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第六章
125話
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「では手紙をよろしくお願いします」
「必ずご家族に渡すから安心してくれ。帰りの護衛の件もこちらから説明しておくから、冒険者ギルドからペナルティは言われないはずだ」
「くれぐれも無茶はしないようにな。エルベルト様のお命を最優先で頼むよ」
「はい。では行ってきます」
夜遅く、本来であれば開くはずのない門を開けてもらい外へ出る。
前世だと街路灯などがあり薄暗くとも明かりがあるが、この世界でそんな物はない。
街中の大通りなどは松明が焚かれているので、それなりに明るくはある。
今夜は雲も無く、月明かりが地面を照らしている。
門が閉まる音を背中に感じながら空を見上げると、今夜は半月だった。
満月だともっと明るくなるんだけどな。
『ご主人様、そろそろ参りましょう』
「あぁ、そうだね」
襲撃されたときと同じ大きさになっているマリンの背を撫でながら歩き始める。
エルベルトの救出のため追跡者を追うことを諦めたあの休憩所を出た後、落ち込んでいた俺を見ていたマリンがある提案をしてきた。
俺が追えないのであれば自分が追うというのだ。
見つからずに追えるのかと問いただすと、「今は小さくなっておりますが、わたくしはフェンリルです。人間程度にバレず行動することは造作もありません」と言われてしまった。
そうなんだよね。マリンは神獣フェンリルなんだ。それくらい可能なのか。
追跡者だって本隊と合流する前に、どこかで野営する必要があるはずだろう。
その場所を突き止めてからシウテテの俺の所に戻ってくると言うのだ。
マリンが本気を出すと、ここからマホンまでの距離なら半日で移動が可能らしい。
そんな速さで移動するとバレルのではないかと心配すると、「高いところを移動すれば地上から見られることはありません。特に夜は尚更です」とファンタジーならではのお返事をいただきました。
神獣フェンリルは空を飛べるらしい。是非1度、空の旅を味合わせてもらおう。
そう言うことで、マリンに追跡者の後を追ってもらうことをノアに納得してもらった。
追跡者はお昼御飯の休憩の時に俺達から離れて行ったので、マリンに後はお願いした。
危険察知の範囲までは様子を見ていたが、どうやら他の地点でこちらを監視していた奴らと合流するようだった。
そして危険察知範囲から追跡者達も姿を消した。
シウテテに先行したアルセニオが馬車を連れて戻ってきたのは、午後の最初の休憩地で休んでいるときだった。
ノアからマリンに追跡者を追わせていると聞いたアルセニオは非常に怒っていたが、既に追跡者を追わせていることや、エルベルトの身柄も気になるため、渋々了承した。
アルセニオが用意した馬車に全員が乗り込み、移動速度が上がった俺達だったが、シウテテに着いたのは日が落ちた後だった。
既に門は閉まっていたが、事が事だけに門を開けてくれて中に入れてくれた。
そして、国境警備兵の物資を引き渡して警備兵の宿舎で休んでいるときにマリンが帰ってきた。
いきなり窓から飛び込んでこられたときは、さすがに驚いた。
マリンの報告では、追跡者は他の者と合流して国境を越えてヴォルトゥイア帝国に入り、そこで野営をしていると。
移動速度が速いので聞いてみると、合流した奴らが馬を持っていたらしい。
報告を受けた俺は、直ぐにアルセニオとノアに連絡を付けた。
だが、馬がいたことまで伝えると変に怪しまれるかも知れないので、休んでいる場所を突き止めた程度にしておいた。
「……本当にこれは狼なのか?狼がそこまで賢いとは聞いたことがないぞ」
マリンがここまで優秀なのが信じられない様子のアルセニオ。
「まぁあれだよ、普通の狼じゃないのは間違いないだろうね。なんせ氷の壁を作り出せるんだから。これで魔物じゃないってんだからな。その方が驚きだよ」
ノアも疑問は持っているが、事実は事実として認識しているようだ。
「しかし、エルベルト様をピンポイントで攫っていく辺り、完全にこちらの動きを知った上での襲撃だったと見て間違いなさそうだな」
アルセニオが悔しそうに言う。
手紙が用意されていた時点で、あの物資輸送隊にエルベルトがいることがわかっていたと言うことだ。
どこから情報が漏れたのだろう。
「アルセニオ、済んでしまったことを今更言ってもどうしようもない。今できることを全力でやろう。私たちにはまだ手が残っているんだ」
ノアが慰めるようにアルセニオに話しかける。
「私はこれから追跡者を追います。奴らの近くで野営して、そのまま本隊か本拠地を見つけてエルベルト様の救出を行います」
「わかった。では門まで行こう。私たちが行くと門を開けてもらえるように手配してある」
「ありがとうございます。あ、それと、家族宛の手紙をお願いできませんか?予定が変更になり帰らないと心配すると思うので」
「あぁ、任されよう」
手紙を渡した後、アルセニオを先頭に門まで行き、出発の挨拶をして冒頭に至る。
シウテテを出た俺達は暫く街道を歩き、シウテテから見えなくなったところで一旦森に入る。
森の中で体を大きくしたマリンの背に乗り、一気に追跡者が野営をしている場所まで走ってもらう。
とは言っても追跡者の野営地からはかなり距離をとってもらう。万が一見つかることや、獣や魔物に襲われた際の迎え撃つ音が聞こえるのを防ぐためだ。
「さてと、この辺りまで入ると周りからも見えないだろう。マリン、よろしくね」
『はい、お任せ下さい』
マリンの体が大きくなり、ポニーに近いくらいのサイズになった。
その背に跨がり、振り落とされないように首元の毛を掴んで握る。
この辺りの毛を握ることは事前に聞いていたが、実際にすると本当に痛くないのか気になる。
『全く痛くありませんので、しっかりと握ってくださいね』
俺の心配が伝わったのか、マリンが後ろを向きながら言ってきた。
「わかったよ。振り落とされないようにしっかりと握っておくからね」
『お願いします。では参ります』
そう言ってマリンは森の中を木々の間を縫うように走り出した。
とても森の中を走っているとは思えない速度で走っていると、危険察知に反応が現れた。
どうやらあの追跡者に追い付いたようだ。
更に数分経つと、追跡者の様子がわかってきた。
野営地にいる人数は3人。
1人ずつ夜警を交替しながら休んでいるようだ。
俺達は追跡者の野営地から離れたところで、テントを張るのにちょうど良い場所を見つけた。
ここなら向こうから見られることはない。
ここまで移動しても本隊の位置は把握できなかった。結構遠くまで移動しているようだ。
「う~ん、やっぱり本隊は遠いのか」
ギリギリ探知できたらなと期待していたんだけどね。
しかし追跡者を見失わなかったことは非常に助かった。マリンに感謝だな。
「よし、ここにテントを張るから周りの警戒をお願いね」
『はい、お任せを』
周囲の警戒をマリンに任せてテントの設置を開始する。
設置と言っても1から張るわけではない。既に組み立ててあるテントをそのままアイテムボックスに入れてあるので、取り出すだけなのだ。
その取り出したテントを地面に固定するだけで終了。
「マリン、夜警も任せたよ」
『はい、お任せください』
マリンにとって本来睡眠は必要ない物らしい。
とはいえ、寝ないわけではない。
マリンは寝ていても周りのことはわかるらしく、何者かが近付いてきて攻撃されるまでわからないと言うことはないとのこと。
夜も既に遅く、恐らく日付も変わっていることだろう。
マリンに甘えて俺はテントで休むことにした。
「必ずご家族に渡すから安心してくれ。帰りの護衛の件もこちらから説明しておくから、冒険者ギルドからペナルティは言われないはずだ」
「くれぐれも無茶はしないようにな。エルベルト様のお命を最優先で頼むよ」
「はい。では行ってきます」
夜遅く、本来であれば開くはずのない門を開けてもらい外へ出る。
前世だと街路灯などがあり薄暗くとも明かりがあるが、この世界でそんな物はない。
街中の大通りなどは松明が焚かれているので、それなりに明るくはある。
今夜は雲も無く、月明かりが地面を照らしている。
門が閉まる音を背中に感じながら空を見上げると、今夜は半月だった。
満月だともっと明るくなるんだけどな。
『ご主人様、そろそろ参りましょう』
「あぁ、そうだね」
襲撃されたときと同じ大きさになっているマリンの背を撫でながら歩き始める。
エルベルトの救出のため追跡者を追うことを諦めたあの休憩所を出た後、落ち込んでいた俺を見ていたマリンがある提案をしてきた。
俺が追えないのであれば自分が追うというのだ。
見つからずに追えるのかと問いただすと、「今は小さくなっておりますが、わたくしはフェンリルです。人間程度にバレず行動することは造作もありません」と言われてしまった。
そうなんだよね。マリンは神獣フェンリルなんだ。それくらい可能なのか。
追跡者だって本隊と合流する前に、どこかで野営する必要があるはずだろう。
その場所を突き止めてからシウテテの俺の所に戻ってくると言うのだ。
マリンが本気を出すと、ここからマホンまでの距離なら半日で移動が可能らしい。
そんな速さで移動するとバレルのではないかと心配すると、「高いところを移動すれば地上から見られることはありません。特に夜は尚更です」とファンタジーならではのお返事をいただきました。
神獣フェンリルは空を飛べるらしい。是非1度、空の旅を味合わせてもらおう。
そう言うことで、マリンに追跡者の後を追ってもらうことをノアに納得してもらった。
追跡者はお昼御飯の休憩の時に俺達から離れて行ったので、マリンに後はお願いした。
危険察知の範囲までは様子を見ていたが、どうやら他の地点でこちらを監視していた奴らと合流するようだった。
そして危険察知範囲から追跡者達も姿を消した。
シウテテに先行したアルセニオが馬車を連れて戻ってきたのは、午後の最初の休憩地で休んでいるときだった。
ノアからマリンに追跡者を追わせていると聞いたアルセニオは非常に怒っていたが、既に追跡者を追わせていることや、エルベルトの身柄も気になるため、渋々了承した。
アルセニオが用意した馬車に全員が乗り込み、移動速度が上がった俺達だったが、シウテテに着いたのは日が落ちた後だった。
既に門は閉まっていたが、事が事だけに門を開けてくれて中に入れてくれた。
そして、国境警備兵の物資を引き渡して警備兵の宿舎で休んでいるときにマリンが帰ってきた。
いきなり窓から飛び込んでこられたときは、さすがに驚いた。
マリンの報告では、追跡者は他の者と合流して国境を越えてヴォルトゥイア帝国に入り、そこで野営をしていると。
移動速度が速いので聞いてみると、合流した奴らが馬を持っていたらしい。
報告を受けた俺は、直ぐにアルセニオとノアに連絡を付けた。
だが、馬がいたことまで伝えると変に怪しまれるかも知れないので、休んでいる場所を突き止めた程度にしておいた。
「……本当にこれは狼なのか?狼がそこまで賢いとは聞いたことがないぞ」
マリンがここまで優秀なのが信じられない様子のアルセニオ。
「まぁあれだよ、普通の狼じゃないのは間違いないだろうね。なんせ氷の壁を作り出せるんだから。これで魔物じゃないってんだからな。その方が驚きだよ」
ノアも疑問は持っているが、事実は事実として認識しているようだ。
「しかし、エルベルト様をピンポイントで攫っていく辺り、完全にこちらの動きを知った上での襲撃だったと見て間違いなさそうだな」
アルセニオが悔しそうに言う。
手紙が用意されていた時点で、あの物資輸送隊にエルベルトがいることがわかっていたと言うことだ。
どこから情報が漏れたのだろう。
「アルセニオ、済んでしまったことを今更言ってもどうしようもない。今できることを全力でやろう。私たちにはまだ手が残っているんだ」
ノアが慰めるようにアルセニオに話しかける。
「私はこれから追跡者を追います。奴らの近くで野営して、そのまま本隊か本拠地を見つけてエルベルト様の救出を行います」
「わかった。では門まで行こう。私たちが行くと門を開けてもらえるように手配してある」
「ありがとうございます。あ、それと、家族宛の手紙をお願いできませんか?予定が変更になり帰らないと心配すると思うので」
「あぁ、任されよう」
手紙を渡した後、アルセニオを先頭に門まで行き、出発の挨拶をして冒頭に至る。
シウテテを出た俺達は暫く街道を歩き、シウテテから見えなくなったところで一旦森に入る。
森の中で体を大きくしたマリンの背に乗り、一気に追跡者が野営をしている場所まで走ってもらう。
とは言っても追跡者の野営地からはかなり距離をとってもらう。万が一見つかることや、獣や魔物に襲われた際の迎え撃つ音が聞こえるのを防ぐためだ。
「さてと、この辺りまで入ると周りからも見えないだろう。マリン、よろしくね」
『はい、お任せ下さい』
マリンの体が大きくなり、ポニーに近いくらいのサイズになった。
その背に跨がり、振り落とされないように首元の毛を掴んで握る。
この辺りの毛を握ることは事前に聞いていたが、実際にすると本当に痛くないのか気になる。
『全く痛くありませんので、しっかりと握ってくださいね』
俺の心配が伝わったのか、マリンが後ろを向きながら言ってきた。
「わかったよ。振り落とされないようにしっかりと握っておくからね」
『お願いします。では参ります』
そう言ってマリンは森の中を木々の間を縫うように走り出した。
とても森の中を走っているとは思えない速度で走っていると、危険察知に反応が現れた。
どうやらあの追跡者に追い付いたようだ。
更に数分経つと、追跡者の様子がわかってきた。
野営地にいる人数は3人。
1人ずつ夜警を交替しながら休んでいるようだ。
俺達は追跡者の野営地から離れたところで、テントを張るのにちょうど良い場所を見つけた。
ここなら向こうから見られることはない。
ここまで移動しても本隊の位置は把握できなかった。結構遠くまで移動しているようだ。
「う~ん、やっぱり本隊は遠いのか」
ギリギリ探知できたらなと期待していたんだけどね。
しかし追跡者を見失わなかったことは非常に助かった。マリンに感謝だな。
「よし、ここにテントを張るから周りの警戒をお願いね」
『はい、お任せを』
周囲の警戒をマリンに任せてテントの設置を開始する。
設置と言っても1から張るわけではない。既に組み立ててあるテントをそのままアイテムボックスに入れてあるので、取り出すだけなのだ。
その取り出したテントを地面に固定するだけで終了。
「マリン、夜警も任せたよ」
『はい、お任せください』
マリンにとって本来睡眠は必要ない物らしい。
とはいえ、寝ないわけではない。
マリンは寝ていても周りのことはわかるらしく、何者かが近付いてきて攻撃されるまでわからないと言うことはないとのこと。
夜も既に遅く、恐らく日付も変わっていることだろう。
マリンに甘えて俺はテントで休むことにした。
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