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「虜?」

 レオンハルト様の驚きで見開いた瞳に、悪戯が成功した時のようなわたくしの顔が映ります。



「わたくし、ローズさんに邪魔はしないとお伝えしたの。レオはこれから最長で卒業までローズさんと親しくなっていただきます」


「それはどういう事かな?リリ」

 視線が嫌がっているのを知っているだろうと訴えかけておりますが、決定事項ですので諦めて下さいませ。



「アーシェス様、ガドウィン様、シルヴェスト様が今、どう噂されているかはレオはご存知でしょう。レオもそれに加わって頂きます」


「何故?」


「炙り出しですわね。ローズさんの使い途を見い出したのですが、敢えてレオ達の評判を落とす事で皆様方がどうお動きになるか見てみようと思いましたの。未だに、エリオット王子の派閥もおりますし、裏切り者の洗い出しや新たな側近選びに使えそうと思いましたの」


「人選の見極めに利用するのか。わたしの派閥も一枚岩ではないからな。後はシルヴェスト達の後任選びか。新たな側近候補として愚王に諫言できる臣下の見極めにすると」


「そうですわね。それに今回の計画が皆様に知れ渡った時の皆様のお顔を見るのも一興でしょう。試されていたのは自分達であったとお気づきになった後、皆様は身の振り方をどうされるのかしら」

 


「それは楽しみだ。しかし、気は進まないな。だから条件を出すよ。リリの事だから逃げ道は塞いでいるだろう。一つはリリも協力する事。あの馬鹿三人は仕事を疎かにしていてね。生徒会を引き継ぎしたからって後輩にフォローもなく放置している。それにわたしも加わると彼等が苦労するだろう。後は情報操作か。地に落ちる程の悪評は流石に控えたい。こちらでも操作するが、学生で婚約者のリリからも調整した方が良い。二つ目は、リリと二人だけの昼食は外さない。情報交換もだけどこっちの心労も労って欲しい。現状でさえ、どうでも良いくだらない話をあの四人から延々と聞かされているのは苦痛なんだ」


「心得ました。昼食だけだと寂しいのでお手紙をお渡ししてもよろしいかしら?」


「勿論。お互いの従者を通じてやる?それとも諜報部?」


「それですが、諜報部の方をわたくしと他の婚約者様達とローズさんに付けていただきたいのです。ローズさんはわたくしを陥れようとされましたので、アメリア様達にもするかもしれません。その時に事実の確認と証人が欲しいのですわ」


「分かった。後から裏付けを取るよりは楽になるか。でもあまり人員は割けない。前回はリリに危険があるかもしれないから借りただけだからね」


「王妃様から了承を得てますのでご相談頂けますか?」


「やはり母上が絡んだか」


「当然ですわ。子供のお遊びで済まない案件ですわよ。後ろ盾が必要です。計画書の提出を求められておりますのでレオも作成手伝ってくださいまし。王妃様がかなり乗り気で何かあっても陛下や貴族を抑えて頂けるそうです」


「寧ろ母上を抑えられる人を知りたいよ。上手くいけばエリオットの派閥を抑え込めるとお思いだろうな」



  第二王子のエリオット殿下は側妃様のお子様です。 

 本来ならば、レオンハルト様のスペアなのですが、ミランダ王妃様のお眼鏡に適わず、継承を放棄させ王弟のハロルド様を第二継承にさせたいご様子なのです。
 エリオット様はお気が弱いので、レオンハルト様を蹴落としエリオット様を御輿に乗せて傀儡とし権力を握りたい方は一定数おりますもの。レオンハルト様の評判が落ちればその方達が暗躍し始めるはずですので、そこを落とそうと王妃様はお考えなのでしょう。


 ミランダ王妃様は、陛下と側妃様に、陛下の寵愛は差し上げますので、わたくしは国をいただきますと告げられたお方ですもの。裏から牛耳っておられるのは王妃様というお話を重鎮の方からお聞きしております。

 
  その王妃様から鍛えられたレオンハルト様とわたくしですので、あの四人のようなおめでたい頭になれませんでしたの。
 
 



ローズさん、邪魔は致しませんが利用はさせていただきますわね。

 王太子が分も弁えない男爵令嬢に現を抜かし、婚約者の侯爵令嬢が下位貴族の令嬢に王太子を奪われた。そう陰でお笑いなさい。笑っている貴方達を笑うのは此方ですの。

 皆様、お覚悟下さいませ。
 

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