった。
うだうだ悩んでいる私には頼んでもらえたのはありがたかったけれど、気が利く彼女というものは、彼にこんな風なことをさせない気もする。
少し複雑な気持ちでしんみりしてしまうと、彼は「折角ですから、好きなものを食べましょう」と言って笑ってくれた。
こういう時、すごいといつも思う。心の中をいつも読まれてしまう気がしていたから。
料理が運ばれてくるまでの手持無沙汰な時間、なんでも藤澤さんにはお見通しなんだと思っていたら、突然、スッと彼の表情が変わりテーブルの上で彼の両手が組まれる。
「食事の前で申し訳ないのですが、少し話をしてもいいですか?」
その表情は、神妙でさっきまで穏やかに笑ってくれていた彼とは違う。
これは仕事の時の彼の顔で、私も知っている少し空気の張りつめた真剣な時の顔だった。
「あの整った顔でじっと目をみられるとゾクッと来るよ。いろんな意味で」
以前、松浦が話していた言葉に今の私も頭の中でひどく同調する。
私、何かやらかしましたか?それとも?
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