199 / 199
【spin-off】bittersweet first love
39
しおりを挟む
「...優里?」
肩にかかる重みに気がつくと妻の優里が寄りかかっている。もしやと思い、顔を覗き込むと寝息が聞こえた。
今夜は一人息子の弓弦がたまたま早寝してくれたので、録画してあったなんとかロードショーの映画をソファーに並んで夫婦で観ている。映画は優里のチョイスなので恋愛要素は多分、多い。
...うちの奥さんは、本当、こういうの好きだよなぁ。
ラブストーリーは男の俺が見るにはつまらないと思われたが、意外とアクションが多めでなかなか楽しめた。それに隣の優里が恋愛関係の絡みになると、目をキラキラさせながら、時にはキャーキャー言いながら、クッションを抱いて観ている様が可笑しくて、可愛くて。
付き合いたての頃も映画館で映画を観た事があるが、あの時はこんなふうにキャーキャー騒ぐ事はなく、カチコチに固まっていたので映画どころではなかったように思われる。俺の悪戯でカップルシートで見ながら手を繋いでいたせいもあるが。俺も初心な彼女の反応が面白く、あまり映画を観ていなかった。
こんな風に身も心も預けてくれるようになったのは、確か海外赴任が決まった頃。あの時は彼女とひとときも離れたくなくて、週末のたびにうちに来てもらっていた。
...懐かしいな、この居心地の良さは。
出産、育児という大きな出来事があったので長さは短くなってしまったが、色褪せていない栗毛色の髪。その髪を撫でながら、そこに唇を落とし耳元でわざと囁く。
「...そんなとこで寝てると風邪ひくよ。それとも俺に襲われたい?」
ふっと耳に息をかけると、寝ていたはずの優里が飛び跳ねるようにソファーの端まで後ずさる。耳を押さえ、後ずさった彼女の顔は真っ赤だ。
「い、いつからバレ...て?」
あんなに睫毛をピクピクと震わせて、バレていないと思うあたりがなんともまあ。
「髪に触ったあたりかな?それよりも...」
こっちに来てと手招きし膝の上に座らせる。素直に従う彼女は可愛いけど、狸寝入りはいただけないなぁと、背後から腕を回し逃さないようにしっかりホールド。無防備な首筋を甘噛みする。
「ひゃんっ...!」
予期せぬ刺激に優里の背中が仰反ってしまったようだが、構わずにパジャマの裾から手を入れた。そして、不埒な左手の指先が滑らかな肌をなぞると無粋な下着にぶち当たる。器用に方向転換して背中のホックを外すと、まろい膨らみが露わになった。途端に、優里は慌てて振り向き涙目で。
「ふ、藤澤、、さんっ...まっ」
「待たないよ、さっき狸寝入りした罰」
制止しようとする彼女の膨らみを直接下から手で包み込むように掬い上げると、指が頂に触れる。指でクルクルと柔らかなタッチで刺激すると、彼女の恥じらいとは裏腹にねだられるかのように存在感が増す。
「あっ、や...」
弓弦が産まれてから、優里との添い寝の権利は彼に明け渡した。だから、こんな風に頰を染めて恥じらう優里を見るのは久しぶりで。産後クライシスという夫婦間でわりと深刻な問題に直面し女性の生理というものの複雑さに普段は遠慮をしていた俺も、腕の中で乱れてゆく優里を見て興奮しないわけがなかった。
「優里の感じている顔が見たい」
リクエストを受け彼女がこちらに顔を向けると、美味しそうな唇が目の前に差し出される。まるで食べてと言わんばかりの唇を食むように貪ると逃げようとしていた優里の身体が蕩けるように、降参した。
「藤澤さんのバカ...エッチ」
チュッチュッとリップ音を立て繰り返される濃厚なキスの合間に息継ぎを要した優里が目を潤ませて抗議してきたものの、それを鵜呑みにするほど野暮じゃない。彼女の身体が疼き始めているのを指先で感じ取っていた俺は、意地悪く聞いてみる。
「なら、もう寝る?」
「..........」
「じゃ、ユズが寝ている間に続き、する?」
「.........ん、したい」
恥じらいながらも優里は小さく頷く。
ホント、何年たってもこういう初心な所は全然変わらないって思うが、たまには優里の方から求めて欲しいという願望も、ちらほらある。
ギュッと首にしがみつく好きな女性の身体は何年たっても欲しくて欲しくて堪らないが、本人にバレたら嫌われそうだから、ほどほどにしなくてはと煩悩と闘う。
まさに不惑の歳まわりで妻にこんなにのめり込むなんて、思いもよらなかった。
そういう意味では、優里は俺にとって『初めての恋』というものを教えてくれた人かもしれない。
【終わり】
肩にかかる重みに気がつくと妻の優里が寄りかかっている。もしやと思い、顔を覗き込むと寝息が聞こえた。
今夜は一人息子の弓弦がたまたま早寝してくれたので、録画してあったなんとかロードショーの映画をソファーに並んで夫婦で観ている。映画は優里のチョイスなので恋愛要素は多分、多い。
...うちの奥さんは、本当、こういうの好きだよなぁ。
ラブストーリーは男の俺が見るにはつまらないと思われたが、意外とアクションが多めでなかなか楽しめた。それに隣の優里が恋愛関係の絡みになると、目をキラキラさせながら、時にはキャーキャー言いながら、クッションを抱いて観ている様が可笑しくて、可愛くて。
付き合いたての頃も映画館で映画を観た事があるが、あの時はこんなふうにキャーキャー騒ぐ事はなく、カチコチに固まっていたので映画どころではなかったように思われる。俺の悪戯でカップルシートで見ながら手を繋いでいたせいもあるが。俺も初心な彼女の反応が面白く、あまり映画を観ていなかった。
こんな風に身も心も預けてくれるようになったのは、確か海外赴任が決まった頃。あの時は彼女とひとときも離れたくなくて、週末のたびにうちに来てもらっていた。
...懐かしいな、この居心地の良さは。
出産、育児という大きな出来事があったので長さは短くなってしまったが、色褪せていない栗毛色の髪。その髪を撫でながら、そこに唇を落とし耳元でわざと囁く。
「...そんなとこで寝てると風邪ひくよ。それとも俺に襲われたい?」
ふっと耳に息をかけると、寝ていたはずの優里が飛び跳ねるようにソファーの端まで後ずさる。耳を押さえ、後ずさった彼女の顔は真っ赤だ。
「い、いつからバレ...て?」
あんなに睫毛をピクピクと震わせて、バレていないと思うあたりがなんともまあ。
「髪に触ったあたりかな?それよりも...」
こっちに来てと手招きし膝の上に座らせる。素直に従う彼女は可愛いけど、狸寝入りはいただけないなぁと、背後から腕を回し逃さないようにしっかりホールド。無防備な首筋を甘噛みする。
「ひゃんっ...!」
予期せぬ刺激に優里の背中が仰反ってしまったようだが、構わずにパジャマの裾から手を入れた。そして、不埒な左手の指先が滑らかな肌をなぞると無粋な下着にぶち当たる。器用に方向転換して背中のホックを外すと、まろい膨らみが露わになった。途端に、優里は慌てて振り向き涙目で。
「ふ、藤澤、、さんっ...まっ」
「待たないよ、さっき狸寝入りした罰」
制止しようとする彼女の膨らみを直接下から手で包み込むように掬い上げると、指が頂に触れる。指でクルクルと柔らかなタッチで刺激すると、彼女の恥じらいとは裏腹にねだられるかのように存在感が増す。
「あっ、や...」
弓弦が産まれてから、優里との添い寝の権利は彼に明け渡した。だから、こんな風に頰を染めて恥じらう優里を見るのは久しぶりで。産後クライシスという夫婦間でわりと深刻な問題に直面し女性の生理というものの複雑さに普段は遠慮をしていた俺も、腕の中で乱れてゆく優里を見て興奮しないわけがなかった。
「優里の感じている顔が見たい」
リクエストを受け彼女がこちらに顔を向けると、美味しそうな唇が目の前に差し出される。まるで食べてと言わんばかりの唇を食むように貪ると逃げようとしていた優里の身体が蕩けるように、降参した。
「藤澤さんのバカ...エッチ」
チュッチュッとリップ音を立て繰り返される濃厚なキスの合間に息継ぎを要した優里が目を潤ませて抗議してきたものの、それを鵜呑みにするほど野暮じゃない。彼女の身体が疼き始めているのを指先で感じ取っていた俺は、意地悪く聞いてみる。
「なら、もう寝る?」
「..........」
「じゃ、ユズが寝ている間に続き、する?」
「.........ん、したい」
恥じらいながらも優里は小さく頷く。
ホント、何年たってもこういう初心な所は全然変わらないって思うが、たまには優里の方から求めて欲しいという願望も、ちらほらある。
ギュッと首にしがみつく好きな女性の身体は何年たっても欲しくて欲しくて堪らないが、本人にバレたら嫌われそうだから、ほどほどにしなくてはと煩悩と闘う。
まさに不惑の歳まわりで妻にこんなにのめり込むなんて、思いもよらなかった。
そういう意味では、優里は俺にとって『初めての恋』というものを教えてくれた人かもしれない。
【終わり】
0
お気に入りに追加
1,079
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(60件)
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
デキナイ私たちの秘密な関係
美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに
近寄ってくる男性は多いものの、
あるトラウマから恋愛をするのが億劫で
彼氏を作りたくない志穂。
一方で、恋愛への憧れはあり、
仲の良い同期カップルを見るたびに
「私もイチャイチャしたい……!」
という欲求を募らせる日々。
そんなある日、ひょんなことから
志穂はイケメン上司・速水課長の
ヒミツを知ってしまう。
それをキッカケに2人は
イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎
※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
本日も、こちらの世界を覗かせていただきました。
こちらの世界(作品)は、基本的に出先のPCで(お昼休み)に拝読しているのですが。おかげさまで、毎回、充実した時間を過ごせております。
これまでも、これからも。
引き続き、作者様が紡ぐ皆さんの世界に、お邪魔をさせていただきますね。
柚木ゆず様。
ご多忙中にもかかわらず、わざわざ出先のPCで読んでいただき、ありがとうございます。一時期より更新ペースが落ちてしまった本作を見つけていただいた上に楽しみにしていただけるなんて、嬉しいです。番外編も終盤に差し掛かりますが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。感想を励みに頑張ります。
素敵なお話、楽しませていただいております。
まだまだ序盤なのですが、すでにお気に入りでして。
そんな作品を、37万文字も楽しめるなんて。
と、幸せに感じております……っ。
柚木ゆず様。
足掛け何年かけて書いていたらこんな文字数になってしまいましたが、お気に入りにしてくださってありがとうございます。本編は完結で番外編をゆるーく更新しておりますが、お暇つぶしに読んでいただけたら嬉しいです。
子育ての忙しい中の更新ありがとうございます😊 幸せな結末を読めて嬉しかったです!
今巷では●●●が流行ってますが、どこで誰が移ってもおかしくない状況ですよね…😔 お互い手洗いうがい睡眠充分とって体力勝負❗️で乗り切りましょう^_^
マスクホントに売ってないですよね苦笑
myuu様。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
最近は外に出歩くのまで制限がかかり、不安な毎日が続きますがご自愛くださいませ。