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23.私と彼の2人の気持ち。
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水曜日の今日は、プロジェクトの最終日。
定時にこのプロジェクトの懇親会みたいなものがあるらしい。
これには有無を言わさず、全員、強制参加。
その為、うちのチームの女子全員が懇親会の準備に研究所の方まで出向いた。
「こんにちは。本日はよろしくお願いいたします」
私たちの中で一番年上の鈴木さんが挨拶をして室内へと入り、その後を美波ちゃんと私がペットボトルやらお菓子などを持ち、入っていく。鈴木さんは向こうの研究員の女性と懇親会の打ち合わせをしていて、私と美波ちゃんはその場で待機。
暇だったので、私は受付カウンター越しからこの部屋の中を眺めていた。
...もう、毎日のように来ることはないんだろうな。
今日は大事なプロジェクトの最終日とあって、うちのチームと関わりのあった顔見知りの研究員の殆どが、自席に座っている。
暇そうに見えるのは、彼らの持ち分の仕事が大方終わったという証拠。
多分、懇親会の時間まで暇を持て余しているのだと思った。
その中には滅多に自席に座っていない藤澤さんの姿も。
あの日以来、徹底的に避けていたので、彼とは目も合わせないし話したこともない。
けれども、一週間やそこらで半年以上片想いしていた気持ちがなくなるわけがなく、つい、いつもの習慣でその姿を追いかけてしまう。
ただ、彼の方はというと頬杖をつきながら目の前のパソコンに集中していたようで、私たちには気が付いていなかった。それには助かったと思ったけれど。
「優里、早く」
ミーティングルームに行くときに美波ちゃんに彼の前で名前を呼ばれてしまう。彼女の声で彼が私の方に目を向けて、私はその視線を無視することができなかったので軽く会釈だけして通り過ぎた。
その後、飲み物などの準備をしていたら松浦も手伝いに来てくれてあっという間に準備完了。彼がメンバーの人たちを呼びに行ってくれて、総勢20名あまりの懇親会が始まった。
冒頭では、営業部を代表して田山さんが挨拶。それから藤澤さんが向こうの代表で話をして、私は後ろの隅っこでそれらを見ていた。
遠くに見える白衣の彼はやっぱり素敵で。
...明日からは雲の上の存在...なのね。
挨拶が終わっても飲み物を配りながら、まだ、その背中を目で追ってしまっていた。
「三浦さん」って、話しかけてくれる声が穏やかで。
いつも、荷物を持って隣で歩いてくれる時は、歩きの下手な私に合わせて優しく気遣ってくれて。
彼と関わった事で知ってしまった想いが次から次へと走馬灯のように溢れ出てくる。
...本当、なんて未練がましい。忘れようって思ったのに。
そんな自分に呆れ、彼を目で追いかけるのを途中で諦めた。
そして、懇親会が進む中、残り少なくなった飲み物に気がつき、新たに烏龍茶の入った紙コップをいくつか用意する。それには自らも手を伸ばして、違う方向からも手が伸びて出てきた。
...あ。
まるで金縛りにあったかのように、その手の先にある相手に見入る。
藤澤さんもこちらを見ていて、何か言いたげな顔をしていた。
けれども、今は会社で、人の目がたくさんあるオフィシャルな空間。
私たちのこの戸惑いを、誰かに見られても気がつかれても困るから。
すぐに二人とも何事もなかったように紙コップを手に取り、目を反らすように、違う相手に話しかけていた。
これは偶然の出来事。
たまたま目が合っただけで、彼には他意もなかったと思う。
定時にこのプロジェクトの懇親会みたいなものがあるらしい。
これには有無を言わさず、全員、強制参加。
その為、うちのチームの女子全員が懇親会の準備に研究所の方まで出向いた。
「こんにちは。本日はよろしくお願いいたします」
私たちの中で一番年上の鈴木さんが挨拶をして室内へと入り、その後を美波ちゃんと私がペットボトルやらお菓子などを持ち、入っていく。鈴木さんは向こうの研究員の女性と懇親会の打ち合わせをしていて、私と美波ちゃんはその場で待機。
暇だったので、私は受付カウンター越しからこの部屋の中を眺めていた。
...もう、毎日のように来ることはないんだろうな。
今日は大事なプロジェクトの最終日とあって、うちのチームと関わりのあった顔見知りの研究員の殆どが、自席に座っている。
暇そうに見えるのは、彼らの持ち分の仕事が大方終わったという証拠。
多分、懇親会の時間まで暇を持て余しているのだと思った。
その中には滅多に自席に座っていない藤澤さんの姿も。
あの日以来、徹底的に避けていたので、彼とは目も合わせないし話したこともない。
けれども、一週間やそこらで半年以上片想いしていた気持ちがなくなるわけがなく、つい、いつもの習慣でその姿を追いかけてしまう。
ただ、彼の方はというと頬杖をつきながら目の前のパソコンに集中していたようで、私たちには気が付いていなかった。それには助かったと思ったけれど。
「優里、早く」
ミーティングルームに行くときに美波ちゃんに彼の前で名前を呼ばれてしまう。彼女の声で彼が私の方に目を向けて、私はその視線を無視することができなかったので軽く会釈だけして通り過ぎた。
その後、飲み物などの準備をしていたら松浦も手伝いに来てくれてあっという間に準備完了。彼がメンバーの人たちを呼びに行ってくれて、総勢20名あまりの懇親会が始まった。
冒頭では、営業部を代表して田山さんが挨拶。それから藤澤さんが向こうの代表で話をして、私は後ろの隅っこでそれらを見ていた。
遠くに見える白衣の彼はやっぱり素敵で。
...明日からは雲の上の存在...なのね。
挨拶が終わっても飲み物を配りながら、まだ、その背中を目で追ってしまっていた。
「三浦さん」って、話しかけてくれる声が穏やかで。
いつも、荷物を持って隣で歩いてくれる時は、歩きの下手な私に合わせて優しく気遣ってくれて。
彼と関わった事で知ってしまった想いが次から次へと走馬灯のように溢れ出てくる。
...本当、なんて未練がましい。忘れようって思ったのに。
そんな自分に呆れ、彼を目で追いかけるのを途中で諦めた。
そして、懇親会が進む中、残り少なくなった飲み物に気がつき、新たに烏龍茶の入った紙コップをいくつか用意する。それには自らも手を伸ばして、違う方向からも手が伸びて出てきた。
...あ。
まるで金縛りにあったかのように、その手の先にある相手に見入る。
藤澤さんもこちらを見ていて、何か言いたげな顔をしていた。
けれども、今は会社で、人の目がたくさんあるオフィシャルな空間。
私たちのこの戸惑いを、誰かに見られても気がつかれても困るから。
すぐに二人とも何事もなかったように紙コップを手に取り、目を反らすように、違う相手に話しかけていた。
これは偶然の出来事。
たまたま目が合っただけで、彼には他意もなかったと思う。
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