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12.側にいて

12-6

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 室内の電気を消し、アロマキャンドルの明かりだけで配信がスタートした。
 黒いフード付きパーカーを目深にかぶり、目の部分だけ開いた黒い布を巻いた春陽。
 サングラスをかけて、白いフード付きのパーカーをかぶったマルがその横に並び、薄暗い中で挨拶をする。

「皆さん、こんばんは! Maruです」
「Harukaです」

 配信のコメント欄には、待ちわびていたリスナーたちの温かいコメントが並ぶ。

【もう会えないかと思った泣】
【Harukaちゃん、Maruくん、おかえり!】
【生配信、楽しみにしてたよ、ずっと待ってたよ】

 春陽にもマルにもそのコメントは見えているみたい。
 二人とも顔を合わせて微笑む。

「今日は一曲だけですが、Harukaが創った最新曲を聴いて下さい」
「アレンジはMaruです」

【話してるの初めて見た! Harukaちゃん、元気そう】
【つうか、マルくんってイケメンじゃない? サングラスはずしてー】

「いや、全然イケメンじゃないっす」

 マルが真っ赤になって否定するのをみて、春陽も私も笑ってしまう。

「じゃあ、そろそろ行こうか」
「うん、スタンバイしますね」

 コメント欄に【もっと話して】や【いっぱい歌ってほしい】が並ぶ中、二人はそれぞれの持ち場に着く。
 小さな声でマルが「いつでもいいよ」と春陽に声をかけると、スウっと一つ大きく深呼吸して。
 キーボードの音が、まるで雨音みたいに優しく響き始める。
 そこに、マルのギターリフが切なく響く。

あの日 全てが消えたんだ
街の明かりも 君の笑顔も
銀色の月だけが あたしを悲しそうに
見下ろしていたから
大事な人の顔に重なる

そんな簡単に 君の心をノックできなかったんだ
会いに行けない ずっとそう思い込んでた 
でも心が叫んでる 君に会いたいって
遺伝子単位で 君を呼んでるんだ
ノックするよ だから心のドアを開けて
あの頃みたいに笑ってほしいんだ
君はいつだって大切な人だから
ねえ、笑ってよ 私のために
ねえ、泣かないで 私のために

君との出逢いは 生まれる前から決まっていた
いつも誰かのために 手を差し伸べる君に
今あたしがしてあげられることは一つ
全ての願いをかなえてあげるよ
それからまた 二人で目を閉じよう
震えながら 抱きしめあって
朝が来たら 笑い合えますように
君とこの先も 一緒にいられますように

あの日 全てが消えてしまっても
銀色の月だけが あたしを優しく照らしてた
大丈夫 一人じゃないよと
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