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125.Turning point①
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今日は久々の女子会。メンバーは真央ちゃんと真奈美ちゃんと私の同じマンションの3人組。入社1年目の時は仕事に慣れていないせいか、誰かのお家に行って食べ物や飲み物を持ち寄り、愚痴を言い合ったり、お喋りする機会が多かった。でも、次第に余裕が出て仕事に慣れてくると個々のプライベートが充実してくるから、そちらの予定がもちろん優先。それに前年度は私が管理部に行ってしまい、行き違いがあったりしたものだからこの3人でこんな風に会うのは、本当に数ヶ月ぶりだった。だからそれなりに積もる話もなくもない。
「かんぱ~い」
グラスを合わせたら夕食には遅い時間だったので、全員お腹が空きまくり。早速、各々、テーブルの上のデリバリーしてあったピザに手を伸ばす。わりとしっかり食べながらも話題が尽きないのは、女子会ならでは。今日はわりと現実的な話から始まった。
「もう住むとこ決まった?」
お酒に強い真奈美ちゃんが飲みながら、思い出したように。真央ちゃんはちょうどピザをモグモグ頬張っていて答えられず、私だけが返事をする。
「それがなかなか決まらなくて。忙しくて見に行く暇もないし...」
なぜこんな話になったかというと、このマンションの築年数が古いことから、老朽化が進み、建て替えするというお知らせが春に来ていたから。それに伴い、私たちは秋までに立ち退きを迫られている。このマンションは民間ではあったけれど、会社が借り上げてくれ、場所も友達もできたからとてもいい住み心地だった。私としては同じような条件の物件を探していたつもりだったけれど、なかなか現実は厳しいものが。
「...実家に帰っても良いかなぁ。会社まで通えない距離でもないし」
「え?優里ちゃんは彼氏とか居ないの?」
真奈美ちゃんの突拍子もない台詞。なぜ、ここで彼氏の有無が必要?と苦笑いしてしまったけれど、あながち関係がなくもないみたいで。
「...そんなのいないよ。でも、なんで?」
真奈美ちゃんはモグモグと口を動かしながらグラスを大きく一口。その後、真剣に真央ちゃんと私に問うた。
「よく考えてみてよ。彼氏と同棲すれば今より広い部屋にも住めるし...プレ新婚生活。というか、結婚へ持ち込めるチャンスかもしれないんだよ?よく言うじゃん。更新の時にプロポーズとかさぁ!」
...なるほど。
真奈美ちゃんがそれはそれは身を乗り出すように力説する迫力に、ただ、ただ、私と真央ちゃんは頷くしかなかった。そう、今の私たちはもう新入社員ではなく20代半ば過ぎの結婚適齢期。今、誰かと付き合うなら結婚だって視野に入れて良いお年頃だったりする。
今も藤澤さんと付き合っていたら、そういう話が2人の間には出ていたのかもしれない。離れてしまった今となれば、そんな事を考えてしまうのは無駄だって分かっているけれど、あの手紙が届いた日から密かに彼との未来を期待してしまっているのは否めなかった。
...同棲から結婚。
グラスを持ちながら思わず想像してしまう藤澤さんと私の未来の結婚式。私はともかく、彼はとても素敵だろうと想いを馳せると顔の筋肉が緩みそう。
「あ、優里ちゃん。誰を想像してるのかな?」
「えー?なになに?」
妄想中の私に、目敏い真奈美ちゃんとキョトンとしている真央ちゃんの視線が痛い。私は妄想がバレたくなかったので、無理やり話題の方向転換した。
「それを言うなら2人の方が可能性あるでしょ!」
真奈美ちゃんは社外に付き合いたての彼氏がいるし、真央ちゃんは課長代理と付き合っているのは言わずもがな。
「それを言うなら真央の彼氏の方が...ねぇ」
私に水を向けられた真奈美ちゃんは真央ちゃんの方をちらり。真央ちゃんはその意味が分かったようで、照れまくる。この頃には課長代理と付き合っているのを真奈美ちゃんも知っていたものだから、それはそれはここぞとばかりに大っぴらに彼女の事をかまう。
社内で2人の関係を知っているのは私とマナミちゃんだけ。彼女は課長代理と付き合い始めから皆んなに関係をオープンにするのを避けていた。その理由は私と課長代理との噂がわりと厄介なものだと目の当たりにしたからだと思えた。やっぱり、社内で目立つ人と付き合うのは何かにつけてリスクが高いのだと私も痛感している。藤澤さんと付き合っていた時は分からなかったけれど、彼もそういう考えがあったのかもしれない。それは今さら分かってしまってもどうしようもないことだった。
「岡田さんの自宅って、ウチの会社の近くじゃなかったっけ?」
「...まあ、そうなんだけど」
ゴニョゴニョと彼女は小声になり、両手で顔を覆い初々しく恥ずかしがる。
「でも、そんなのマサキさんには言えない...」
真央ちゃんは誰かに聞かれても良いように、課長代理の事を「課長」ではなく「マサキさん」と呼んでいた。そんな彼女にちょっとだけ酔っ払いの真奈美ちゃんはからかい混じりの「マサキさん」呼び。しかも、連呼。(笑)
「何言ってんのよ。マサキさん、真央には激甘じゃない!住むところがなかなか見つからなくて困ってるんですぅ...とか、なんとか相談してみなって。絶対、親身になってくれると思うよ、マサキさんは!」
「そ、そうかな...?」
「そうそう!絶対、話す価値、大!!」
しかも親指を立てての猛アピールに真央ちゃんもタジタジ。この日は真奈美ちゃんの言葉を酔っ払いの戯言と真央ちゃんは本気にせず終了したはずが、後に驚く後日談があった。
実はこの時の話がキッカケで2人は同棲を始めたのだ。
その報告を受けた真奈美ちゃんは「ほらね」と、得意げに教えてくれ、私は人生何があるか分からないと思ったのは言うまでもない。
「かんぱ~い」
グラスを合わせたら夕食には遅い時間だったので、全員お腹が空きまくり。早速、各々、テーブルの上のデリバリーしてあったピザに手を伸ばす。わりとしっかり食べながらも話題が尽きないのは、女子会ならでは。今日はわりと現実的な話から始まった。
「もう住むとこ決まった?」
お酒に強い真奈美ちゃんが飲みながら、思い出したように。真央ちゃんはちょうどピザをモグモグ頬張っていて答えられず、私だけが返事をする。
「それがなかなか決まらなくて。忙しくて見に行く暇もないし...」
なぜこんな話になったかというと、このマンションの築年数が古いことから、老朽化が進み、建て替えするというお知らせが春に来ていたから。それに伴い、私たちは秋までに立ち退きを迫られている。このマンションは民間ではあったけれど、会社が借り上げてくれ、場所も友達もできたからとてもいい住み心地だった。私としては同じような条件の物件を探していたつもりだったけれど、なかなか現実は厳しいものが。
「...実家に帰っても良いかなぁ。会社まで通えない距離でもないし」
「え?優里ちゃんは彼氏とか居ないの?」
真奈美ちゃんの突拍子もない台詞。なぜ、ここで彼氏の有無が必要?と苦笑いしてしまったけれど、あながち関係がなくもないみたいで。
「...そんなのいないよ。でも、なんで?」
真奈美ちゃんはモグモグと口を動かしながらグラスを大きく一口。その後、真剣に真央ちゃんと私に問うた。
「よく考えてみてよ。彼氏と同棲すれば今より広い部屋にも住めるし...プレ新婚生活。というか、結婚へ持ち込めるチャンスかもしれないんだよ?よく言うじゃん。更新の時にプロポーズとかさぁ!」
...なるほど。
真奈美ちゃんがそれはそれは身を乗り出すように力説する迫力に、ただ、ただ、私と真央ちゃんは頷くしかなかった。そう、今の私たちはもう新入社員ではなく20代半ば過ぎの結婚適齢期。今、誰かと付き合うなら結婚だって視野に入れて良いお年頃だったりする。
今も藤澤さんと付き合っていたら、そういう話が2人の間には出ていたのかもしれない。離れてしまった今となれば、そんな事を考えてしまうのは無駄だって分かっているけれど、あの手紙が届いた日から密かに彼との未来を期待してしまっているのは否めなかった。
...同棲から結婚。
グラスを持ちながら思わず想像してしまう藤澤さんと私の未来の結婚式。私はともかく、彼はとても素敵だろうと想いを馳せると顔の筋肉が緩みそう。
「あ、優里ちゃん。誰を想像してるのかな?」
「えー?なになに?」
妄想中の私に、目敏い真奈美ちゃんとキョトンとしている真央ちゃんの視線が痛い。私は妄想がバレたくなかったので、無理やり話題の方向転換した。
「それを言うなら2人の方が可能性あるでしょ!」
真奈美ちゃんは社外に付き合いたての彼氏がいるし、真央ちゃんは課長代理と付き合っているのは言わずもがな。
「それを言うなら真央の彼氏の方が...ねぇ」
私に水を向けられた真奈美ちゃんは真央ちゃんの方をちらり。真央ちゃんはその意味が分かったようで、照れまくる。この頃には課長代理と付き合っているのを真奈美ちゃんも知っていたものだから、それはそれはここぞとばかりに大っぴらに彼女の事をかまう。
社内で2人の関係を知っているのは私とマナミちゃんだけ。彼女は課長代理と付き合い始めから皆んなに関係をオープンにするのを避けていた。その理由は私と課長代理との噂がわりと厄介なものだと目の当たりにしたからだと思えた。やっぱり、社内で目立つ人と付き合うのは何かにつけてリスクが高いのだと私も痛感している。藤澤さんと付き合っていた時は分からなかったけれど、彼もそういう考えがあったのかもしれない。それは今さら分かってしまってもどうしようもないことだった。
「岡田さんの自宅って、ウチの会社の近くじゃなかったっけ?」
「...まあ、そうなんだけど」
ゴニョゴニョと彼女は小声になり、両手で顔を覆い初々しく恥ずかしがる。
「でも、そんなのマサキさんには言えない...」
真央ちゃんは誰かに聞かれても良いように、課長代理の事を「課長」ではなく「マサキさん」と呼んでいた。そんな彼女にちょっとだけ酔っ払いの真奈美ちゃんはからかい混じりの「マサキさん」呼び。しかも、連呼。(笑)
「何言ってんのよ。マサキさん、真央には激甘じゃない!住むところがなかなか見つからなくて困ってるんですぅ...とか、なんとか相談してみなって。絶対、親身になってくれると思うよ、マサキさんは!」
「そ、そうかな...?」
「そうそう!絶対、話す価値、大!!」
しかも親指を立てての猛アピールに真央ちゃんもタジタジ。この日は真奈美ちゃんの言葉を酔っ払いの戯言と真央ちゃんは本気にせず終了したはずが、後に驚く後日談があった。
実はこの時の話がキッカケで2人は同棲を始めたのだ。
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