異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

文字の大きさ
上 下
4 / 155
第一章

3話

しおりを挟む
「おじさぁん。猪の肉ある?」
「あいよ!ってテネルテんとこの坊主か。あるぜ。」

 5歳になった俺は、母の代わりに買い物の行く事が多くなった。2歳違いの妹が生まれて、母があまり家を空けられなくなった為だ。
 ちなみにテネルテとは父のことだ。
 今日は、小さい頃から買いに来ている近所の馴染みの肉屋へやって来たのだ。
 目的は猪肉だ。
 猪肉はこの世界でも冬時期の方が美味しい。
 猪肉は前世の日本でも買って食べていた。

 時々お客さんから貰いもしたな。懐かしい。

 それにこの世界には魔物という奴等がおり、普通の獣よりうまい。魔物の猪の場合は夏でも美味しいが冬は更にうまい!
 ただ、今日あるのは普通の猪らしい。うむぅ、残念だ。

「なんだ、魔物がよかったのか?今日はまだ入荷してないなぁ」

 俺の表情を見た肉屋の主人が魔物はないと教えてくれた。

 そうかしょうかな……ん?まだ?

「おじさん、“まだ”ってことはこの後にはあるって事??」
「どうかなぁ。もうちょっとしたら冒険者が持ってくるかもな。来るかどうか、こればっかりは俺にもわからんぞ。その日によるからな」

 ほぉほぉ。この時間くらいから冒険者が帰ってきて肉なんかを売りに来る事があるのか……。まぁ、ないならしゃーないな。

 そう思って立ち去ろうとしたとき、数人の大人達が俺の横にやって来た。

「おっちゃん!肉買い取ってくれ!」

 どうやら冒険者のパーティーの様だ。
 その冒険者達の一人、ちょっとイカツイ男が肉屋の主人に声をかけた。

 お?!いいタイミングだな。なんの肉を持ってきたんだ?……って、おいおい、こいつら何故か手ぶらだぞ。何処にも肉なんて持ってないじゃないか。

 俺が不審な目を男に向けていると、肉屋の主人は冒険者と話を進めていく。

「なんの肉だ。とりあえずこの台に出してくれ」

 肉屋の主人が冒険者に催促すると、その冒険者が徐に台の上に手を差し出した。
 そして次の瞬間、手品の如く男の手に肉塊が現れた。
 急に現れたその肉を台に置くと、次から次にと肉が手から出てきて、台に置かれていく。

 なっ!?なんじゃこりやぁ~!!〈松田○作風〉

 びっくり過ぎて声が出ない。
 思考回路が停止した俺に、肉屋の主人は「お?!坊主!よかったな。猪の魔物があるぞ!」と教えてくれた。
 いるんだろ?って聞かれたが声が出ず、首を縦に降るのが精一杯だった。

 ここでの支払いはなし。この店では俺が買うときはツケてもらっている。いくら近所とはいえ5歳児にお金を持たせるのは危険なんだとさ。

 無事に魔物の猪肉を買えた俺は、籠の中にある肉を何度も確認しながらさっきの事を思い出す。

「いったいあれはなんだったんだ?手品みたいにいきなり肉がパッ!と現れたぞ。それも何個も……」

 なにがなんだかわからない。とりあえず帰ったら母に話そう。せっかく買えた魔物の肉なのに、変な肉なら嫌だし。

「ただいまぁ!ねぇ、聞いて聞いて!」
「はいはい、何ですか慌てて。お帰り。ほらほら、落ち着きなさい。ね?」

 と、母に若干怒られながらさっきの肉屋での出来事を話す。

「それはね、その冒険者さんがアイテムボックス持ちだったからよ。そのアイテムボックスから出したから、次から次にお肉が出てきたのよ」
「ア、アイテムボックスだぁあ!?」
「……なにおっさんみたいな声出してるのよ」
   
 こういう事らしい。
 この世界にはアイテムボックスという特殊能力を持った人がいる。
 このアイテムボックス、割りとメジャーで人口の8割くらいが持っているらしい。俺の両親も持っているとのこと。
 ただし、人によって容量に差があるようだ。
 大抵の人が俺が今持っている籠1個分程度。これは前世のランドセル1個くらいと同じだ。
 そしてアイテムボックスの最大容量は樽1個分と言われている。大体ランドセル3個分くらい。
 それ以上のアイテムボックスは確認されていないらしい。

 さて、俺が見た冒険者は後者のようだ。樽1個分あればあの肉の量もうなずける。

「テナー、アイテムボックスの容量を人に聞いてはダメよ。それはねマナー違反なの。どんなに興味があっても、絶対に聞いてはダメよ。いいわね?」

 アイテムボックスの有無は構わないが、容量はダメらしい。
 女性にスリーサイズを聞くようなものか?……いや、それもまた違うかな……。
 ちなみに、父はランドセル2個分、母は1個分らしい。

 使い方は簡単で、鞄を開く気持ちを持って“アイテムボックス”と言えばいいらしい。そうするとアイテムボックスの中身がわかるようだ。
 慣れてきたら、アイテムボックスに入っている物をイメージするだけで使えるようになるんだとさ。
 なんでもっと早く教えてくれなかったのか、と文句を言ったら「子供のうちから楽を覚えてはいけません!」だとさ。おいおい。

 実際には、アイテムボックスの使用に慣れないと体調不良になるので、子供には使わせないし、教えないようにするのが一般的なんだそうだ。
 俺にも親が許可を出すまで使わないようにと釘を刺された。

 この世界には魔法もあるが、これは魔法を発動させるための魔法呪文が必要で、まだ教えられてないから使えない。
 来年、6歳になれば教会の神父さんが希望する子供たちに無料で教えてくれる。それまではお預けだ。
 それに、子供が魔法をむやみやたらに使用すると、本人もそうだが、回りにも意図せず危害を与える可能性があり、6歳までは魔法の使用を禁止されている。
 子供の火遊びで街が火事になったら洒落にならん。消防車もないのに。

 アイテムボックスかぁ。使っちゃいけないって言われてもねぇ。ダメって言われるとやりたくなるのが人ってもんでしょ?
 そういえば、“開けないで下さい”って書いてある箱を街中に置いて、何人の人が開けるかを実験してたテレビ番組を見たことがあるな。

 それに、前世ではあり得ないアイテムボックスなんて超便利なもの。もし俺が持ってるなら、やっぱり使いたいじゃない?ね?

 その日の夜、ベッドに座った俺は早速アイテムボックスが使えるかどうかを確かめる。

 持ってなかったらどうしょう。いや、両親も持っているのだ。多分……大丈夫……のはず。

「ふぅ~。よし!」

 深呼吸をして気合いをいれる。部屋から声が漏れないようなボリュームで…

「アイテムボックス!……お、出てき…たぁ?!んっ!」

 アイテムボックスが開いた後、中身を見て思わず声が大きくなり、慌てて自分の口を塞ぐ。その声を聞いて、部屋に両親が来ないか気配を探る。

 ……よし、誰も来ないな……とりあえず落ち着こう。

 まずアイテムボックスは持っていたから一安心だ。これで色々と便利になる。
 母に聞いた通り目の前には透明なガラスが見える。これは自分にしか見えなくなっていて、他人からは絶対に見えないらしい。
 俺からしたら、ガラスというか画面だな。この世界の人に画面なんて言っても通用しないか。
 まぁ、それは置いといてだ。

 今日、アイテムボックスという物の存在を知って初めて開いた。そこまではいい。子供には教えないというのだから。

 ……だがこれはなんだ。

 使ったことがないはずのアイテムボックスに既にアイテムが入っているらしく、目の前にリストが表示されている。
 で、だ。
 そのリストに表示されている物の全てが、存在してはいけない物の名前だ。いや、前世の世界では存在していた。していたが、こっちの世界にはない。
 これは絶対にヤバイ!というか、あっちゃいけない物がアイテムボックスに収まっている。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

サバイバルナイフ
ハンドグレネード(M67)【個数】∞
スタングレネード(M84)【個数】∞
スモークグレネード(M18)【個数】∞
ハンドガン(FN Five-seveN )【弾数】∞
サブマシンガン(FN P90)【弾数】∞
………etc.

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 Oh No ……なんてこったい……。

 銃刀法違反クラスですがな!!いや、もっとやばいか。テロリストクラスだな。って、んなことはどうでもいいんだ。
 プリセットでいきなりとんでも兵器の数々かよ。

 俺は思わず頭を抱えてしまった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...