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5.あの人はいま何処?
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「で、何しに来たの?」
松浦の肩越しに向こうのエリアへと続くドアの方ばかり見ていたものだから、目の前にいる彼に不審な目で見られるのは当然の結果である。
「いや、その...」
そんなすんなりここから帰りたくないと言葉を濁しているうちに、私が気になって仕方がないドアの向こうから白衣姿の人たちが数人、こちらの部屋へと戻ってきた。
...来た!?
それには、目の前の松浦の事なんかはまるっと無視して、凝視。
その中にはあの人らしい背格好の人は見当たらず、肩を落とした。
...ここにはいないのかなぁ?
顔は殆ど覚えていなかったけれど、なんとなく背の高さは覚えている。
私はこれでも身長165㎝。ローヒールを履いている今は170㎝近くなり、その私よりも余裕であの白衣の彼は背が高かったのだから、絶対、相当、背が高いはず。
現に目の前にいる松浦は170㎝より少し高いくらい程度で、目線は、ほぼ一緒。
そんな彼を見ると尚のことガッカリ感が増して、人知れずため息が漏れた。
すると、松浦にはとても嫌な顔をされる。
「お前、今、失礼な事を考えただろう?」
...ば、ばれてる?
それには図星だったけれど、本当の事を言ったらどんな口撃を受けるか考えただけでも面倒くさい。私は、大袈裟に顔を横に振る。
「ち、ちがうって!」
「...どうだか」
今度は松浦の方にため息をつかれ、その場面を受付カウンターのすぐ側の席の白衣の男性に見られて2人して笑われてしまう。そのうえ。
「なんか、いいねぇ。2人とも仲が良くて。いつから付き合っているの?
その親密さからしてうちの会社に入る前からかな?」
などと、私たちがお付き合いしている前提で質問された。
それには堪らず。
「「付き合ってません!!」」
思いっきり、松浦と答えがシンクロ。
それでもその人は全く信用してくれず、「うちは社内恋愛は歓迎派で皆んなオープンだから、大丈夫」と笑いながら意味不明な言葉を残して、どこかに消えた。
私と松浦はそれには返す言葉もなく、無言で見送り。彼が立ち去った後コソッと松浦に問いただす。
「...あの人、誰?」
「あー、うん。違うチームの主任で真田さん。うちの主任と仲が良いから普段から俺にも良くしてくれるんだけど、なんか今のは誤解されたな」
「だよね」
「まぁ、あんな人だけど好かれて損はないから。三浦も顔を覚えてもらえてラッキーじゃん」
「そんなもの?」
「そんなもんさ、会社って」
その言い分には腑に落ちない点もあったけれど、確かにここで顔を覚えてもらえた事はここに配属されたい私にはプラスと思えた。
それにしても、気になることがもう1つ。
「...そういえば。さっきの人うちの会社って社内恋愛は歓迎とかオープンとか何とか話していたみたいだけど、どういう意味?」
「...それは」
最初は、眉を寄せて教えてくれなかったけれど、最後にはしぶしぶ。
うちの業界は世界が狭く競争も激しいから、他社の異性と付き合うくらいなら同じ社の人間と付き合ってくれた方が情報漏えいの観点から安心ということ。
その流れで社内恋愛はわりと大っぴらに自由となり、そのことは社内では暗黙の了解であると教えてくれた。
「これもさっきの真田さんの受け売りだからどこまで真実かは知らねーけど。でも、本当にお前何しにしたの?まさか、俺と世間話をするためじゃないだろう?」
変に冷静な松浦に言われて、我に帰る。
「ま、まさか!こ、これを持ってきたんだよ。じゃ、ちゃんと返したから!!」
用事が済むとそこから逃げるように退散して、結局のところ、本当の目的は果たせずじまい。
...あの人は、一体どこの誰なのだろう?
営業部へ戻る途中の通路から見えた桜は、気がつくと葉桜になっていた。
松浦の肩越しに向こうのエリアへと続くドアの方ばかり見ていたものだから、目の前にいる彼に不審な目で見られるのは当然の結果である。
「いや、その...」
そんなすんなりここから帰りたくないと言葉を濁しているうちに、私が気になって仕方がないドアの向こうから白衣姿の人たちが数人、こちらの部屋へと戻ってきた。
...来た!?
それには、目の前の松浦の事なんかはまるっと無視して、凝視。
その中にはあの人らしい背格好の人は見当たらず、肩を落とした。
...ここにはいないのかなぁ?
顔は殆ど覚えていなかったけれど、なんとなく背の高さは覚えている。
私はこれでも身長165㎝。ローヒールを履いている今は170㎝近くなり、その私よりも余裕であの白衣の彼は背が高かったのだから、絶対、相当、背が高いはず。
現に目の前にいる松浦は170㎝より少し高いくらい程度で、目線は、ほぼ一緒。
そんな彼を見ると尚のことガッカリ感が増して、人知れずため息が漏れた。
すると、松浦にはとても嫌な顔をされる。
「お前、今、失礼な事を考えただろう?」
...ば、ばれてる?
それには図星だったけれど、本当の事を言ったらどんな口撃を受けるか考えただけでも面倒くさい。私は、大袈裟に顔を横に振る。
「ち、ちがうって!」
「...どうだか」
今度は松浦の方にため息をつかれ、その場面を受付カウンターのすぐ側の席の白衣の男性に見られて2人して笑われてしまう。そのうえ。
「なんか、いいねぇ。2人とも仲が良くて。いつから付き合っているの?
その親密さからしてうちの会社に入る前からかな?」
などと、私たちがお付き合いしている前提で質問された。
それには堪らず。
「「付き合ってません!!」」
思いっきり、松浦と答えがシンクロ。
それでもその人は全く信用してくれず、「うちは社内恋愛は歓迎派で皆んなオープンだから、大丈夫」と笑いながら意味不明な言葉を残して、どこかに消えた。
私と松浦はそれには返す言葉もなく、無言で見送り。彼が立ち去った後コソッと松浦に問いただす。
「...あの人、誰?」
「あー、うん。違うチームの主任で真田さん。うちの主任と仲が良いから普段から俺にも良くしてくれるんだけど、なんか今のは誤解されたな」
「だよね」
「まぁ、あんな人だけど好かれて損はないから。三浦も顔を覚えてもらえてラッキーじゃん」
「そんなもの?」
「そんなもんさ、会社って」
その言い分には腑に落ちない点もあったけれど、確かにここで顔を覚えてもらえた事はここに配属されたい私にはプラスと思えた。
それにしても、気になることがもう1つ。
「...そういえば。さっきの人うちの会社って社内恋愛は歓迎とかオープンとか何とか話していたみたいだけど、どういう意味?」
「...それは」
最初は、眉を寄せて教えてくれなかったけれど、最後にはしぶしぶ。
うちの業界は世界が狭く競争も激しいから、他社の異性と付き合うくらいなら同じ社の人間と付き合ってくれた方が情報漏えいの観点から安心ということ。
その流れで社内恋愛はわりと大っぴらに自由となり、そのことは社内では暗黙の了解であると教えてくれた。
「これもさっきの真田さんの受け売りだからどこまで真実かは知らねーけど。でも、本当にお前何しにしたの?まさか、俺と世間話をするためじゃないだろう?」
変に冷静な松浦に言われて、我に帰る。
「ま、まさか!こ、これを持ってきたんだよ。じゃ、ちゃんと返したから!!」
用事が済むとそこから逃げるように退散して、結局のところ、本当の目的は果たせずじまい。
...あの人は、一体どこの誰なのだろう?
営業部へ戻る途中の通路から見えた桜は、気がつくと葉桜になっていた。
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