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143.turnover③
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「将太君、すごく可愛かった」
「なんだか、プチ真央ちゃんって感じだったよね」
私と真奈美ちゃんは最寄駅への道すがら、同期の真央ちゃん子供の将太君の話で盛り上がる。真央ちゃんは仲がよかった同期の中で1番最初に子供を産んだ。最後に彼女と会ったのは将太君が
産まれてすぐの入院先にお見舞いに行った時。それから電話とかメールとかしていたけれど
まだ、子供が小さいからと遠慮してなかなか会うことができなかった。すると、つい、最近、子育てで外に出られない彼女の方から「自宅に遊びにきて」と連絡が来た。
今はその帰り道だった。
「人の子であんなに可愛いと思ったのって初めてかも。私も子供欲しくなっちゃう」
さっき別れたばかりの将太君の可愛さにメロメロだった真奈美ちゃんは思い出して歩きながら悶えてる。彼女の言葉に私も同意見。
「うん、私も。でも、それよりも先に...まず、結婚?(笑)」
「そうだよねー。でも、ウチはなかなか彼が煮え切らなくてさ。もう、あんな奴見限って次に行こうかしら」
真奈美ちゃんには、長年お付き合いしている彼氏がいる。俗に言う『長い春』みたいで、彼女は彼氏のことをよく愚痴っていた。それでも、彼のことを話す時は可愛らしい表情をしているので、そんな理由で簡単に別れるのは勿体無い気がする。
「そんなこと言わないで。自分からプロポーズするっているのもアリじゃないかな。そういうのって、逆プロポーズって言うらしいよ」
「...待っていないで自分からプロポーズかぁ。うーん...」
真奈美ちゃんは桜並木の下を歩きながら、言葉少なに考えてしまい私は、余計な事を言っちゃったかなと心配したけれど。
「良いアイデアかも!考えてみる」
それを聞いて、何より。
「でも、真奈美ちゃんはいいなぁ。私なんか相手すらいないから、結婚なんて夢のまた夢だもの」
「優里ちゃんは理想が高すぎるんだよー。ストライクゾーン狭すぎ!」
元気を取り戻した真奈美ちゃんに軽く鋭いところを突かれたけど、それには笑って誤魔化した。
「そんなことないと思うんだけど...」
藤澤さんが会社を辞めてしまってから、彼のことは忘れてすぐに他の誰かを好きになれると思ってた。だって、もう、彼とは会うことはできないのだから。でも、人の気持ちに『次』なんて、
そんな簡単に割り切れるものではなくて。
他の誰かに心を奪われる事なんてあるのかな?
私の気持ちはずっと同じところをグルグル。立ち止まったまま、今に至っていた。
そんな恋愛結婚したいと思っている私の両親は俗に言うお見合い結婚。喧嘩もするけれど、それなりに仲も良いし、上手くいっているのだから、お見合い結婚でも幸せになれると、最近の私は思いつつある。両親も三十路の娘がなかなかお嫁に行かないのを心配してくれて、それとなく、お見合いを勧めてきた。
ただ、どうしようかなと迷ってはいてその返事は未だに保留。
今日は今年に入ってまた一人暮らしを始めたので、帰りに実家に忘れ物を取りに戻った。
「今夜は泊まって、夜ご飯食べていくんでしょ?」
玄関に入るなり、世話好きの母は私が帰ってくるのを楽しみにしてくれたみたいで、それに甘えることにする。
「はーい。先にお風呂はいってくる」
そう声をかけると、母はキッチンに戻りつつそうそうと何かを思い出したようだ。
「優里宛の郵便物届いていたから、机に置いておいたわよ」
「うん、分かった」
返事をしながらリビングには行かず、すぐさま階段を登り二階の自分の部屋へと向かう。部屋に入ると中は綺麗に掃除されており、もう、子供じゃないんだからと思いつつも、心の中では感謝、感謝。
疲れた私はお行儀悪くとベッドへダイブ。しばらくボーッと天井を見ていたら、眠気を誘われて、そんな中で母の言伝を思い出した。
...そうだ、手紙が届いていたんだっけ。
スクッと起き上がって机を見ると、聞いていたとおり何通かの封筒とハガキが置かれている。引っ越したばかりだったので、旧住所である実家に届いたもののようだ。
...郵便局で転送届け出さないとダメかなぁ。
ベッドに腰掛けながら1つ1つ差し出し人を確認して、バッグへとしまう。そして、最後に明らかにダイレクトメールではない煌びやかな封筒を目にする。
...なんだろ、これ?
仰々しい封筒の裏の送り主を確認すると、去年うちの会社を退職した同じ課の鈴木さんから。確かに退職する時に住所を聞かれた記憶があるのだけれど、驚いた事に鈴木さんだけではなく連名で、その隣に書いてある名前の主が私のお世話になった元上司の名前だったから、驚く。
...田山さんと鈴木さんが結婚!??
さっきまでの眠気がどこかへいってしまうほどの意外な組み合わせ。
麗らかな春のある日に届いたその便りに、私はお祝いの気持ちより先にある事を思ってしまう。
藤澤さんは、この結婚式に出席するのだろうか?と。
「なんだか、プチ真央ちゃんって感じだったよね」
私と真奈美ちゃんは最寄駅への道すがら、同期の真央ちゃん子供の将太君の話で盛り上がる。真央ちゃんは仲がよかった同期の中で1番最初に子供を産んだ。最後に彼女と会ったのは将太君が
産まれてすぐの入院先にお見舞いに行った時。それから電話とかメールとかしていたけれど
まだ、子供が小さいからと遠慮してなかなか会うことができなかった。すると、つい、最近、子育てで外に出られない彼女の方から「自宅に遊びにきて」と連絡が来た。
今はその帰り道だった。
「人の子であんなに可愛いと思ったのって初めてかも。私も子供欲しくなっちゃう」
さっき別れたばかりの将太君の可愛さにメロメロだった真奈美ちゃんは思い出して歩きながら悶えてる。彼女の言葉に私も同意見。
「うん、私も。でも、それよりも先に...まず、結婚?(笑)」
「そうだよねー。でも、ウチはなかなか彼が煮え切らなくてさ。もう、あんな奴見限って次に行こうかしら」
真奈美ちゃんには、長年お付き合いしている彼氏がいる。俗に言う『長い春』みたいで、彼女は彼氏のことをよく愚痴っていた。それでも、彼のことを話す時は可愛らしい表情をしているので、そんな理由で簡単に別れるのは勿体無い気がする。
「そんなこと言わないで。自分からプロポーズするっているのもアリじゃないかな。そういうのって、逆プロポーズって言うらしいよ」
「...待っていないで自分からプロポーズかぁ。うーん...」
真奈美ちゃんは桜並木の下を歩きながら、言葉少なに考えてしまい私は、余計な事を言っちゃったかなと心配したけれど。
「良いアイデアかも!考えてみる」
それを聞いて、何より。
「でも、真奈美ちゃんはいいなぁ。私なんか相手すらいないから、結婚なんて夢のまた夢だもの」
「優里ちゃんは理想が高すぎるんだよー。ストライクゾーン狭すぎ!」
元気を取り戻した真奈美ちゃんに軽く鋭いところを突かれたけど、それには笑って誤魔化した。
「そんなことないと思うんだけど...」
藤澤さんが会社を辞めてしまってから、彼のことは忘れてすぐに他の誰かを好きになれると思ってた。だって、もう、彼とは会うことはできないのだから。でも、人の気持ちに『次』なんて、
そんな簡単に割り切れるものではなくて。
他の誰かに心を奪われる事なんてあるのかな?
私の気持ちはずっと同じところをグルグル。立ち止まったまま、今に至っていた。
そんな恋愛結婚したいと思っている私の両親は俗に言うお見合い結婚。喧嘩もするけれど、それなりに仲も良いし、上手くいっているのだから、お見合い結婚でも幸せになれると、最近の私は思いつつある。両親も三十路の娘がなかなかお嫁に行かないのを心配してくれて、それとなく、お見合いを勧めてきた。
ただ、どうしようかなと迷ってはいてその返事は未だに保留。
今日は今年に入ってまた一人暮らしを始めたので、帰りに実家に忘れ物を取りに戻った。
「今夜は泊まって、夜ご飯食べていくんでしょ?」
玄関に入るなり、世話好きの母は私が帰ってくるのを楽しみにしてくれたみたいで、それに甘えることにする。
「はーい。先にお風呂はいってくる」
そう声をかけると、母はキッチンに戻りつつそうそうと何かを思い出したようだ。
「優里宛の郵便物届いていたから、机に置いておいたわよ」
「うん、分かった」
返事をしながらリビングには行かず、すぐさま階段を登り二階の自分の部屋へと向かう。部屋に入ると中は綺麗に掃除されており、もう、子供じゃないんだからと思いつつも、心の中では感謝、感謝。
疲れた私はお行儀悪くとベッドへダイブ。しばらくボーッと天井を見ていたら、眠気を誘われて、そんな中で母の言伝を思い出した。
...そうだ、手紙が届いていたんだっけ。
スクッと起き上がって机を見ると、聞いていたとおり何通かの封筒とハガキが置かれている。引っ越したばかりだったので、旧住所である実家に届いたもののようだ。
...郵便局で転送届け出さないとダメかなぁ。
ベッドに腰掛けながら1つ1つ差し出し人を確認して、バッグへとしまう。そして、最後に明らかにダイレクトメールではない煌びやかな封筒を目にする。
...なんだろ、これ?
仰々しい封筒の裏の送り主を確認すると、去年うちの会社を退職した同じ課の鈴木さんから。確かに退職する時に住所を聞かれた記憶があるのだけれど、驚いた事に鈴木さんだけではなく連名で、その隣に書いてある名前の主が私のお世話になった元上司の名前だったから、驚く。
...田山さんと鈴木さんが結婚!??
さっきまでの眠気がどこかへいってしまうほどの意外な組み合わせ。
麗らかな春のある日に届いたその便りに、私はお祝いの気持ちより先にある事を思ってしまう。
藤澤さんは、この結婚式に出席するのだろうか?と。
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