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6.既視感、それとも...。①

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その数ヶ月後、会社命令だった試験をなんとかパスして、営業職として1人立ち出来るようになった頃、外の季節は秋に差し掛かろうとしていた。


そんなある日のこと。


いつもの課内全体の朝礼の後、田山さんにチームの営業職全員がミーティングルームへと呼び出された。
こんな風に一同に同じ部屋で会するのは珍しく、私以外に集められた他の人間も何事かと緊張しているような面持ちで、田山さんの話を聞いている。

召集された理由はというと、来月から新しく立ち上げられるプロジェクトの為だった。

私には初めて聞く話だったけれど、他の先輩社員にとってはこういう研究所と合同のプロジェクトは初めてのことではないらしく、配布された資料を読むだけでどんな事をするのかはすぐに分かったらしい。

だから、ある程度の概略を聞いてチームの先輩方はすぐにいつもの仕事へと戻り、その中で要領の得ないであろう新入社員の私と山崎さんだけ、田山さんに残されたようだった。

私と山崎さんは、資料を片手にさっき聞いたものとはまた別の詳細な部分とか、資料に書かれていない役割分担とかの話を細かく教えられる。

そんな中でも私は初めての大きな仕事にずっと緊張で顔が強張りっぱなしだったみたいで、田山さんには緊張し過ぎと笑われた。


「今回の案件は俺の大学時代の友人の藤澤ってヤツがいる研究所のチームと組むから、他のチームと違って融通がきくんだよ。だから、失敗を恐れず軽い気持ちで取り組んで大丈夫」


「そ、そうだったんですか...」


この頃には松浦が藤澤さんという人のチームにいる事を既に知っていた。
だから、そのミニ情報は私の緊張を幾らかほぐしてくれるのに役立ち、その横で山崎さんが色めき立つ。


「今回、藤澤さんのチームと一緒なんですか?ラッキー!」


彼は独り言のように「今度こそ飲みに」と呟き、田山さんはそんな彼に、少々顔を引きつらせつつも、苦笑。

「ま、そういうことだから。あと、定時になったら俺のとこに2人とも寄ってくれる?」

そして、約束通り定時に田山さんの元へいくと私と山崎さんの目の前にはドンと大きな白い紙袋2つと、段ボールが置かれる。
私たち2人ともがその荷物の前で揃って首を傾げていると。

「まずはこれを2人で仲良く研究所まで運ぶこと」

田山さんは素敵な笑顔で言い残し、忙しそうにどこかに消えた。


そのまま取り残されてしまった私たちは、同じく目の前に残された荷物を手分けをして持ち、研究所へと向かう。



大きい段ボールは山崎さん、紙袋2つは私と、わりと男女差に配慮してくれた優しい振り分け。

それで、最初は並んで歩いていたつもりが。


彼はスーツだからもちろん大股で歩きやすい。私はというと同じくスーツだったけれど、スカートにローヒール。その歩幅は彼よりも当然小さく、並んで歩いていたつもりが距離がどんどん広がる一方で。
山崎さんは普通に歩いているけれども、途中から私は小走り気味になってしまっていた。

....もう、スカートってこういう時、本当歩きづらい。

これからはパンツスーツの方が動きやすくていいかもと思い直していると、少し前を歩く山崎さんが。


「あっ...」


小さく声をあげたかと思うと、歩くスピードを速めてしまった。
そうなると、どんなに急いでもお手上げ状態。
追いつけないと悟った私は諦めて、ゆっくり彼の後を追うことにする。


そして、大して慌てもせずいつものペースで歩いていくと、ようやくあの通路に差し掛かった。この辺りから白衣の人の姿をポツポツ見かけ、すれ違う。

...あの時もこんな感じで、そうそう、向こうから男の人が歩いてきて。



こういう現象ってなんていうんだっけ?



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