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【spin-off】bittersweet first love
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「こちらの係の方ですか?」
あの話を聞かれたわけではないが、本人を目の前して後ろめたさに目逸らしながら、立ち上がる。
「えぇ、そうですけど...ご用件は?」
辛うじて平静を保とうとした為に、いつも以上に突き放した口調になってしまった。そんな俺が立ち上がるの待っていてくれたらしい。ずっと緊張気味の彼女はようやく口を開いた。
「...実は落とし物を拾いまして」
...わざわざそんなことの為に?
新入社員の彼女が見ず知らずの社員に声をかけるなんてさぞかし勇気がいっただろうなと、先程の事でバツが悪い俺はただ、ただ、感心する。そうとは知らずに彼女は肩にかけているバッグから出した物は、もちろん、誰かの落とし物なのだろうが。
「それっ!」
さっきまで探しまくっていたボールペンが目の前に現れ、指差して叫んでしまった。
「え??」
彼女は俺の剣幕に目をまん丸くして固まってしまったが、こちらは興奮してそんなのお構いなしだ。
「どこでこれを?」
「あ、あの、座った席の近くに落ちていたので...」
「そうだったんですか。その落とし物は自分のです。ずっと探してて、見つからなくて。どうも、ありがとうございます」
本当に感謝でしかなく深々とお辞儀をすると、「いえ、それは良かったです」と彼女は小さくはにかむ。
「いや、本当に助かりました」
そして、その彼女の手元から、ボールペンを早速受け取ろうとする。すると、他意はなく指先が彼女の手に触れてしまったようだ。
「きゃっ!?」
まるで磁石の反射みたいに弾かれるように手が引かれ、その反動で、再び、ボールペンが床に落ちそうに。
「うわっ!!?」
なったところを、反射的に俺の方がキャッチした。
...危ない、また見失うところだった。
拾い上げたからいいもののと、感謝がうって代わり文句の一つも言いそうになった。咄嗟に彼女の顔を見ると顔から耳まで真っ赤になっている。
何故?と今度は俺の方が固まった。
「...あの、どうかしましたか?」
恐る恐る様子を伺う。彼女は真っ赤になって顔を横に振るばかりで、何も答えてくれず、しまいには「ごめんなさい」と捨て台詞を残し、走っていった。というか、逃げられた。
その場に残された俺は、ナイスキャッチしたボールペンをしっかりと握りしめ、その後ろ姿を見送ったのだが。
...なんだ、あれ?
彼女の奇怪な行動が「恥じらい」という行為だと分かったのは、ようやく研究所の自席に戻れた頃。
トラブルが片付き、拾われたボールペンをシャツの胸ポケットにしまうと、先程の出来事がふと頭をかすめる。
...たまたま指が触れてしまっただけなのに。
不可抗力にあそこまで意識されるとまるでコントだと、笑いが込み上げた。
...あんな子が営業ねぇ?(笑)
今年のうちの新卒は全て男だと聞いているので、あの子が自分の部下になる可能性は限りなくゼロ。消去法で営業部にまわされる事が予想できた。
異性に対してスレてないというのは、プライベートでは問題はないだろうが、オフィシャルだと誤解を招きやすい。
...ま、ああいう反応は男から見れば好意があると、勘違いはするわな。
部下に持ったら上司として当然異性からの毒牙から守ってあげなければならないし、面倒くさい事このうえない。
俺は営業じゃなくてよかったし、こちらの新入社員が男で良かった。
あんな可愛い反応する部下を持ったら、大変、大変。
...ん?可愛い??
こんなに『可愛い』なんて単語を使うほど、彼女に好印象を持ってしまったのは、ボールペンをわざわざ届けてくれたせいだろう。
きっともう2度と会わないだろうけど、なかなか面白い体験だった。
仕事中、クスリと思い出し笑いをしてしまうほどに。
あの話を聞かれたわけではないが、本人を目の前して後ろめたさに目逸らしながら、立ち上がる。
「えぇ、そうですけど...ご用件は?」
辛うじて平静を保とうとした為に、いつも以上に突き放した口調になってしまった。そんな俺が立ち上がるの待っていてくれたらしい。ずっと緊張気味の彼女はようやく口を開いた。
「...実は落とし物を拾いまして」
...わざわざそんなことの為に?
新入社員の彼女が見ず知らずの社員に声をかけるなんてさぞかし勇気がいっただろうなと、先程の事でバツが悪い俺はただ、ただ、感心する。そうとは知らずに彼女は肩にかけているバッグから出した物は、もちろん、誰かの落とし物なのだろうが。
「それっ!」
さっきまで探しまくっていたボールペンが目の前に現れ、指差して叫んでしまった。
「え??」
彼女は俺の剣幕に目をまん丸くして固まってしまったが、こちらは興奮してそんなのお構いなしだ。
「どこでこれを?」
「あ、あの、座った席の近くに落ちていたので...」
「そうだったんですか。その落とし物は自分のです。ずっと探してて、見つからなくて。どうも、ありがとうございます」
本当に感謝でしかなく深々とお辞儀をすると、「いえ、それは良かったです」と彼女は小さくはにかむ。
「いや、本当に助かりました」
そして、その彼女の手元から、ボールペンを早速受け取ろうとする。すると、他意はなく指先が彼女の手に触れてしまったようだ。
「きゃっ!?」
まるで磁石の反射みたいに弾かれるように手が引かれ、その反動で、再び、ボールペンが床に落ちそうに。
「うわっ!!?」
なったところを、反射的に俺の方がキャッチした。
...危ない、また見失うところだった。
拾い上げたからいいもののと、感謝がうって代わり文句の一つも言いそうになった。咄嗟に彼女の顔を見ると顔から耳まで真っ赤になっている。
何故?と今度は俺の方が固まった。
「...あの、どうかしましたか?」
恐る恐る様子を伺う。彼女は真っ赤になって顔を横に振るばかりで、何も答えてくれず、しまいには「ごめんなさい」と捨て台詞を残し、走っていった。というか、逃げられた。
その場に残された俺は、ナイスキャッチしたボールペンをしっかりと握りしめ、その後ろ姿を見送ったのだが。
...なんだ、あれ?
彼女の奇怪な行動が「恥じらい」という行為だと分かったのは、ようやく研究所の自席に戻れた頃。
トラブルが片付き、拾われたボールペンをシャツの胸ポケットにしまうと、先程の出来事がふと頭をかすめる。
...たまたま指が触れてしまっただけなのに。
不可抗力にあそこまで意識されるとまるでコントだと、笑いが込み上げた。
...あんな子が営業ねぇ?(笑)
今年のうちの新卒は全て男だと聞いているので、あの子が自分の部下になる可能性は限りなくゼロ。消去法で営業部にまわされる事が予想できた。
異性に対してスレてないというのは、プライベートでは問題はないだろうが、オフィシャルだと誤解を招きやすい。
...ま、ああいう反応は男から見れば好意があると、勘違いはするわな。
部下に持ったら上司として当然異性からの毒牙から守ってあげなければならないし、面倒くさい事このうえない。
俺は営業じゃなくてよかったし、こちらの新入社員が男で良かった。
あんな可愛い反応する部下を持ったら、大変、大変。
...ん?可愛い??
こんなに『可愛い』なんて単語を使うほど、彼女に好印象を持ってしまったのは、ボールペンをわざわざ届けてくれたせいだろう。
きっともう2度と会わないだろうけど、なかなか面白い体験だった。
仕事中、クスリと思い出し笑いをしてしまうほどに。
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