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第三章

42話

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「さてさて、あれより火力が期待できる武器は……」

 アイテムボックスを開き、リストを見ながらこの場所で使える物を探す。

「いろいろあるが、先ずはこいつかな」

 さっき使ったFN SCAR-Hにオプションで付けられるグレネードランチャーがある。
 爆発系は毛皮などを傷つけるから余り使いたくないけど、命あっての物種だからな。威力を確かめておく必要はあるだろう。

 沼の端から端が一番長いところに移動する。対岸までの100m位あるから丁度いいだろう。
 アイテムボックスからFN SCAR-Hをグレネードランチャー付で取り出し、鑑定で説明を読む。
 的は対岸にある木だ。

「やってみますか……えっと、的まで100mくらいだから……この照準器で合わせるのか……」

ー  タンッ  ……………… ドゴォン!! ー

 引き金を引くと発砲音が響き、少し遅れて爆発音が聞こえた。

「……グレネードというだけあって破壊力は凄いな。ただ、慣れないと狙いが付けにくいな」

 的にした木の着弾付近の枝は吹き飛ばされていたが、幹の表面はかなり削られる程度で折れたりはしなかった。
 それでも数発当てれば折れそうだ。

「威力はいいとして、1発しか装填できないのか。弾を込めてる間に魔物とかに襲われそうだな。いざという時に使う物なんだろうか……あ、そういえば」

 1発しか撃てない事に不満を持った俺だが、別タイプのグレネードランチャーがアイテムボックスにあったことを思い出した。

 アイテムボックスから取り出したのは、グレネードランチャー【Denel MGL140】という武器だ。
 所有者登録をして使えるようにする。

「でっかいリボルバーみたいな見た目だな。でも6発連チャンで撃てるのはいいな。……そうか!これとさっきの奴を交互にアイテムボックスから取り出して撃てば、ずっとグレネードランチャーを打ち続けられるな」

 アイテムボックスへ入れると自動的に弾丸を補充してくれる。その利点を利用するからこそ出来る事だ。チート様様だな。

「ついでに、もう一つグレネードランチャーっていうのがあるからそれも見てみるか。えっと……これだ」

 次に取り出したのは、オートマチックグレネードランチャー【MK47】。

「…………なんだこれ?見た目は機関銃?でもって設置型かよ」

 アイテムボックスから出てきたのは据置型のグレネードランチャー。弾薬箱からベルトによって給弾されるタイプだった。

「先ずは鑑定だな。……弾薬箱には32発と。取り替え方も書いてあるな。イチイチアイテムボックスに出し入れしてたら面倒だよな」

 弾薬補給の度にアイテムボックスに入れて、直ぐに出して足場を固定してなんてやってられない。手に持てる銃なら兎も角、設置方でそんなことをするのは勘弁して欲しい。

「それで、射程が……1㎞越えかよ。ここじゃ試射もできんぞ。っていうか、そんな遠くの獣や魔物を倒しても回収に行けねぇわ!」

 と、誰にでもなく突っ込んでしまった。
 一応、弾薬箱の交換などを練習しておいた。説明通りにやれば思ったほど難しくはなかった。

「とりあえずここで練習出来るDenel MGL140って奴を使ってみるか」

 据置型のMK47をアイテムボックスに入れてからDenel MGL140を取り出した。

「さてと、こいつはこれで照準を合わせるのか。……おぉ、見やすいな」

 そして先ほど的にした木に向かって引き金を引いた。

ー  タンッ  ……………… ドゴォン!! ー

「FN SCAR-Hに付けたグレネードランチャーと同じ感じかな。残りを撃ってしまおう」

 再び木に照準を合わせて引き金を引く。

ー  タン!タン!……ドゴォゴォン!! ー

 静かな森に爆発音が響きまくる。動物たちにとってなんと迷惑なことか。

「獣や魔物に使ったら木っ端みじんになりそうだな。直撃しなくても毛皮とかは使い物になりそうにないな……(ミシッ)……ん?」

ー ミシッ……バリ…バリバリ!…… ズダァーン! ー

 的にしていた木が、数発のグレネードに耐えきれなくなり倒れてしまった。

「あ………しまった……。見つかるとマズいな。とりあえず回収しておこう」

 この辺りは人の手が入っている山だ。キチンと間伐もされていて、今倒れた木も大きくなるように育てていたはず。
 幸い辺りには人の気配がないから、今のうちにアイテムボックスに入れてしまえば俺がやらかした証拠は残らない。

「なかなかのサイズの木だったな。アイテムボックスに入れておけば、いつか使うこともあるだろう」

 証拠の木をアイテムボックスに入れてさっきの場所に戻る。

「さてと、あとひとつ試したら帰ろう。エルビラさんとの晩御飯の約束までに帰らないとな……最後はこいつだな」

 最後に試射するのはアンチマテリアルライフル【Barrett M82】だ。

「ライフルっていうだけあって長いな。……何々……射程2㎞って。まぁ、そんな遠くの物を狙うこともないだろう。さっきのグレネードランチャーじゃないが、倒した獲物を取りに行けないとか意味ないし」

 ブツブツと文句を言いながら早速腹ばいになり射撃体勢をとる。

「……100m位だと近すぎるのか?木がめっちゃ近くに見えるな。先ずは一発、の前にイヤーマフを付けてと」

 FN SCAR-Hにもスコープが装着されているが、Barrett M82に装着されているスコープの方がより遠くまで見える。

 Barrett M82の説明にイヤーマフを付けるように書いてあったが、街から出るときはイヤーマフが付いたヘルメットを被るようにしているから大丈夫。
 射撃音から聴力を守るためにはイヤーマフは大切だよね。

 コッキングレバーをガチャッと引き、倒れた木の残り部分に狙いを付ける。そして右手の人差し指に力を入れて引き金を引く。

ー   ダンッ  !! ー

 肩に強烈な反動が伝わる。

「ッ!……すっげぇ肩にくるぞ。射撃音はかなりデカいけどイヤーマフのお陰で問題はないな」

 的となっている木は着弾した辺りが大きくえぐられていた。

「これで撃ち続けたら木が無くなるんじゃ……」

 そう言いながら引き金を引き、2発目3発目を撃っていく。

ー ダンッ!! ……ダンッ!!ー

「……的を変えよう……」

 みるみると吹き飛んでいく木は、的の役目を果たせなくなってしまった。
 的を変えて射撃の練習を再開する。

ー ダンッ!!……ダンッ!! ……ミシッ……バリバリバリ……ズダァァン ー

「……えっと……次の的を……」

 この後、マガジンを3本分ほど撃ち尽くして今日は終わりとした。

 的となってくれた木々はありがたく回収させてもらった。

 ツルモ村に戻ったのは夕方になる少し前くらいだった。
 宿の井戸で熊の血が付いたショートソードをきれいに洗わせてもらう。ショートソードの初めての活躍が血抜きとはなんとも……。

 エルビラさんを呼んで晩御飯にしよう。

ー コンコン ー

「エルビラさん、ドルテナです。帰ってきたんですが、晩御飯食べに行きませんか?」

 ドアをノックしてエルビラさんを食事に誘う。

「はい、行きます」

 直ぐにエルビラさんが部屋から出てきたので食堂へ向かう。

「お父さんの具合はどうですか?」
「もう大丈夫ですよ。お昼御飯を食べなかったので晩御飯を早めに食べ終えたくらいです」

 お腹が空くくらいなら大丈夫だな。

 カウンターにいた宿の主に晩御飯を食べることを伝えて席に着く。

「ところで……山はどうでしたか?」
「ええ、この辺りの山は手入れがされ………あ、いや、森には入っていませんよ?」
「誤魔化してもダメです。村の外なんて山に入る以外無いじゃないですか」

 まぁ、確かにそうだよな。エルビラさんなら話してもいいかな。

「エルビラさんには敵いませんね。山は手入れがされているので歩きやすかったですよ。それに久しぶりに武器を使うことも出来ましたから」
「ということは……何か捕れたのですか?」
「はい、牡鹿が捕れました」

 熊の魔物の事は伝えないでおこう。変に怖がらせてもしょうがない。

 狩の話をしていると女将さんが食事を運んできた。

「ありがとうございます。あの、私の連れの人達はもう食べましたか?」
「お嬢さんのお父様は既に食べられましたよ。他の方は外で食べるからいらないと聞いてます」
「そうですか、分かりました」

 ノーラさん達は、酒場でご飯を食べるらしい。また飲みすぎて明日の仕事に支障を来さないといいけど……。

「明日はいよいよワカミチ村ですね。ヘイデンさんの目的の物が手に入るといいですね」
「それを父も心配していました。採取する一番いい時期と乾燥させる期間を考えるとそろそろ生産が終わっていてもおかしくないんです」

 季節物だから、今年の物を作り終えてしまえば次が出来るのは来年になる。

「ワカミチ村は昼過ぎには着くくらいの距離なんですよね?」
「はい、なので宿を取ったら直ぐに製造元に向かうと父は言っていました」

 その方がいいだろう。一足違いで売り切れとかは辛いだろうしね。

「木箱は私が持っていますから、同行しますね」
「はい、よろしくお願いします」

 俺が同行するのは、キヒキヒを持って帰るための木箱が俺のアイテムボックスに入っているからだ。

 話をしているうちに晩御飯を食べ終えた。
 今日は山を登ったりしたので早めにベッドに入らせてもらおう。

「エルビラさん、明日もありますからそろそろ戻りましょうか?」
「分かりました。また明日もよろしくお願いします」

 エルビラさんが部屋に入るのを見届けてから自分の部屋に帰った。

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