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8.名前①
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それからすぐに、白衣の彼の正体が、田山さんのお友達で松浦の上司の藤澤主任である事を知ったけれど、その他のことは一向に分からない。
それに、片想いしか経験のない私は、今の時点で彼とお付き合いしたいとかそんな気持ちは全くなく、ただ遠くで顔が見れるだけで充分だった。
そんなものだから、特に進展もなく日々は過ぎて。
いつものように美波ちゃんと社食でのんびりお喋りをしていると、山崎さんがトレイを持って私たちのテーブルに寄ってきた。
「相席いい?」
彼は軽い口調で美波ちゃんに話しかけてきて、美波ちゃんは愛想良く応対をする。
最近、この2人はやたらと仲が良い。
もともと山崎さんは美波ちゃんの事を気にかけていたみたいだし、それには美波ちゃんも満更でもなさそう。
こういう時の私は明らかにお邪魔虫なのだけれど、彼女に『行かないで』と目配せされるので、仕方なくその場に留まる。
どうやら、この美波ちゃんの行動は田山さんへのお近づき作戦の一環みたいだった。
そうとは気がつかない山崎さんは、いつもニコニコと美波ちゃんばかりに話しかけている。
今も食後のコーヒーを飲んだ後、彼女を必死に飲みに誘っていた。
「どう?今週の金曜日の帰りにでも?」
「えー、山崎さんと2人でぇ?」
誘われている美波ちゃんは甘えた声を出しながらも、チラリとこちらを見てすかさず私の腕を自分の胸に抱き込む。
「ちょ、ちょっと!?」
「じゃあ、優里も一緒がいい!3人で飲みに行きましょ♪」
...なんで私も!?
お酒なんて殆ど飲めないのにー!!
本当はそう叫びたかったけれどこのお近づき作戦のアドバイスをしてしまったのは何を隠そうこの私。
なので、ここは乾いた笑いで誤魔化すしかなく、今週の金曜日に3人で飲みに行くことが決まってしまう。
私自身、思いっきり当て馬にされるのが分かっていたので、早く帰ればいいかと密かに思っていた。
ところが。
そのことがどういうわけだか、ある人の耳に入っていた。
「明後日、山崎と長谷川さんとで飲みに行くんだって?」
今日はたまたま田山さんと同じ営業先に行く用事があった。
その会社のソファーで約束の時間まで待たせてもらっていたら、唐突にその話を振られ焦ってしまう。
「ど、どうしてそれを...?」
3人だけの話だと思っていたのに...。
燻しがるように田山さんを見ると、彼はシステム手帳を開いて。
「実はさ、俺も三浦さんと長谷川さんを誘いたかったんだけど、その日しか予定が空いていなくて。できたら俺たちもその日に混ぜてもらおうかと」
「田山さんも金曜日にですか?」
「うん。もう、山崎には話をつけてあるから。三浦さんは大丈夫そう?
長谷川さんには俺から伝えようか?」
「いや、長谷川さんも私も...多分、大丈夫だと思います、けど...」
絶対、美波ちゃんならここは二つ返事で喜ぶと思ったので私はその場で快諾した。
その返事を聞いて、田山さんはシステム手帳に予定を書き込んで閉じた後、私に平謝りに謝った。
「本当、急にこんなこと言ってごめんね。俺だけだったら三浦さん達の予定に合わせられるんだけど、もう1人が少し多忙で...」
「もう1人?田山さんの他にもどなたかいらっしゃるのですか?」
不思議に思って、軽い気持ちで聞くとそれがとんでもないことに。
「うん。今度、研究所の人間と一緒に仕事するから少しでも顔つなぎと思ってね。
ほら、覚えてる?前に話した俺の昔からの友人で藤澤ってヤツなんだけど。そいつが無愛想なやつだから。少しでも皆んなと仲良くなってもらおうとさ...」
「そうだったんですか...」
私は力なく答えるしかできなかった。
一方的に彼のことは知っていますとは、到底、言えるわけがない。
それに、片想いしか経験のない私は、今の時点で彼とお付き合いしたいとかそんな気持ちは全くなく、ただ遠くで顔が見れるだけで充分だった。
そんなものだから、特に進展もなく日々は過ぎて。
いつものように美波ちゃんと社食でのんびりお喋りをしていると、山崎さんがトレイを持って私たちのテーブルに寄ってきた。
「相席いい?」
彼は軽い口調で美波ちゃんに話しかけてきて、美波ちゃんは愛想良く応対をする。
最近、この2人はやたらと仲が良い。
もともと山崎さんは美波ちゃんの事を気にかけていたみたいだし、それには美波ちゃんも満更でもなさそう。
こういう時の私は明らかにお邪魔虫なのだけれど、彼女に『行かないで』と目配せされるので、仕方なくその場に留まる。
どうやら、この美波ちゃんの行動は田山さんへのお近づき作戦の一環みたいだった。
そうとは気がつかない山崎さんは、いつもニコニコと美波ちゃんばかりに話しかけている。
今も食後のコーヒーを飲んだ後、彼女を必死に飲みに誘っていた。
「どう?今週の金曜日の帰りにでも?」
「えー、山崎さんと2人でぇ?」
誘われている美波ちゃんは甘えた声を出しながらも、チラリとこちらを見てすかさず私の腕を自分の胸に抱き込む。
「ちょ、ちょっと!?」
「じゃあ、優里も一緒がいい!3人で飲みに行きましょ♪」
...なんで私も!?
お酒なんて殆ど飲めないのにー!!
本当はそう叫びたかったけれどこのお近づき作戦のアドバイスをしてしまったのは何を隠そうこの私。
なので、ここは乾いた笑いで誤魔化すしかなく、今週の金曜日に3人で飲みに行くことが決まってしまう。
私自身、思いっきり当て馬にされるのが分かっていたので、早く帰ればいいかと密かに思っていた。
ところが。
そのことがどういうわけだか、ある人の耳に入っていた。
「明後日、山崎と長谷川さんとで飲みに行くんだって?」
今日はたまたま田山さんと同じ営業先に行く用事があった。
その会社のソファーで約束の時間まで待たせてもらっていたら、唐突にその話を振られ焦ってしまう。
「ど、どうしてそれを...?」
3人だけの話だと思っていたのに...。
燻しがるように田山さんを見ると、彼はシステム手帳を開いて。
「実はさ、俺も三浦さんと長谷川さんを誘いたかったんだけど、その日しか予定が空いていなくて。できたら俺たちもその日に混ぜてもらおうかと」
「田山さんも金曜日にですか?」
「うん。もう、山崎には話をつけてあるから。三浦さんは大丈夫そう?
長谷川さんには俺から伝えようか?」
「いや、長谷川さんも私も...多分、大丈夫だと思います、けど...」
絶対、美波ちゃんならここは二つ返事で喜ぶと思ったので私はその場で快諾した。
その返事を聞いて、田山さんはシステム手帳に予定を書き込んで閉じた後、私に平謝りに謝った。
「本当、急にこんなこと言ってごめんね。俺だけだったら三浦さん達の予定に合わせられるんだけど、もう1人が少し多忙で...」
「もう1人?田山さんの他にもどなたかいらっしゃるのですか?」
不思議に思って、軽い気持ちで聞くとそれがとんでもないことに。
「うん。今度、研究所の人間と一緒に仕事するから少しでも顔つなぎと思ってね。
ほら、覚えてる?前に話した俺の昔からの友人で藤澤ってヤツなんだけど。そいつが無愛想なやつだから。少しでも皆んなと仲良くなってもらおうとさ...」
「そうだったんですか...」
私は力なく答えるしかできなかった。
一方的に彼のことは知っていますとは、到底、言えるわけがない。
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