170 / 199
【spin-off】bittersweet first love
10
しおりを挟む
外部受験から一転、俺は系列大学の推薦に合格し高3の秋を迎える。つい最近まで外部受験の為に予備校に通い受験勉強をしていた日々が嘘みたいに思えるほど緊張感のない高校生活を送っていた。それは周りの人間、田山や吉岡も例外ではなく部活動を卒業した彼らも残り少ない高校生活を勉強以外の事に謳歌している。
「ったく、なんでこんなに今年は暑いんだよ!もう、9月半ばだろ??」
二学期が始まり、授業どころではない尋常じゃない暑さが続く。一緒に帰る予定の田山はこの日の日直で、日誌を書くのをやめ半袖ワイシャツの開襟部分を開閉しながらだらけ始める。暑がりの彼はこの時期にめっぽう弱いのは知ってはいたが、今年は予想以上の猛暑だった。
「暑いのは夏だからだろ?暑い暑い連呼するな。余計に暑苦しいわ!」
こんな暑い中、だらだらと待たせられている俺の身にもなってみろと一喝すると、今度は難癖つけられる。
「そんな事言ったって、暑いものは仕方ないじゃん!こんなに暑いのに藤澤みたいにしれっと涼しい顔してる方がどうかしてる!お前は冷血動物か!!」
「どうかしてるって、俺だって暑いさ。お前の方こそその異常な暑がりを治せ」
売り言葉に買い言葉の丁々発止しで騒いでしまうと、待ち人来たり。ジャンケンで負けて飲み物を一階の購買の自販機まで買いに行った吉岡が戻ってきた。
「おせーよ!」
「バーカ。これでも急いで来たんだから感謝しろな!それに何騒いでんだ?人が少ないから廊下まで聞こえたぞ。みっともねぇなぁ...ほら、田山はコーラに藤澤は、、ポカリ?」
「サンキュ」
各々注文した飲み物を受け取ると待ってましたとばかりに、息つく暇もなくプルトップを開け、大口で一気飲み。喉がひんやり潤ってくると暑さでヒートアップしていた頭が徐々に冷えてゆく。それは田山も同様なようで。
「はぁー、生き返る!!」
あっという間にコーラを飲み干した田山はやる気を取り戻し、再び日誌を書き始める。俺と吉岡は暇を持て余し、近くの空いている席に座った。そして、田山を待ちながらチビチビと飲み物を飲んでいると、かったるいと机に突っ伏していた吉岡がムクリと顔を上げる。
「そうだ、忘れてた」
「なにを?」
「女子部の文化祭。来月なんだけど田山、お前行くか?」
吉岡は彼女がいるし田山は新しい出会いを求めて、毎年必ず行っている女子部の文化祭。ただ、ここの文化祭は招待制なので不特定多数の人間が自由に入場できるわけではなく、吉岡の彼女のつてで田山は入れていたので、その確認というわけだ。俺はというと一度だけ興味本位で行ったことはあったが、それ以来行くことはなかった。
「行く行く!絶対、行く!!」
日誌もそっちのけで身を乗り出してまで返事をする田山を吉岡はハイハイと軽くいなし、チラリと俺の方を見る。
「...藤澤は今年どうする?ユメちゃんが藤澤に会いたがってるんだけど」
ユメちゃんとは吉岡の彼女の事で噂は聞いていたが遠目でしか見た事はないし、話した事もない。吉岡にこんな風に誘われても行く気はなかった。
「無理無理!藤澤が行くわけないじゃん、女子部の文化祭なんて」
そんな俺の代わりにシレッと田山が返事をしてくれたのだが。
「...今年は行く」
ボソッと独り言のように呟くと、答えはNOだと信じきってやまない2人は一瞬言葉を失った。
「マジかっ?!」
即座に反応したのは田山。その後吉岡と続き「あり得ない!」と2人は口々に言い始める。こんな風に驚かれるとは思っていなかったので些か心外に思う。
「うるせーな。気が変わったんだよ、悪いか?」
俺があからさまに不機嫌になると、誘った吉岡は俺の気が変わらないように田山を制した。
「まー、藤澤も高校最後の年だし思うところもあんだろ?田山もそう茶化すなって」
『思うところ』、、、吉岡の言葉は確かに的を得ている。
「ったく、なんでこんなに今年は暑いんだよ!もう、9月半ばだろ??」
二学期が始まり、授業どころではない尋常じゃない暑さが続く。一緒に帰る予定の田山はこの日の日直で、日誌を書くのをやめ半袖ワイシャツの開襟部分を開閉しながらだらけ始める。暑がりの彼はこの時期にめっぽう弱いのは知ってはいたが、今年は予想以上の猛暑だった。
「暑いのは夏だからだろ?暑い暑い連呼するな。余計に暑苦しいわ!」
こんな暑い中、だらだらと待たせられている俺の身にもなってみろと一喝すると、今度は難癖つけられる。
「そんな事言ったって、暑いものは仕方ないじゃん!こんなに暑いのに藤澤みたいにしれっと涼しい顔してる方がどうかしてる!お前は冷血動物か!!」
「どうかしてるって、俺だって暑いさ。お前の方こそその異常な暑がりを治せ」
売り言葉に買い言葉の丁々発止しで騒いでしまうと、待ち人来たり。ジャンケンで負けて飲み物を一階の購買の自販機まで買いに行った吉岡が戻ってきた。
「おせーよ!」
「バーカ。これでも急いで来たんだから感謝しろな!それに何騒いでんだ?人が少ないから廊下まで聞こえたぞ。みっともねぇなぁ...ほら、田山はコーラに藤澤は、、ポカリ?」
「サンキュ」
各々注文した飲み物を受け取ると待ってましたとばかりに、息つく暇もなくプルトップを開け、大口で一気飲み。喉がひんやり潤ってくると暑さでヒートアップしていた頭が徐々に冷えてゆく。それは田山も同様なようで。
「はぁー、生き返る!!」
あっという間にコーラを飲み干した田山はやる気を取り戻し、再び日誌を書き始める。俺と吉岡は暇を持て余し、近くの空いている席に座った。そして、田山を待ちながらチビチビと飲み物を飲んでいると、かったるいと机に突っ伏していた吉岡がムクリと顔を上げる。
「そうだ、忘れてた」
「なにを?」
「女子部の文化祭。来月なんだけど田山、お前行くか?」
吉岡は彼女がいるし田山は新しい出会いを求めて、毎年必ず行っている女子部の文化祭。ただ、ここの文化祭は招待制なので不特定多数の人間が自由に入場できるわけではなく、吉岡の彼女のつてで田山は入れていたので、その確認というわけだ。俺はというと一度だけ興味本位で行ったことはあったが、それ以来行くことはなかった。
「行く行く!絶対、行く!!」
日誌もそっちのけで身を乗り出してまで返事をする田山を吉岡はハイハイと軽くいなし、チラリと俺の方を見る。
「...藤澤は今年どうする?ユメちゃんが藤澤に会いたがってるんだけど」
ユメちゃんとは吉岡の彼女の事で噂は聞いていたが遠目でしか見た事はないし、話した事もない。吉岡にこんな風に誘われても行く気はなかった。
「無理無理!藤澤が行くわけないじゃん、女子部の文化祭なんて」
そんな俺の代わりにシレッと田山が返事をしてくれたのだが。
「...今年は行く」
ボソッと独り言のように呟くと、答えはNOだと信じきってやまない2人は一瞬言葉を失った。
「マジかっ?!」
即座に反応したのは田山。その後吉岡と続き「あり得ない!」と2人は口々に言い始める。こんな風に驚かれるとは思っていなかったので些か心外に思う。
「うるせーな。気が変わったんだよ、悪いか?」
俺があからさまに不機嫌になると、誘った吉岡は俺の気が変わらないように田山を制した。
「まー、藤澤も高校最後の年だし思うところもあんだろ?田山もそう茶化すなって」
『思うところ』、、、吉岡の言葉は確かに的を得ている。
0
お気に入りに追加
1,079
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
デキナイ私たちの秘密な関係
美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに
近寄ってくる男性は多いものの、
あるトラウマから恋愛をするのが億劫で
彼氏を作りたくない志穂。
一方で、恋愛への憧れはあり、
仲の良い同期カップルを見るたびに
「私もイチャイチャしたい……!」
という欲求を募らせる日々。
そんなある日、ひょんなことから
志穂はイケメン上司・速水課長の
ヒミツを知ってしまう。
それをキッカケに2人は
イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎
※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる