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10.二人分の想いをあなたたちに

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 驚いたようにカナとアヤが顔をあげた。
 春陽はそんな二人を見下ろして。

「私は、夏月の双子の姉の春陽です。二人のことは妹から聞いてました」

 呆然と春陽の告白を見ていたカナが状況を理解したのだろう。

「ハァ? そういえば、双子の姉がいるとか言ってたっけ。夏月の姉さんが、ウチらに何の用事なのよ」

 カナは悔し気に唇を噛みしめて春陽を見ながら、ようやく立ち上がり浴衣の汚れをはらう。

「他校生が勝手に高校に入るとか、不法侵入ですけど?」

 アヤも立ち上がってカナ同様、乱れた浴衣を整える。

「大体、私たちとあなたって何の関係もないですよね? それなのに呼び出して、って、あ……チッ、美織か」
「アイツ、調子乗ってんなあ」

 幽霊の正体が生きている私の姉だと気付いた瞬間、彼女らの態度は一変した。
 いや、これが私の知っている彼女たちの本性だ。

「もう、いいかな? 行っても」
「美織に言っておいてね、クリーニング代払えって」
「そういうことじゃないでしょ! あなたたちは、私の妹も、妹の親友も傷つけて、心が痛んだりしないの? 夏月が死んだこと、なんとも思ってないの?」
「そりゃ、まだ若いのに死んじゃって可哀そうだなとは思うよ」
「でも、ウチらが突き落としたわけじゃないじゃん?」

 心底悲しくなる。
 私、こんな人たちのせいで苦しんでたのか。
 こんな薄っぺらい友情ごっこに巻き込まれて。
『どうせ、私が死んだって世界は回るし、悲しむ人たちなんて一握りだ。目覚めなければ、もう二度と、悔しい想いをすることはない。あの子らだって、私がいない方がいいでしょう、きっと』
 あんなこと思ってたなんて。
 人生リトライできるなら、言ってやる。

「そうね、あんた達が殺したわけじゃないけど、化けて出られても仕方のないことはしたでしょ」

 私が言いたかった台詞をそのまま一言一句違わずにぶつけた春陽に驚いた。
 さすが双子、意思疎通百点満点すぎるんだけど。
 悔しそうに顔を歪めたカナが何かを思い出したように。

「別に恨まれるようなことしてないし、そういうのって直接イジメてた人が思うことであって、私たち夏月に悪いことしたなんて思ってませんから」
「さっき、あなた達、夏月にごめんって謝ってたじゃない」
「さあね? 聞き間違いじゃない? お姉さんは残念だろうけどね」

 ザマァとばかりにほくそ笑む二人に石でもぶつけてやりたくなる。
 性格悪いにもほどがある!
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