異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第五章

97話

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 階段を下りた先は、また洞窟内になっていた。
 だが先にある出入り口から外を覗くと密林が広がっており、まだ密林の階が続くようだ。
 今日はここで野営となった。

 今夜の晩御飯は、捌いたばかりの狼肉を臭み抜きのハーブと塩コショウでシンプルに味付けをして焼いた物と、俺がマホンで買っていた焼きたてパンだ。
 塩やコショウは割と高価な物だが、今回の討伐依頼で何が起こるか分からないから念の為に購入しておいた。
 焼くのは俺。一葉教わった通りに下ごしらえをして焼いていく。
 辺りには肉の焼けるいい匂いが充満していった。

「これくらいでいいかな?皆さん、焼けましたよ~。パンは適当に取ってくださいね」
「悪いな」
「ん~ん。いい匂いだな」

 皆が肉とパンを取っていったのを確認して俺も食事にする。
 俺が出したパンが温かく、焼きたてのパンだったことに気付いた皆が俺を見ているがあえてスルー。
 とはいえ、いずれは話す必要があるのだろうが……。

 さてと、俺も御飯にさせてもらおう。パンに切れ目を入れてその中に焼いた狼肉を挟む。

「いただきます」

 少し肉が大きいから口を大きく開けて齧りついた。

「ん~、旨いな。狼肉の臭みもちゃんと取れてるな。伯父さんに感謝だな」

 食べ終わった俺は後片付けを始めた。するとルーベンとヴィクターがとても真剣な表情で側にやって来た。

「ドルテナ、明日からのことなんだがな。この先も今日と同じような階だと思っている」

 俺もそんな気がするから頷いた。
 ゴブリンの階は3階層続いたから、ここの密林の階層も3階層あるだろうな。

「俺達は少しでも早くダンジョンから出たい。今日もお前の武器のお陰でかなり早く進めた。それでだ、これから先はお前を先頭に今までよりも早く進みたいと思ってる。やってくれるか?」
「ドルテナ。もう君の実力はここに居る全員が認めている。ランクアップも問題ない。ギルドとしてはこのダンジョンの存在を早く領主へ知らせなければならないんだ」

 ルーベンは行方不明のイレネの捜索や亡くなった仲間の家族のこと等が気になるのだろう。
 ヴィクターは昔話に出てくるダンジョンがヒュペリトの直ぐ近くにできたことを懸念している。転移装置がないから、このダンジョン内の魔物が外へ出ることはないだろうが、それでも何らかの影響が出てもおかしくはない。

 2人の真剣さがヒシヒシと伝わってくる。
 俺としても早くダンジョンから出てマホンに帰りたい。
 その為には俺の能力を隠しながら進むのは難しいだろう。
 俺が今後も冒険者を続けていくなら、いずれ他の人にも知られることになる。

 既に皆には数種類の武器を見せているし、危険察知もルーベン辺りは何か勘付いているかも知れない。
 焼きたてのパンを提供したから、時間経過のないアイテムボックスも何か感じているだろう。

「そうですね。皆さん信用できそうですし、早くここから出たいのは一緒です。それにイレネさんの事も気になります。前方から来る敵は任せてください。それと食料に関しても当面は大丈夫です。先程の食事にも提供したのでもしかしたら予想してるかも知れませんが、私のアイテムボックスは入れたときの状態のまま取り出すことができます。ここから出るために、私も全力でやらせていただきます」

 そう言うと、2人共頷き、表情が和らいだ。そして右手を出してきたので俺は2人と握手した。

「ありがとう。ギルドに帰ったら討伐報酬とは別に報酬は用意させてもらう」
「俺達もマイク達の遺体を預かってもらってるからな。その礼も帰ったらさせてくれ」
「はい、分かりました。明日からはもっと速いスピードで進んで行きましょう」

 俺も、皆に隠し事をしているような気持ちから少し解放されて気が楽になった。

「じゃ確認だが、進路上の魔物は把握できるんだよな?」
「はい。大丈夫です。見つけ次第処理していきます」
「お前の武器なら大丈夫だろう。ヴィクターは何かあるか?」 
「いや、特にはない」
「よし。なら明日からは頼むぞ」

 2人は他の皆にも話すために離れていって。


◆◇◆◇◆◇


 翌日。

 野営をした洞窟から出て、昨日の話通り俺が先陣を切る形で進む。
 洞窟から出て直ぐに危険察知に反応があった。位置は右側。この道なりではなさそうだ。
 と、思っていると十字路の分かれ道に出た。予定ではこれを右に進むのだが、そうするとあの危険察知が反応した魔物の方に近づくことになる。
 俺は一旦分かれ道で足を止めた。

「ここを予定通り右に曲がりますが、その先に魔物がいると思われます。数は数匹っぽいので、問題はないとは思います」

 皆が頷いたのを確認して右に曲がる。
 その先15m先にアーミーアントが3匹おり、直ぐに俺達に気付いてこちらへ向かってくる。

「アーミーアントを確認。攻撃します」

ー タタタタタッ! タタタタタタタッ! タタタタタタタタタッ!  ー

 直線的な動きしかしないアーミーアントを狙うのは然程難しくなかった。
 倒したアーミーアントはアイテムボックスに即収納。先を急ぐ。

 その後も危険察知で魔物の位置を把握できるお陰で、一度も攻撃を受けることなく進むことができた。
 そして俺達は、行き止まりにいたアーミーアントを倒して昼休憩をしている。

「まだ階段が見つかりませんね」
「結構歩いてるんだけどなぁ」

 俺の隣に座るベンハミンは手元の紙を見ながら応えた。
 ベンハミンは今まで歩いた道を紙に記録しており、どこに階段があったかが一目で分かる。
 この階層も歩いた道は全て記録しており、その距離はかなり歩いていることを示していた。

「もしかして、最初の道を左に行った方が早かったんですかね?」
「どうだろう。こればっかりは階段を見つけるまで分からないなぁ」

 しかしこの上の階と同じような広さなら、そろそろ階段を見つけていても可笑しくはない位歩いている。
 太陽は真上を通過しており、足元の影も少しずつ長くなっている。

「気にすることはない。日暮れまでに見つけられないのであれば、また元の入口に戻ればいいだけだろ?」

 そうだな。道標があるわけじゃないんだから時間はかかる。元々分かっていて事だ。
 幸い、ベンハミンが地図を書いてくれているお陰で、雨風を凌げて一夜を過ごせるこの階の出発地点に帰ることは容易だ。

 休憩も終わり、気を取り直して出発したが、目的の階段を見つけたときは日が傾き夕方になっていた。

「すみません。なかなか階段を見つけられなくて」
「何で謝る?お前のせいじゃないだろ?階段の場所が分からないから片っ端から道を調べてるんだ。階段の場所が分かってるなら兎も角、分からないからこうやって進んでる。だから遅いか早いかなんて誰にも分からないし誰かの責任でもない。お前はよくやってる。そうだろ?ルーベン」
「ああ。ホスエの言う通りだ。ドルテナは最初の予定通りに道を進んで行っていただけだ。何の問題もない。それに道中のアーミーアントは全て1人で倒しただろ?それも視界に入ったと同時にな。そのお陰でサクサク進めてから夜になる前に階段を見つけられたんだ。よくやってくれてる」

 ちょっと凹んでた俺だったが、ホスエとルイスに慰められて少しは気が楽になった。

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