社内恋愛はじめました。

柊 いつき

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159.誰が為に鐘は鳴る⑮

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「今日は帰らないで...下さい」

嫌われるかもしれない言葉を伝えると手が震える。聞き分けのない言葉を聞いたはずの藤澤さんは手を振りほどかなかった。

「俺だって離れたくはないさ。でも、理性が...その」

こんなやりとりは以前も。その時は何も分からない子供だったけれど今なら彼の言わんとしていることは分かる。

「...私も同じ気持ちです、多分」

思いがけない言葉に眼を見張って驚く彼は相当慌ててしまったらしい。より具体的な事を口にした。

「いや、そ、そう言ってもらえるのは嬉しいけど。根本的な問題があって...その、避妊とか」

彼は今までその事を怠った事は一度もない。それは私の身を案じてのことだと知っている。それでも今だけは何も考えないで、私だけを思って欲しい。

「...いいです、それでも」

彼を引き止めたいという気持ちが高ぶって声までが震えてくる。藤澤さんは私の手を振りほどけないままずっと押し黙り、その沈黙が怖かった。

「だから、もうひとりにしないで...お願い」

ずっと伝えられなかった気持ち本心 。吐き出してしまうと感極まり彼の顔が強くて見れなくて俯いてしまう。けれど、どういう訳か顎に手を添えられ俯くことを許されなかった。強引に向かされた視線の先には藤澤さんの顔が否応なしに飛び込んでくる。

「本当に優里は何でも1人で完結しすぎ」

コツンと私と額を合わせる彼は小さく笑い、私をソファーから横抱きに抱えあげた。

「もう何があっても離れないよ」

彼へとしがみついた私はベッドへと運ばれながら涙目になる。その頰を伝う涙をベッド押し倒された時、彼に唇で吸われた。

「藤澤さん...私、離れたくない」

「ああ、分かってる。離さないから」

啄むように頰に軽くキスを落としてゆく彼の瞳から躊躇いは消え、熱情が見える。私を欲しがる彼の手は性急になり、みるみるうちに肌を露出させてゆく。

「あ、んっ..」

肌に受ける彼の唇は甘い拷問だ。ずっと誰にも触れられず強張っていた身体が少しずつ解されて声を出さずにはいられない。

「それっ...やっ」

私の胸に顔を埋められ胸の先を舌で弄ばれるとビクッと背中が動いてしまう。久々に触れられてこんなに乱れる自分が恥ずかしかった。それでも唇での愛撫は続いて。

「優里は本当に可愛い」

獲物に狙いを定める豹のごとく彼の切れ長の瞳がすっと細められる。次の瞬間 、呑み込まれるようなキスがやってきた 。唇が重なると同時に彼の舌は私の舌を遠慮なく絡め取るキスは今までのキスとは違いさらに甘く刺激的で 、呼吸さえも奪われるよう。内に秘める情熱を唇から注ぎ込まれ 、私は夢中になって彼のキスに応える。角度を変えながらあらゆる重なりで唇を合わせ 、どちらのものかも分からない舌を啜っていた。

「んんっ...」

唇の隙間から息を吸い彼が強引に仕かけたキスに酔いしれる。最後に音を立てて離れた彼の唇も自分のものも、きっと濡れて光っている。大きく息を吐くと藤澤さん自分の口元を手で拭った。その顔に見惚れてしまうと足の間に彼が身体を入れ込んだ。

「そこっ...やだ…っあ ! 」

足の間が無防備に外気にさらされ 、一気に私の体温が上がる。彼は迷いなく私の足の間に指を這わせてきた。そして、彼は私の隙間辺りを撫でて一つ指を入れてくる 。 指が増える。中を指が何度も出入りする。もちろんそうされれば濡れてくる。だって好きな人が身体に触れているから。抵抗は身体を開かれてしまう恥ずかしさからのもの。藤澤さんはそれが分かっているから小さな抵抗などもろともせず、私のあられのない姿を容赦なく暴いていった。

「あぁぁっ 、藤澤さん 、もう 、もう...」

下肢から何度も愉悦が駆け上がり脳を揺らす 。一気に高みに昇っていく私を彼は止めようとはしなかった。彼の舌が花芯を包み込み吸い上げると、私は止め処もない快感に襲われ背中をそらし痙攣を起こす。達してしまった身体は暫く浮遊感に包まれた。気だるくて身体が言う事をきかない。そこへ藤澤さんも全裸になり身体を近付けて来るとふわっと彼の香りが鼻腔を掠める。その途端にドキドキする。それでも、両足に手がかかり、彼の熱が近づくと久々の行為に構えてしまいビクリと肩を揺らしてしまっていた。

「優里?」

彼の動きが止まる。敏い彼のことだ。何かを感じ取られてしまったと分かった私はそれらを誤魔化すように彼へと腕を伸ばして身体を引き寄せる。

「やめないで...」

彼を全身で感じて、もっともっと自分が彼のものであることを身体に刻みつけて欲しかった。私が何も考えられなくなるくらいに。そして、一息置いた後、彼はその想いを汲んでくれたようで、私が彼を受け入れる場所に先端を進めた。その確かな質量を身体中で感じてしまい私は小さな喘ぎ声をあげる。

「あぁ … …っ 」

ぴったりと腰が重なり身体が震えた。
数年ぶりに彼の昂りに満たされ、知らず知らずのうちに中を締めつけ 、甘い蜜が溢れてくる。入れられただけで、こんな反応をしてしまう自分はどれだけ彼を待っていたのか。

「愛してる」

甘く囁く低音とともに、腰を強く押しつけられ奥まで彼のものが届く。突き上げ最奥まで中を満たす圧迫感と刺激に唇をわななかせて喘いでしまうと、それを塞ぐように深く熱いキスを何度もされた。



ずっと指は絡み合ったまま、解かれることなく。
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