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【spin-off】bittersweet first love
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駅までの道のりは約10分程度。1人ならもっと早くに着いただろう。だが、今は離れがたいから小柄な彼女の歩幅に合わせ何度言いかけては諦めて。ようやく口にできたのは、駅に着いてしまってから。こんな風に女性を気遣うのは初めての経験だった。
「...次は、いつ会える?」
そういう俺自身も理系学部なのでわりと多忙だったが、高澤に比べれば多少なりとも都合はつく。駅の上部にある路線図を確認していた彼女は「そうだね...」と言いながらも即答はしない。
...それはそうか。倉科とはっきりさせるまで、無理だよな。
当然、それ以上に聞く権利もなくその話題に触れられずにいると、改札口を通る前に彼女に左手を両手で包み込むように握られた。予期せぬ出来事にピクっと全身が震えたが、あくまでも普通を装った。
「...どうした?」
「うん、なんとなく。だって、藤澤、難しい顔してるし」
心配そうにこちらを伺う彼女の温もりに包まれている左手が熱を持つと同時に、顔に出てしまっていたかと反省。「明日の授業に苦手な教授の科目がある」と嘘をつくと「なんだ、そんなこと」と彼女は短く息を吐く。
「...そんな事って言うけど嫌なものは仕方がないだろ?」
「まあ、そうだけど。藤澤でもそういう事あるんだね。なんか、ほら、いつも無関心、無感動、無表情だし?(笑)」
相変わらずのズケズケした物言いにすごい言われようだなと苦笑してしまう反面、いつも通りのやり取りにホッとする。彼女には俺のことで悩んで欲しくなかったからだ。
「おい、人の事を冷血動物みたいにって...あ、電車大丈夫か?」
何処からともなくアナウンスが聞こえ、高澤の手がするりと離れてゆく。その一抹の寂しさに言葉をかけずらくなってしまうと、彼女の方から。
「うん。じゃあ、また」
「ああ」
別れ際「連絡するね」と言い残し、彼女は笑顔を見せながら改札口を通過する。ただ、その笑顔が儚く、手を振り見送った俺にはいつかの 既視感を思い起こさせた。
...気のせいか。
帰路につく時にふと何かが頭をよぎるが、彼女と過ごした昨夜の思い出と「またね」という言葉にどうでも良くなった。
ただ、一週間経つか経たないうちに胸騒ぎを覚え、一度、彼女に電話をする。その明るい声を聞いて安堵を覚え、「実習が終わらないうちは会えない」と釘を刺された。ちょうど俺も大学での前期の試験、課題のレポートを控えていたのでそこは素直に従った。
「...藤澤の声、聞いたら会いたくなっちゃう」
「じゃあ、会えばいい」
「ううん、ダメ。今度は帰りたくなくなっちゃうもん」
「...そうか」
なんて、今までにはありえなかった会話のラリーに「俺から会いに行こうか」何度思ったことか。ただ、彼女の勉強を邪魔したくなかったので、すんでの所で言葉を飲み込んだ。そして、電話を切った後、部屋のカレンダーを見るともうすぐ夏の季節。きっとその頃には会えるだろうと大学生となり彼女と過ごす初めての夏に心躍らせ、その為にもとため息混じりに携帯を操作する。数回コールした後、機械の音声ではなく、本人が運良く出てくれた。
「倉科?...俺だけど、会って話したいことがある」
こちらから会いたいというのは珍しかったらしく、すぐに会えることになった。
「...次は、いつ会える?」
そういう俺自身も理系学部なのでわりと多忙だったが、高澤に比べれば多少なりとも都合はつく。駅の上部にある路線図を確認していた彼女は「そうだね...」と言いながらも即答はしない。
...それはそうか。倉科とはっきりさせるまで、無理だよな。
当然、それ以上に聞く権利もなくその話題に触れられずにいると、改札口を通る前に彼女に左手を両手で包み込むように握られた。予期せぬ出来事にピクっと全身が震えたが、あくまでも普通を装った。
「...どうした?」
「うん、なんとなく。だって、藤澤、難しい顔してるし」
心配そうにこちらを伺う彼女の温もりに包まれている左手が熱を持つと同時に、顔に出てしまっていたかと反省。「明日の授業に苦手な教授の科目がある」と嘘をつくと「なんだ、そんなこと」と彼女は短く息を吐く。
「...そんな事って言うけど嫌なものは仕方がないだろ?」
「まあ、そうだけど。藤澤でもそういう事あるんだね。なんか、ほら、いつも無関心、無感動、無表情だし?(笑)」
相変わらずのズケズケした物言いにすごい言われようだなと苦笑してしまう反面、いつも通りのやり取りにホッとする。彼女には俺のことで悩んで欲しくなかったからだ。
「おい、人の事を冷血動物みたいにって...あ、電車大丈夫か?」
何処からともなくアナウンスが聞こえ、高澤の手がするりと離れてゆく。その一抹の寂しさに言葉をかけずらくなってしまうと、彼女の方から。
「うん。じゃあ、また」
「ああ」
別れ際「連絡するね」と言い残し、彼女は笑顔を見せながら改札口を通過する。ただ、その笑顔が儚く、手を振り見送った俺にはいつかの 既視感を思い起こさせた。
...気のせいか。
帰路につく時にふと何かが頭をよぎるが、彼女と過ごした昨夜の思い出と「またね」という言葉にどうでも良くなった。
ただ、一週間経つか経たないうちに胸騒ぎを覚え、一度、彼女に電話をする。その明るい声を聞いて安堵を覚え、「実習が終わらないうちは会えない」と釘を刺された。ちょうど俺も大学での前期の試験、課題のレポートを控えていたのでそこは素直に従った。
「...藤澤の声、聞いたら会いたくなっちゃう」
「じゃあ、会えばいい」
「ううん、ダメ。今度は帰りたくなくなっちゃうもん」
「...そうか」
なんて、今までにはありえなかった会話のラリーに「俺から会いに行こうか」何度思ったことか。ただ、彼女の勉強を邪魔したくなかったので、すんでの所で言葉を飲み込んだ。そして、電話を切った後、部屋のカレンダーを見るともうすぐ夏の季節。きっとその頃には会えるだろうと大学生となり彼女と過ごす初めての夏に心躍らせ、その為にもとため息混じりに携帯を操作する。数回コールした後、機械の音声ではなく、本人が運良く出てくれた。
「倉科?...俺だけど、会って話したいことがある」
こちらから会いたいというのは珍しかったらしく、すぐに会えることになった。
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