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第五章
100話
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「皆いいな?行くぞ!」
ルーベンと俺が先頭になり巨大な扉をくぐる。
この巨大な扉だが、ルーベンが押し開けようと近付くと独りでに開いた。自動ドアに俺も含めて全員驚いた。
こんな巨大な扉がそう簡単に開くとは思えないからこういう仕掛けもありなのか?
扉の先は濃い霧が立ちこめていて先が見通せない。危険察知スキルにも反応がない。何とも不気味だ。
ルーベンの歩みに合わせて俺も進む。
全員が扉をくぐって暫くすると、前から生暖かい風がフワッと通り抜けたその瞬間、前からかなり眩しい光が迫ってきた。
「ルーベンさん!前から何か来ますよ!……ルーベンさん?!」
目の前に手をかざして光を遮りながらルーベンに声をかけるが反応がない。
横を向きたいが、前から迫ってくる光が更に眩しさを増しながら迫ってきており、目が離せない。
ルーベンからはまだ反応がなくどうしたらいいのか判断に困っているうちに、光が俺達を包み込んだ。
「うわっ!」
思わず目を瞑ってしまうほどの眩しさに包まれたが、何かに襲われるといったことはなかった。
ゆっくりと目を開けると俺達の周囲だけ濃い霧は晴れており、辺りは静寂に包まれていた。
そして目の前には光を放つ存在がいた。それは光っているために輪郭がぼやけていたが何となく分かるシルエットから人型だと分かる。
その横には、大型バスと同じくらい大きな胴体を持つ白い狼が立っており、圧倒的な存在感を感じる。とても俺達で倒せそうな奴ではない。いや、遠距離からなら俺のまだ使ってない武器を使えば接近される前に対処ができるかも?
それはさておき、どうしたものか……。
「ルーベンさん、ちょっとヤバい相手ですよ。どうしますか?……黙ってないで何か言ってくださいよ。ルーベン……さん?」
一向に反応しないルーベンに痺れを切らして横を向くと、そこには誰もいなかった。
慌てて周りを見渡すもフレディやルイス、ヴィクターも姿が見えない。
プチパニックになっている俺に、人型の光が声をかけてきた。
「落ち着きなさい。他の者達は無事だ。おまえと話がしたくて一時的にこちらへ引き込んだだけのことじゃ。ボスも今回はおらぬから安心しなさい」
「引き込んだ…だと?どういうことだ?」
「まだ警戒しとるのか。こやつが気になるか?ちょっと小さくなっておれ」
人型の光が巨大な狼に声をかけると見る間に小さく縮んでいき、小型犬サイズにまで小さくなった。
巨大な狼がかわいい子狼になったその光景に、思わず銃口を下げてしまった。
よく考えると、危険察知スキルに反応していない時点で俺に敵対する存在ではない事に気が付いた。
「あなた?は何者?」
「お前には以前会っておるが、魂の時だったから覚えてはおらんだろうな」
「魂?……も、もしかして……神様ですか?」
「左様。この世界での生活はどうかな?徳原兼次よ」
前世の名前を知ってるって事は本当に神様なのか。
まさか神様が実在しているとはな。お伽話だけのことかと思ってた。
「お伽話の中には事実も含まれておるんじゃよ」
あぁそういうもんなんだ。
しかし神様が直々に話しに来るって事は、何かマズいことでも起きたのか?
俺のチート設定がやり過ぎだったとか?
「いや、そうではない。ちとこの世界から離れるんでな。お前にはまだ伝えきれないことがあっての」
神様不在になっちゃうのかよ。神殿に行っても意味なさそうだな。
「まぁそう言わず神殿にも行ってやってくれ」
分かりました。孤児達もいるのでたまに……は……ん?何で俺喋ってないのに会話出てきいるんだ?……まさか?!
「そうじゃ。心の声も儂には聞こえておる」
「あはは。そう言うのってセオリーですもんね」
「そう言うことだ。さてと、おまえに伝えておかねばならんことと言うのはな、なぜこの世界に転生したのかということだ……」
神様の話を要約すると、神様はいくつもの世界を管理しておりこの世界もその中の1つ。
その頃の世界はラノベなんかでよくある攻撃魔法も存在していた。
数百年前の事だが、数百年振りに様子を見に来たときに、この惑星を破壊できる魔法を考え実行しようとしていた大魔法使いがいた。
その魔法を発動させる寸前で神様が無効化した。
この世界の大気には魔素という物があり、それを体内に取り込むことで魔力に変えていたのだが、この事に気が付いている人はほぼいなかったらしい。
その為、人は魔素の事も魔力と思っているそうだ。
その当時の人は、大気中の魔素を体内に取り込んだり貯めたりすることができていた。これにより攻撃魔法のような魔素を大量に消費する魔法も扱えていた。
しかし大魔法使いの暴走を機に、神様は人間から魔素を取り込む能力と貯める能力を排除した。
更に、大量の魔素を使用してきた人間が魔素を取り込めたり貯めたりすることができなくなると、大気中の魔素濃度が上がりすぎ、生物によくない影響を及ぼすため、魔素濃度も低くしたようだ。
これにより人は、大気中の薄く分布している魔素を直接作用させることしかできなくなり、ちょっとした火を発生させる程度の魔法、所謂生活魔法程度しか使えなくなった。
そして、とち狂った大魔法使いは神様により処分されたが、なぜか消滅するはずの魂が時を超えて地球に現れた。
それが地球の負の力を取り込み悪神となり、人々の心の闇を操れるようになった。
暴走車はパトカーに声をかけられた際に止まろうとしていたが、人の心の闇を操れるようになった悪神が、手始めに運転手の闇につけ込み操ったらしい。そして停まろうとした意思を逃走する方へと導けた。
その行為によって初の死亡者となった俺の魂を、ちょっと罪悪感を感じた神がこの世界に移した。
「そうだったんですね。ありがとうございます。地球ではないですが、また生きられるようにしてもらい、心から感謝しています。色々と生きやすいようにもしていただけて、とても助かっています。ところで、悪神が現れた地球は大丈夫なんですか?」
「うむ、地球と違ってこの世界はなかなか大変じゃからの。地球じゃがな、本来であれば悪とはいえ、既に神となった大魔法使いには同じ神として干渉できない。じゃが他の世界の神と相談をしておってな。まだ数百年先の話だが、悪神となった元大魔法使いを排除するために協力して動く予定じゃ」
「す、数百年ですか。気が遠くなりそうですね」
「うむ。儂らにとっては直ぐなのだがな。それでじゃ。次にこの世界に来るのはそれが終わってからになる。その前に、うまく作用しておらんおまえスキルの一部を直しておこう」
そう言って神様は俺の頭を撫でた。
「今まではシルエットだけしか分からなかった危険察知スキルじゃがな。これで察知した者の距離が感覚的に分かるようになったはずじゃ。あとはこのフェンリルをおまえに授ける」
あ、狼じゃなくてフェンリルだったんだ。
「この神獣フェンリルはおまえの従魔となる。フェンリルよ、今後はこの男を主として従うようにな」
『畏まりました。新たなるご主人様。よろしくお願いいたします』
フェンリルはそのままお座りの姿勢を取り頭を下げた。
「喋られるの?!」
『いえ、言葉を発することはできませんので、ご主人様の頭の中へ直接話しかけております』
「すまんが、そろそろ時間じゃ。最後にもう一つ。このダンジョンは今後も成長するが、お前だけは好きな階層に移動できるようにしておいたからな。上手に利用するんじゃぞ?では、さらばじゃ」
神様が放つ光が段々と弱まり、ついに消えた。
幻か?とも思ったが、目の前には子狼サイズのフェンリルがおり、さっきの出来事が幻ではない証だ。
『ご主人様。そろそろ神様の力の影響がなくなり、お仲間の方がおられる世界と繋がります』
フェンリルがそう言っている間に霧が晴れ始めた。
暫くすると俺の横にルーベンの姿が浮かび上がってきた。
神様の力、パネェ……。
ルーベンと俺が先頭になり巨大な扉をくぐる。
この巨大な扉だが、ルーベンが押し開けようと近付くと独りでに開いた。自動ドアに俺も含めて全員驚いた。
こんな巨大な扉がそう簡単に開くとは思えないからこういう仕掛けもありなのか?
扉の先は濃い霧が立ちこめていて先が見通せない。危険察知スキルにも反応がない。何とも不気味だ。
ルーベンの歩みに合わせて俺も進む。
全員が扉をくぐって暫くすると、前から生暖かい風がフワッと通り抜けたその瞬間、前からかなり眩しい光が迫ってきた。
「ルーベンさん!前から何か来ますよ!……ルーベンさん?!」
目の前に手をかざして光を遮りながらルーベンに声をかけるが反応がない。
横を向きたいが、前から迫ってくる光が更に眩しさを増しながら迫ってきており、目が離せない。
ルーベンからはまだ反応がなくどうしたらいいのか判断に困っているうちに、光が俺達を包み込んだ。
「うわっ!」
思わず目を瞑ってしまうほどの眩しさに包まれたが、何かに襲われるといったことはなかった。
ゆっくりと目を開けると俺達の周囲だけ濃い霧は晴れており、辺りは静寂に包まれていた。
そして目の前には光を放つ存在がいた。それは光っているために輪郭がぼやけていたが何となく分かるシルエットから人型だと分かる。
その横には、大型バスと同じくらい大きな胴体を持つ白い狼が立っており、圧倒的な存在感を感じる。とても俺達で倒せそうな奴ではない。いや、遠距離からなら俺のまだ使ってない武器を使えば接近される前に対処ができるかも?
それはさておき、どうしたものか……。
「ルーベンさん、ちょっとヤバい相手ですよ。どうしますか?……黙ってないで何か言ってくださいよ。ルーベン……さん?」
一向に反応しないルーベンに痺れを切らして横を向くと、そこには誰もいなかった。
慌てて周りを見渡すもフレディやルイス、ヴィクターも姿が見えない。
プチパニックになっている俺に、人型の光が声をかけてきた。
「落ち着きなさい。他の者達は無事だ。おまえと話がしたくて一時的にこちらへ引き込んだだけのことじゃ。ボスも今回はおらぬから安心しなさい」
「引き込んだ…だと?どういうことだ?」
「まだ警戒しとるのか。こやつが気になるか?ちょっと小さくなっておれ」
人型の光が巨大な狼に声をかけると見る間に小さく縮んでいき、小型犬サイズにまで小さくなった。
巨大な狼がかわいい子狼になったその光景に、思わず銃口を下げてしまった。
よく考えると、危険察知スキルに反応していない時点で俺に敵対する存在ではない事に気が付いた。
「あなた?は何者?」
「お前には以前会っておるが、魂の時だったから覚えてはおらんだろうな」
「魂?……も、もしかして……神様ですか?」
「左様。この世界での生活はどうかな?徳原兼次よ」
前世の名前を知ってるって事は本当に神様なのか。
まさか神様が実在しているとはな。お伽話だけのことかと思ってた。
「お伽話の中には事実も含まれておるんじゃよ」
あぁそういうもんなんだ。
しかし神様が直々に話しに来るって事は、何かマズいことでも起きたのか?
俺のチート設定がやり過ぎだったとか?
「いや、そうではない。ちとこの世界から離れるんでな。お前にはまだ伝えきれないことがあっての」
神様不在になっちゃうのかよ。神殿に行っても意味なさそうだな。
「まぁそう言わず神殿にも行ってやってくれ」
分かりました。孤児達もいるのでたまに……は……ん?何で俺喋ってないのに会話出てきいるんだ?……まさか?!
「そうじゃ。心の声も儂には聞こえておる」
「あはは。そう言うのってセオリーですもんね」
「そう言うことだ。さてと、おまえに伝えておかねばならんことと言うのはな、なぜこの世界に転生したのかということだ……」
神様の話を要約すると、神様はいくつもの世界を管理しておりこの世界もその中の1つ。
その頃の世界はラノベなんかでよくある攻撃魔法も存在していた。
数百年前の事だが、数百年振りに様子を見に来たときに、この惑星を破壊できる魔法を考え実行しようとしていた大魔法使いがいた。
その魔法を発動させる寸前で神様が無効化した。
この世界の大気には魔素という物があり、それを体内に取り込むことで魔力に変えていたのだが、この事に気が付いている人はほぼいなかったらしい。
その為、人は魔素の事も魔力と思っているそうだ。
その当時の人は、大気中の魔素を体内に取り込んだり貯めたりすることができていた。これにより攻撃魔法のような魔素を大量に消費する魔法も扱えていた。
しかし大魔法使いの暴走を機に、神様は人間から魔素を取り込む能力と貯める能力を排除した。
更に、大量の魔素を使用してきた人間が魔素を取り込めたり貯めたりすることができなくなると、大気中の魔素濃度が上がりすぎ、生物によくない影響を及ぼすため、魔素濃度も低くしたようだ。
これにより人は、大気中の薄く分布している魔素を直接作用させることしかできなくなり、ちょっとした火を発生させる程度の魔法、所謂生活魔法程度しか使えなくなった。
そして、とち狂った大魔法使いは神様により処分されたが、なぜか消滅するはずの魂が時を超えて地球に現れた。
それが地球の負の力を取り込み悪神となり、人々の心の闇を操れるようになった。
暴走車はパトカーに声をかけられた際に止まろうとしていたが、人の心の闇を操れるようになった悪神が、手始めに運転手の闇につけ込み操ったらしい。そして停まろうとした意思を逃走する方へと導けた。
その行為によって初の死亡者となった俺の魂を、ちょっと罪悪感を感じた神がこの世界に移した。
「そうだったんですね。ありがとうございます。地球ではないですが、また生きられるようにしてもらい、心から感謝しています。色々と生きやすいようにもしていただけて、とても助かっています。ところで、悪神が現れた地球は大丈夫なんですか?」
「うむ、地球と違ってこの世界はなかなか大変じゃからの。地球じゃがな、本来であれば悪とはいえ、既に神となった大魔法使いには同じ神として干渉できない。じゃが他の世界の神と相談をしておってな。まだ数百年先の話だが、悪神となった元大魔法使いを排除するために協力して動く予定じゃ」
「す、数百年ですか。気が遠くなりそうですね」
「うむ。儂らにとっては直ぐなのだがな。それでじゃ。次にこの世界に来るのはそれが終わってからになる。その前に、うまく作用しておらんおまえスキルの一部を直しておこう」
そう言って神様は俺の頭を撫でた。
「今まではシルエットだけしか分からなかった危険察知スキルじゃがな。これで察知した者の距離が感覚的に分かるようになったはずじゃ。あとはこのフェンリルをおまえに授ける」
あ、狼じゃなくてフェンリルだったんだ。
「この神獣フェンリルはおまえの従魔となる。フェンリルよ、今後はこの男を主として従うようにな」
『畏まりました。新たなるご主人様。よろしくお願いいたします』
フェンリルはそのままお座りの姿勢を取り頭を下げた。
「喋られるの?!」
『いえ、言葉を発することはできませんので、ご主人様の頭の中へ直接話しかけております』
「すまんが、そろそろ時間じゃ。最後にもう一つ。このダンジョンは今後も成長するが、お前だけは好きな階層に移動できるようにしておいたからな。上手に利用するんじゃぞ?では、さらばじゃ」
神様が放つ光が段々と弱まり、ついに消えた。
幻か?とも思ったが、目の前には子狼サイズのフェンリルがおり、さっきの出来事が幻ではない証だ。
『ご主人様。そろそろ神様の力の影響がなくなり、お仲間の方がおられる世界と繋がります』
フェンリルがそう言っている間に霧が晴れ始めた。
暫くすると俺の横にルーベンの姿が浮かび上がってきた。
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