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第三章

31話

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 不毛な言い合いを放置して、案内役の少女にさっさと部屋へ案内してもらった。

「お部屋はこちらになります」
「ありがとうございます。後でお湯をもらえますか?」
「かしこまりました。直ぐにお持ちします」

 部屋を案内してくれた少女に顔を洗うお湯を頼み部屋に入る。
 
「1人だと広いな」

 ベッドが2台、小さな丸いテーブルと2脚の椅子、それに小さなクローゼットがある部屋だ。ただ、クローゼットはアイテムボックスがあるので必要ない。
 カウンターで聞いた話だと、今から食事の準備に取りかかるから、用意が出来たら部屋へ呼びに来ると言うことだった。なので、ベッドに腰掛けてゆっくりと待つことにした。

 危険察知だが、ダウゼン村の殆どを範囲に収められたが、黄色いシルエットが少しあるくらいで、危険度は低そうだ。

 ベッドに腰掛けた後、自分がまだ外套と戦闘服を着ていることに気が付いた。
 部屋の中では戦闘服は必要ないのでレザーアーマーに着替える。剣は別になくてもいいだろう。

 着替えてベッドに腰掛けていると直ぐに少女がお湯とタオルを持ってきてくれた。
 お礼のチップを少し多めに渡して受け取る。食事の用意が出来るまでに顔を洗い、体を拭いておく。

 マホンからダウゼン村までの道中は、肉食獣や魔物に遭遇するといった危険な目に遭うこともなく順調に進んだ。
 魔物も山賊も姿を見せることはなかった。初めての旅は無事に終えられそうだ。
 前世なら親に電話の一本でも入れられれば安心するんだろうが、この世界には電話なんてない。

 部屋でそんなことを思っていると部屋のドアがノックされた。

ーコンコンー

「お客様、お食事のご用意が出来ました。どうぞ食堂の方へお越し下さいませ」
「分かりました。ありがとう」

 晩御飯を食べるため部屋を出て食堂に行くとみんなそろっていた。どうやら俺が一番最後だったようだ。

「すみません、お待たせしてしまって」
「今、皆さん来られたところですよ。さて、揃いましたのでいただきますか。先ずは1日目、お疲れ様でした。明日は各自ゆっくり休んで下さい。では乾杯」
「「「「「「乾杯!」」」」」」

 俺とエルビラさん以外はワインを飲んでいるようだ。
 この世界の旅はもっと大変なのかと思っていたが、獣も魔物も出てこなかった。山賊は領主のお陰で出ることはないだろう。もし山賊が出た場合は一切容赦しない。

「獣も魔物も出ませんでしたね。初めてで緊張してましたけど、旅とはこういう物ですか?」
「いえいえ、ドルテナさん、今日はまた特別ですよ。たいてい何匹かは出るものです。今日のように全く出ないのは珍しいですよ」

 俺の質問にヘイデンさんが答えてくれた。

「やっぱりそうなんですね。これから先も気を引き締めておきます」

 川魚の焼き物や鹿肉と山菜のパスタ、猪肉のスープにパンといった食事をしながら、たわいもない話をしていた。ワインは既にボトル7本目だ。ペース早ぇなぁ。
 に晩御飯を食べ終えた俺はに部屋に帰る。

「すみません、初日で疲れているのでお先に失礼します」
「えぇ、ドルテナくん。私と一緒に呑もうよ~」

 ハァ~。こうなりそうだったから早めに食べたんだけど……。

 俺の右隣に座っていたノーラさんが、席を立とうとした俺に抱きついてきた。そして、強力な破壊力を有する双丘が俺に押しつけられている。

 いや、丘と言うよりはどう見ても山だよな。

 ノーラさんはハーフプレートアーマーから普通の服に着替えているので、きれいな形の胸は俺とノーラさんの体に挟まれてムニュっと押しつぶされている。

 マジでヤバいですから!めっちゃ胸の感触が伝わってくるし!

 俺の薄いペラペラのレザーアーマーだとモロに胸の柔らかさが伝わってくるのだ。
 女性とはいえ冒険者の力でギュゥっと抱きつかれた俺は、その手を振り解くことが出来なかった。いや、出来てもしなかっただろう。

「ノーラさん、私まだ飲めませんから。ノーラさんも余り飲むと体に毒ですよ」
「これくらいは大丈夫よん♪ドルテナくんも飲みなさいよぉ~。パメラだって飲んでるのよぉ」
「ノーラ、私の顔で年齢を判断しないで」

 確かに童顔のパメラさんがお酒を飲んでいると止めたくなるが、彼女はノーラさんと同い年だから問題ない。
 この人、わざとやってるのか?と思ってたが、今はガチで酔ってるようだ。

「ノーラさん!酔ってるんですか?!抱きついたらダメです!ドルテナさんから離れて下さい!もぉ~」
「えぇ~。別にいいじゃない。減るもんじゃないし~。そんなに抱きつきたいならエルビラちゃんも抱きついちゃいなよ♪」

 エルビラさんに注意されたノーラさんは、そう言って更に抱きついている腕に力を入れて俺に胸を押しつけてくる。
 このままだと、いろんな意味で席から立てなくなりそうだ。

 そろそろヤバいな。13歳なんだから既にそういう事に反応する体に成長してるんだよぉ。

「わ、私は別に、だ、抱きつきたくはな、くは…(ブツブツ)」
「エルビラちゃん、女だって攻めるときは攻めないと、他のひとに取られちゃうわよぉ。ねぇ~ドルテナくん♪あっ!そうだ。ねぇねぇ、ドルテナくん?私達のPTに入らない?私達はね、ば──ん──」

 いつの間にかノーラさんの後ろに来ていたアダンさんが、おしゃべりを続けるノーラさんの口を塞いだ。

「姉貴、飲み過ぎだよ。ドルテナくんも困っているし、依頼主の娘さんのエルビラちゃんを弄るのもほどほどにしなよ。ドルテナくん、姉貴は俺が押さえておくから今のうちに部屋に行くといい」

 ノーラさんは、口を塞いでいる手を振り解こうとして両手を俺から離した。そのノーラさんを口を塞いでいない方の手で確保して、俺から引き離してくれた。
 その時にアダンさんの手が思いっきり胸を鷲掴みにしていたが、姉弟なら問題ないだろう。羨ましいけど。

「あ、ありがとうございます。それでは皆さん、お先に失礼します」

 ノーラさんから解放された俺は、アダンさんに鷲掴みにされている胸を横目に挨拶をして席を立った。

「あ、ドルテナさん。明日の買い付けは商店が空く時間に宿を出る予定ですので、そのつもりでいて下さいね」
「分かりました。では、おやすみなさい」

 ヘイデンさんに挨拶をして部屋に戻った俺は、レザーアーマーを脱ぎ部屋着に着替えた。
 そして、万が一を考えて戸に剣を立て掛けておく。
 この部屋の鍵は簡単な仕掛けなので少々不安なのだ。寝ているときに部屋に入られてはたまらない。
 こうしておけば侵入しようとした奴が戸を動かしたら剣が倒れて大きな音が出るはずだ。

 下の食堂からは大きな笑い声が聞こえてくる。まだまだ酒盛りは終わりそうにない。

 宿で特にする事もないので早めにベッドに入り寝ることにする。
 自分ではそんなに疲れを感じていなかったが、体は違ったらしい。ベッドに入って目を瞑ると直ぐに睡魔が襲ってきて眠りについてしまった。

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