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第一章
7話
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「ただいまより、合同葬儀を執り行います」
神父さんの司会で、葬儀が滞りなく進んでいく。遺族や関係者、弔問に訪れた人達が献花をして、最後のお別れをする。
「皆さま、最後のお別れは尽きないと思いますが、そろそろ故人を神の元へお送りする時となりました。これより斎場にて最後のお見送りをいたしたいと思います」
ここを出ると、もう二度と父の顔を見ることはできない。
最後に、本当の最後にもう一度父の顔を母とペリシアの3人で見ておく。
父の両親、つまり俺の祖父母は既に他界しておりいない。
兄弟は弟がいた。
父と同じで冒険者をしていたが、19歳の時に魔物から受けた怪我が原因で死亡している。
母、俺、妹は父にとって唯一の家族。その家族を遺して行く父は無念だろう。
父の代わりになれるかどうかはわからないが、家族を守れるような大人に男になろう。でなければ父の魂も成仏できまい。
この世界で、11年間受け続けた愛情を俺は忘れない。
そして、父の技を引き継げなかったのが残念でならない。だが、アイテムボックスに入っている現代兵器で冒険者として絶対に成功し、母と妹を守る事を父に約束をして斎場へ送り出す。
斎場といっても前世のような建物ではなく、専用の広場で櫓を組んで、その上に遺体を乗せて火葬する。
広場の横には親族の為の待機所が設置されている。その待機所内でペリシアは母に抱きついたままずっと泣いている。
森へ行った日は朝早かったのでペリシアはまだ寝ていた。その為、あの日出発して行く父の姿を見ていない。
母の目には隈ができている。きっと寝てないのだろう。
俺だって心身ともに11歳なら、どうしていいかわからず泣き続けていただろう。
今、色々と落ち着いて考えられるのも中身が40歳だからだと思う。
とはいえ、この後の生活のビジョンが見えず、かなり不安ではあるのだが……。
それは他の遺族も同じか。
櫓に火が放たれる。夕日より赤い炎が天高く舞い上がり、空を紅に染める。
炎と共に神の元へと召される。ふと空を見上げると、父がこちらを見ているような気がした。
父には、俺が前世の記憶を持っていることを伝えられなかった。
俺が成人したらいつかは伝えようと思っていたのだが……。
火葬が終わり、遺骨を集め共同墓地へと埋葬する。これで全てが終わった。家族3人で家路につく。
既に夕方を回りを辺りは暗くなっていた。
母に晩御飯を作る元気はない(俺もないが)ので、屋台で適当に買い晩御飯にする。
こういう時でも食べなければいけない。体が資本なのだ。
今回の山賊による被害者家族には、領主から特別に見舞金がでた。
こんな事は通常はまずあり得ない。どうも、山賊が居たことや大人数で行動させてしまっていたのは、諸事情により軍による巡回が少なくなっていた事が原因の一因と考えられているらしい。
なので今回は特別に見舞金を出した、ということだそうだ。
食事も終わり、自室に戻ろうとしたところで母に呼び止められる。
「テナーちょっと話があるの。ペリシアも一緒に聞いていてね。今後のことなんだけど……ここを売って、ドロシー伯母さんのところでお世話になろうと思っているの。」
母はあんな状態でもちゃんと今後の事を考えていたのだ。
ただ、俺の予想の斜め上をいく考え方を示したが……。
ドロシーおばさんは母の姉で、ご主人と従業員一人で宿を経営している。
「お母さん、どうして家を手放すの?伯母さんのところで仕事をさせてもらうのはわかるけど、ここを手放してどこに住むの?」
そう。ここを手放したら住むところがなくなる。何処か家を借りるならここを売らずに住み続けて方が安上がりだ。
「本来の仕事ではない事で従業員達を死なせてしまったわ。経営者として、その家族へは補償をするべきだとお母さんは思っているの。頂いた見舞金だけでは足らないから、家と工房を売って補償費用にするの。これから住む場所は、姉の宿の一室を借りることになっているから大丈夫よ」
既に伯母さんの方は迎え入れる準備が済んでいるようで、明日、必要な物だけを持って引っ越しをするつもりだと言われた。
これからは、1部屋で家族3人が寝起きをする事になる。
ベッドもクローゼットも伯母さんの所にある物を借りるので、家具類や持っていけないものは全て売り払う。
そうなればかなりの金額になると思う。
これから仕事もあるのだから、そこまでのお金は必要ないが持っていけない物は売るしかない。
とはいえ、思い入れのある物や父の遺品となった道具類、これらを手放す気にはなれない。
「1つ1つに思い出があり大切な物よ。お母さんだって売るのは嫌よ。でもね、持っていくことも置いていくことも出来ないの。分かってちょうだい」
母は目を潤ませながら、俺や妹を納得させようとしている。そんな母を見ながら俺はある決断する。
5歳の頃、初めて自分のアイテムボックスを見た。
現代兵器の数々に驚いていた為、見落としていたことがあった。アイテムボックスの収納容量だ。
ほとんどの人は容量がランドセル1個分。多い人でも3個位。これに対して、俺の容量は無制限だった。そう、ドラ○もんの四次元ポケット並みだ。
これが判明したのは、昨年の10歳の誕生日に取得した“鑑定スキル”のお陰だ。
誕生日の早朝、いきなり頭の中に「年齢制限解除によりスキル“鑑定”が解放されました」というアナウンスにかなりビビった。チビリはしなかったから大丈夫。
この“鑑定スキル”はアクティブスキルで、鑑定したい物を意識してスキルを発動させると詳しい内容が表示される。個別でも纏めてでも可能だ。
このスキルは100人に1人程度の割合で所有者がいる。
ただ、通常は産まれた時点で持っているらしく、なぜ俺だけ10歳の誕生日から使えるようになったのかは不明。
この鑑定スキルで様々な物を鑑定していたときに、アイテムボックスの鑑定もやって容量が判明したのだ。
容量無制限とか完全にチートなので誰にも言えなかった。だが、今この力を使うときなんだ!と俺は思う。
父に誓ったのだ、家族を守ると。母と妹を守ると。
俺のアイテムボックスを使えば家具等の家財、工房の道具なんかも全て入る。
ある程度は売らないと資金的に厳しいがそれ以外は残せる。
母と妹に「絶対に他の人に言わないでほしい」と前置きして二人にこの事を話した。
母は半信半疑、妹は「凄い!」と素直に驚いてくれた。
母を納得させるためリビングのテーブル、食器棚等を手当たり次第収納していった。
その光景に母だけでなく、妹とも目を見開いていた。
まぁそうなるわな……。
とりあえず収納したものを元に戻し、2人に声をかける。
「これで売らなくてもいいものは手元においておけるよ。お父さんの形見もね」
俺の声で二人は笑顔になり大喜び。
「テナーにはほんと驚かされるわ。小さい頃からしっかりしてるし、計算も私より早いのよね」
あはは、中身が40歳のオッサンで更にチートですみません。言えない事もいっぱいあって更にすみません。
さぁ、しんみりとした気持ちを切り替えて明日は引っ越しだ。
下を向かず、上を向いて歩こう。父の分まで生きるのだ。
神父さんの司会で、葬儀が滞りなく進んでいく。遺族や関係者、弔問に訪れた人達が献花をして、最後のお別れをする。
「皆さま、最後のお別れは尽きないと思いますが、そろそろ故人を神の元へお送りする時となりました。これより斎場にて最後のお見送りをいたしたいと思います」
ここを出ると、もう二度と父の顔を見ることはできない。
最後に、本当の最後にもう一度父の顔を母とペリシアの3人で見ておく。
父の両親、つまり俺の祖父母は既に他界しておりいない。
兄弟は弟がいた。
父と同じで冒険者をしていたが、19歳の時に魔物から受けた怪我が原因で死亡している。
母、俺、妹は父にとって唯一の家族。その家族を遺して行く父は無念だろう。
父の代わりになれるかどうかはわからないが、家族を守れるような大人に男になろう。でなければ父の魂も成仏できまい。
この世界で、11年間受け続けた愛情を俺は忘れない。
そして、父の技を引き継げなかったのが残念でならない。だが、アイテムボックスに入っている現代兵器で冒険者として絶対に成功し、母と妹を守る事を父に約束をして斎場へ送り出す。
斎場といっても前世のような建物ではなく、専用の広場で櫓を組んで、その上に遺体を乗せて火葬する。
広場の横には親族の為の待機所が設置されている。その待機所内でペリシアは母に抱きついたままずっと泣いている。
森へ行った日は朝早かったのでペリシアはまだ寝ていた。その為、あの日出発して行く父の姿を見ていない。
母の目には隈ができている。きっと寝てないのだろう。
俺だって心身ともに11歳なら、どうしていいかわからず泣き続けていただろう。
今、色々と落ち着いて考えられるのも中身が40歳だからだと思う。
とはいえ、この後の生活のビジョンが見えず、かなり不安ではあるのだが……。
それは他の遺族も同じか。
櫓に火が放たれる。夕日より赤い炎が天高く舞い上がり、空を紅に染める。
炎と共に神の元へと召される。ふと空を見上げると、父がこちらを見ているような気がした。
父には、俺が前世の記憶を持っていることを伝えられなかった。
俺が成人したらいつかは伝えようと思っていたのだが……。
火葬が終わり、遺骨を集め共同墓地へと埋葬する。これで全てが終わった。家族3人で家路につく。
既に夕方を回りを辺りは暗くなっていた。
母に晩御飯を作る元気はない(俺もないが)ので、屋台で適当に買い晩御飯にする。
こういう時でも食べなければいけない。体が資本なのだ。
今回の山賊による被害者家族には、領主から特別に見舞金がでた。
こんな事は通常はまずあり得ない。どうも、山賊が居たことや大人数で行動させてしまっていたのは、諸事情により軍による巡回が少なくなっていた事が原因の一因と考えられているらしい。
なので今回は特別に見舞金を出した、ということだそうだ。
食事も終わり、自室に戻ろうとしたところで母に呼び止められる。
「テナーちょっと話があるの。ペリシアも一緒に聞いていてね。今後のことなんだけど……ここを売って、ドロシー伯母さんのところでお世話になろうと思っているの。」
母はあんな状態でもちゃんと今後の事を考えていたのだ。
ただ、俺の予想の斜め上をいく考え方を示したが……。
ドロシーおばさんは母の姉で、ご主人と従業員一人で宿を経営している。
「お母さん、どうして家を手放すの?伯母さんのところで仕事をさせてもらうのはわかるけど、ここを手放してどこに住むの?」
そう。ここを手放したら住むところがなくなる。何処か家を借りるならここを売らずに住み続けて方が安上がりだ。
「本来の仕事ではない事で従業員達を死なせてしまったわ。経営者として、その家族へは補償をするべきだとお母さんは思っているの。頂いた見舞金だけでは足らないから、家と工房を売って補償費用にするの。これから住む場所は、姉の宿の一室を借りることになっているから大丈夫よ」
既に伯母さんの方は迎え入れる準備が済んでいるようで、明日、必要な物だけを持って引っ越しをするつもりだと言われた。
これからは、1部屋で家族3人が寝起きをする事になる。
ベッドもクローゼットも伯母さんの所にある物を借りるので、家具類や持っていけないものは全て売り払う。
そうなればかなりの金額になると思う。
これから仕事もあるのだから、そこまでのお金は必要ないが持っていけない物は売るしかない。
とはいえ、思い入れのある物や父の遺品となった道具類、これらを手放す気にはなれない。
「1つ1つに思い出があり大切な物よ。お母さんだって売るのは嫌よ。でもね、持っていくことも置いていくことも出来ないの。分かってちょうだい」
母は目を潤ませながら、俺や妹を納得させようとしている。そんな母を見ながら俺はある決断する。
5歳の頃、初めて自分のアイテムボックスを見た。
現代兵器の数々に驚いていた為、見落としていたことがあった。アイテムボックスの収納容量だ。
ほとんどの人は容量がランドセル1個分。多い人でも3個位。これに対して、俺の容量は無制限だった。そう、ドラ○もんの四次元ポケット並みだ。
これが判明したのは、昨年の10歳の誕生日に取得した“鑑定スキル”のお陰だ。
誕生日の早朝、いきなり頭の中に「年齢制限解除によりスキル“鑑定”が解放されました」というアナウンスにかなりビビった。チビリはしなかったから大丈夫。
この“鑑定スキル”はアクティブスキルで、鑑定したい物を意識してスキルを発動させると詳しい内容が表示される。個別でも纏めてでも可能だ。
このスキルは100人に1人程度の割合で所有者がいる。
ただ、通常は産まれた時点で持っているらしく、なぜ俺だけ10歳の誕生日から使えるようになったのかは不明。
この鑑定スキルで様々な物を鑑定していたときに、アイテムボックスの鑑定もやって容量が判明したのだ。
容量無制限とか完全にチートなので誰にも言えなかった。だが、今この力を使うときなんだ!と俺は思う。
父に誓ったのだ、家族を守ると。母と妹を守ると。
俺のアイテムボックスを使えば家具等の家財、工房の道具なんかも全て入る。
ある程度は売らないと資金的に厳しいがそれ以外は残せる。
母と妹に「絶対に他の人に言わないでほしい」と前置きして二人にこの事を話した。
母は半信半疑、妹は「凄い!」と素直に驚いてくれた。
母を納得させるためリビングのテーブル、食器棚等を手当たり次第収納していった。
その光景に母だけでなく、妹とも目を見開いていた。
まぁそうなるわな……。
とりあえず収納したものを元に戻し、2人に声をかける。
「これで売らなくてもいいものは手元においておけるよ。お父さんの形見もね」
俺の声で二人は笑顔になり大喜び。
「テナーにはほんと驚かされるわ。小さい頃からしっかりしてるし、計算も私より早いのよね」
あはは、中身が40歳のオッサンで更にチートですみません。言えない事もいっぱいあって更にすみません。
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