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【spin-off】bittersweet first love
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「...私達ってどういう関係に見えるかなぁ?」
道すがら歩いていると不意に高澤が呟いた。いきなり何を?と彼女の視線の先を探ると店の窓ガラス。この窓ガラスに俺たちの姿が映っていたらしい。
「どうって、ただの友達だろ?」
倉科と歩いている時は手を繋いだり、腕を組んだりどこかしら彼女に触れられていることが多いので、全く触れずにある一定の間隔を保っていられるのは友達以外何者でないと思われる。だから、即答できたのだが。
「...そう、だよね。ただの友達」
俺の言葉を復唱した高澤の横顔が寂しげに見える。だが、今の俺にその理由を聞く権利はなく、それ以上この事に触れることができなかった。
...仕方ないさ。俺には倉科がいるし。第一、彼女を俺に勧めたのは...君だろ?
その時のやり場のない気持ちは今も覚えている。でも、その気持ちを口に出したら何が変わるわけでもないし、後味の悪さが残るだけ。分かっているからこそ、倉科の話題も避け続け、高澤もあれから倉科の名前は一切口にせず、俺たちは気ままに道をぶらついた。そして、楽しく過ごしていたからこそ時間の流れは速く感じ、気がつくと夕暮れ時になりポツポツと街の街灯が灯り始める。
「夕飯どうする?この辺りで食べていくか?」
田山たちと別れた時と違い、久々の再会からかなり打ち解けているので自然と誘えた。それに断られないだろうという気持ちも何故かあり、予想していた通りこの辺りで食べていくことになった。そうと決まれば店選び。散々歩き回された俺のリクエストは、こんなに歩いたならさぞ美味しく飲めるだろうということで。
「ビールが飲みたい!」
「未成年なのにっ!?」
すぐにツッコミを入れてくる高澤は相変わらず優等生気質。そういうとこは変わっていないなと微笑ましかったが、ここは曲げない。
「田山に散々飲まされているから大丈夫。それに今まで付き合ったんだから今度は俺のリクエスト聞いてくれたっていいだろ?」
「...でも、本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ」
彼女の心配を他所にスマホ検索。この辺りはカフェばかりでアルコールが出そうになく、江ノ電沿いのファミレスをようやく発見する。ここならビールが飲めそうだと嬉々として江ノ電に乗るとさっきまで心配顔の高澤も初めての江ノ電に興味津々。
「本当に海沿い走るんだ?」
「俺も初めて乗った時はこんなに海が近くで眺められるって驚いたよ」
特に今は夕暮れ時で、海の地平線がオレンジ色に映えて美しい。その移りゆく光景を高澤と一緒に見ている。
この不思議な、高揚感をなんと表現したらいいのだろう?
「海、綺麗だね...」
「ああ」
それ以降、外の景色に夢中になり言葉が2人とも続かず、俺はファミレスでハンバーグステーキを食べている時でさえ、まだ、あの不思議な高揚感が持続していた。気がつくと向かい席の高澤はオムライスを食べ終え、ストロベリーパフェなんぞ食べている。その食べる仕草が可愛いくて、目の前のビールを飲む事を忘れそうになる。
「...なに?」
いくら鈍感な高澤でもあからさまな俺の視線には気がついたようで、俺に懐疑的な視線。どうやら彼女の食べっぷりを見ながら少し笑ってしまったらしい。
「いや、よく食べるなーって思って目が離せなかったわ」
本心を隠しつついつもの憎まれ口を叩くと、彼女の態度も通常通り。
「相変わらず、藤澤は口悪すぎ!」
「...ほっとけ」
こんなやり取りに昔は本当にムカついていたのだが、緩やかな空気の中で彼女と過ごす時間が楽しい。
だが、こんな時間もいずれ終わる。愛でも恋でもない『情』を倉科に持ち続ける事の虚しさと天秤にかけても、高澤に今の気持ちを悟られてはならない。
ちゃんと最後まで友達として終わろうと、目の前のビールを呷る。
道すがら歩いていると不意に高澤が呟いた。いきなり何を?と彼女の視線の先を探ると店の窓ガラス。この窓ガラスに俺たちの姿が映っていたらしい。
「どうって、ただの友達だろ?」
倉科と歩いている時は手を繋いだり、腕を組んだりどこかしら彼女に触れられていることが多いので、全く触れずにある一定の間隔を保っていられるのは友達以外何者でないと思われる。だから、即答できたのだが。
「...そう、だよね。ただの友達」
俺の言葉を復唱した高澤の横顔が寂しげに見える。だが、今の俺にその理由を聞く権利はなく、それ以上この事に触れることができなかった。
...仕方ないさ。俺には倉科がいるし。第一、彼女を俺に勧めたのは...君だろ?
その時のやり場のない気持ちは今も覚えている。でも、その気持ちを口に出したら何が変わるわけでもないし、後味の悪さが残るだけ。分かっているからこそ、倉科の話題も避け続け、高澤もあれから倉科の名前は一切口にせず、俺たちは気ままに道をぶらついた。そして、楽しく過ごしていたからこそ時間の流れは速く感じ、気がつくと夕暮れ時になりポツポツと街の街灯が灯り始める。
「夕飯どうする?この辺りで食べていくか?」
田山たちと別れた時と違い、久々の再会からかなり打ち解けているので自然と誘えた。それに断られないだろうという気持ちも何故かあり、予想していた通りこの辺りで食べていくことになった。そうと決まれば店選び。散々歩き回された俺のリクエストは、こんなに歩いたならさぞ美味しく飲めるだろうということで。
「ビールが飲みたい!」
「未成年なのにっ!?」
すぐにツッコミを入れてくる高澤は相変わらず優等生気質。そういうとこは変わっていないなと微笑ましかったが、ここは曲げない。
「田山に散々飲まされているから大丈夫。それに今まで付き合ったんだから今度は俺のリクエスト聞いてくれたっていいだろ?」
「...でも、本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ」
彼女の心配を他所にスマホ検索。この辺りはカフェばかりでアルコールが出そうになく、江ノ電沿いのファミレスをようやく発見する。ここならビールが飲めそうだと嬉々として江ノ電に乗るとさっきまで心配顔の高澤も初めての江ノ電に興味津々。
「本当に海沿い走るんだ?」
「俺も初めて乗った時はこんなに海が近くで眺められるって驚いたよ」
特に今は夕暮れ時で、海の地平線がオレンジ色に映えて美しい。その移りゆく光景を高澤と一緒に見ている。
この不思議な、高揚感をなんと表現したらいいのだろう?
「海、綺麗だね...」
「ああ」
それ以降、外の景色に夢中になり言葉が2人とも続かず、俺はファミレスでハンバーグステーキを食べている時でさえ、まだ、あの不思議な高揚感が持続していた。気がつくと向かい席の高澤はオムライスを食べ終え、ストロベリーパフェなんぞ食べている。その食べる仕草が可愛いくて、目の前のビールを飲む事を忘れそうになる。
「...なに?」
いくら鈍感な高澤でもあからさまな俺の視線には気がついたようで、俺に懐疑的な視線。どうやら彼女の食べっぷりを見ながら少し笑ってしまったらしい。
「いや、よく食べるなーって思って目が離せなかったわ」
本心を隠しつついつもの憎まれ口を叩くと、彼女の態度も通常通り。
「相変わらず、藤澤は口悪すぎ!」
「...ほっとけ」
こんなやり取りに昔は本当にムカついていたのだが、緩やかな空気の中で彼女と過ごす時間が楽しい。
だが、こんな時間もいずれ終わる。愛でも恋でもない『情』を倉科に持ち続ける事の虚しさと天秤にかけても、高澤に今の気持ちを悟られてはならない。
ちゃんと最後まで友達として終わろうと、目の前のビールを呷る。
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