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【spin-off】bittersweet first love
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吉岡が言っていた『思うところ』というのは、大いに心当たりがある。
もちろん彼女の事だ。
最後に会った時、彼女に対して何か失礼な言動をやらかしてしまったのだろうか?
それなら直接会って謝りたいと切に願ったものの、普段から女子に対し素っ気ない態度をとりまくっていたものだから、自分でおこすアクションに自信はなかった。そのうえ、あちらの方から音信不通にされれば為す術はない。それでどうしようかと思っていた矢先、吉岡からの誘いは渡りに船の出来事の、はずだった。
※※※
文化祭当日。
一般開放された女子校の校内をまわる事になるのだが、ここの受験生やその保護者など一般客が思いの外多く、男3人でこの場にいる事に奇異の目で見られる事はなかった。中には堂々と軟派目的と分かるグループもおり、その中で俺たちは大人しい方で。途中、何度か店の勧誘にあいつつもゆるりとかわしながら、吉岡の彼女のいるクラスへとたどり着く。
「ここ、ここ」
吉岡が彼女から知らされていたクラスを見つけると、そこは着物をきた女生徒が給仕する和風喫茶店。たまたま人気が無かったためか、すぐに空いている席に案内され席に着くと着物を着付けた女子が早速1人注文取りに。
「...いらっしゃいませ。あ、吉岡君!?来てくれたんだ?ちょっと待ってて!夢、呼んでくるね」
どうやら彼女は吉岡の知り合いらしく、注文取りもそこそこに奥へと引っ込むと程なくして、数人の女子たちがやってくる。吉岡の彼女を連れてきてくれたらしい。キャッキャッと一気に席の周りは黄色い声で賑やかになった。
「夢、彼氏、紹介してよ」
「...やだ、そんなに大きな声で」
周りからやいのやいの言われて頰をほんのり紅く染めた三つ編みの女子が吉岡の彼女らしい。簡単に俺と田山に自己紹介をしてくれて俺たちも軽く会釈を返し、もう1人周りから何故かせっつかれてわざわざ声をかけてきた女子がいた。
「久しぶり、藤澤君...げ、元気してた?」
少しはにかみながら声をかけてきた子に見覚えはあるものの名前は失念していた。だが、無理して思い出そうとするほど大して興味がない。「ああ」とそっけない返事を返してしまうと田山が変なフォローを入れてきた。
「うんっ、メチャクチャ元気!!それに今日は倉科に会えるのをすご~く楽しみにしていたんだよなっ、藤澤!!」
...倉科?
その名前にピンと反応して、高澤とすごく仲の良かった女生徒だと思い直した。そして、同じクラスだという事も風の便りに聞いた気がする。そんな事を考えながら彼女たちの自己紹介を聞き彼女らが持ち場に戻った途端、高澤の姿を人知れず目だけで探した。
...ここには居ないのか?
ざっと見渡してもそれらしき女生徒の姿は見当たらない。探すのを諦めた俺は注文していたみつ豆を食べ始め、田山や吉岡も各々食べ始めるが、田山は久々に見る女生徒たちに気もそぞろ。キョロキョロしながら食べていたので些かマナーが悪いと感じる。
「田山、さっさと食べろよ」
「...わかってるよ」
と言いつつも、やっぱり何かが気になるようで俺もそんな彼が気になった。
「どうした?」
「...いや、確かこのクラスだったと思ったんだけど」
吉岡も田山の動きが気になり始めたようで食べていたあんみつを一気食いした後、「誰か探してるん?」と促す。それに田山は首を傾げながら白状した。
「うーん、高澤が俺に用事があるって聞いてここに来れば会えると思ってさ」
...田山も高澤を探してた?っていうか連絡取り合っていたのか??
どういう訳か胸がもやっとしたが、そんな事をおくびにも出さずに2人の会話を聞くと、吉岡は彼女を呼び出してくれた。
「晶、今の時間は見回りしてるよ」
吉岡の彼女の言う事には高澤は文化祭委員らしく、クラスの催し物にはノータッチ。ここに常駐しているわけでは無かった。
もちろん彼女の事だ。
最後に会った時、彼女に対して何か失礼な言動をやらかしてしまったのだろうか?
それなら直接会って謝りたいと切に願ったものの、普段から女子に対し素っ気ない態度をとりまくっていたものだから、自分でおこすアクションに自信はなかった。そのうえ、あちらの方から音信不通にされれば為す術はない。それでどうしようかと思っていた矢先、吉岡からの誘いは渡りに船の出来事の、はずだった。
※※※
文化祭当日。
一般開放された女子校の校内をまわる事になるのだが、ここの受験生やその保護者など一般客が思いの外多く、男3人でこの場にいる事に奇異の目で見られる事はなかった。中には堂々と軟派目的と分かるグループもおり、その中で俺たちは大人しい方で。途中、何度か店の勧誘にあいつつもゆるりとかわしながら、吉岡の彼女のいるクラスへとたどり着く。
「ここ、ここ」
吉岡が彼女から知らされていたクラスを見つけると、そこは着物をきた女生徒が給仕する和風喫茶店。たまたま人気が無かったためか、すぐに空いている席に案内され席に着くと着物を着付けた女子が早速1人注文取りに。
「...いらっしゃいませ。あ、吉岡君!?来てくれたんだ?ちょっと待ってて!夢、呼んでくるね」
どうやら彼女は吉岡の知り合いらしく、注文取りもそこそこに奥へと引っ込むと程なくして、数人の女子たちがやってくる。吉岡の彼女を連れてきてくれたらしい。キャッキャッと一気に席の周りは黄色い声で賑やかになった。
「夢、彼氏、紹介してよ」
「...やだ、そんなに大きな声で」
周りからやいのやいの言われて頰をほんのり紅く染めた三つ編みの女子が吉岡の彼女らしい。簡単に俺と田山に自己紹介をしてくれて俺たちも軽く会釈を返し、もう1人周りから何故かせっつかれてわざわざ声をかけてきた女子がいた。
「久しぶり、藤澤君...げ、元気してた?」
少しはにかみながら声をかけてきた子に見覚えはあるものの名前は失念していた。だが、無理して思い出そうとするほど大して興味がない。「ああ」とそっけない返事を返してしまうと田山が変なフォローを入れてきた。
「うんっ、メチャクチャ元気!!それに今日は倉科に会えるのをすご~く楽しみにしていたんだよなっ、藤澤!!」
...倉科?
その名前にピンと反応して、高澤とすごく仲の良かった女生徒だと思い直した。そして、同じクラスだという事も風の便りに聞いた気がする。そんな事を考えながら彼女たちの自己紹介を聞き彼女らが持ち場に戻った途端、高澤の姿を人知れず目だけで探した。
...ここには居ないのか?
ざっと見渡してもそれらしき女生徒の姿は見当たらない。探すのを諦めた俺は注文していたみつ豆を食べ始め、田山や吉岡も各々食べ始めるが、田山は久々に見る女生徒たちに気もそぞろ。キョロキョロしながら食べていたので些かマナーが悪いと感じる。
「田山、さっさと食べろよ」
「...わかってるよ」
と言いつつも、やっぱり何かが気になるようで俺もそんな彼が気になった。
「どうした?」
「...いや、確かこのクラスだったと思ったんだけど」
吉岡も田山の動きが気になり始めたようで食べていたあんみつを一気食いした後、「誰か探してるん?」と促す。それに田山は首を傾げながら白状した。
「うーん、高澤が俺に用事があるって聞いてここに来れば会えると思ってさ」
...田山も高澤を探してた?っていうか連絡取り合っていたのか??
どういう訳か胸がもやっとしたが、そんな事をおくびにも出さずに2人の会話を聞くと、吉岡は彼女を呼び出してくれた。
「晶、今の時間は見回りしてるよ」
吉岡の彼女の言う事には高澤は文化祭委員らしく、クラスの催し物にはノータッチ。ここに常駐しているわけでは無かった。
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