26 / 89
5.あの日の夏月を探しに
5-1
しおりを挟む
夏月の相棒って、どういう意味なんだろう?
マルさんは、私が階段を上るのを何度も振り返って待っていてくれる。
私のことを心配して、だけじゃないだろう。
この階段で、夏月が落ちたことを忘れていないからだ。
夏月と同じ顔をした私が、そうならないようにという気づかいだからだ。
階段を上り切り、額の汗を拭い、見渡した先は緩やかなカーブが二手に分かれていた。
「左に行くと俺らの高校で、右に行くと練習場所。つうか、俺の家」
マルさんの家!?
いくらなんでも初対面の人の家に行くのは、どうなんだろう。
二人きりは、やはり……と思ったけれど、夏月もいるし大丈夫、よね?
夏月の顔色を伺ってみたけど、多分気分はよろしくなさそう。
プライベートな部分に私が入るのは、嫌なのかもしれない。
歩みを緩めたマルさんと自然に隣同士になる。
傍から見たら二人だけ、でも私の右には夏月がいる。
残念ながらマルさんには夏月の姿も見えてなさそうだし、声にも反応してなかった。
パパやママでも見えないんだから、相棒さんにも見えないのかも?
そういえば夏月の相棒って、彼氏じゃないならばどんな関係なの?
そして練習場所? なんの練習してるの?
私の知らない事だらけで、面食らってる。
夏月の秘密を勝手に探るというのは、申し訳ない気もするけれど……。
昨夜、夏月がはぐらかしたのも悪いんだからね。
でもね、私はただ知りたかったんだよ、東京で夏月がどんな風に生きてきたのか。
そして、どんな風に過ごしたら、友達が二人しか来ないような葬式になってしまったのか。
そういえば、あの女の子のことを、マルさんは知っているのだろうか?
考えをまとめていると、住宅街にある少し大きなお家の前でマルさんは急に足を止めた。
「ここが俺ん家。で、あっちが練習場所!」
家の中には入らず、家の横を通り大きな庭に案内される。
その庭の端っこにプレハブのような建物があった。
「あれが、俺と夏月の練習場所。あの日も、十八時過ぎまで練習してたんだ」
あの日……、きっとそれは八月五日のこと。
「狭いけど、どうぞ」
プレハブの扉をゆっくり開き、私の方を振り返ったマルさん。
通されたその扉の向こうには、私の知らない不思議な空間が広がっていた。
マルさんは、私が階段を上るのを何度も振り返って待っていてくれる。
私のことを心配して、だけじゃないだろう。
この階段で、夏月が落ちたことを忘れていないからだ。
夏月と同じ顔をした私が、そうならないようにという気づかいだからだ。
階段を上り切り、額の汗を拭い、見渡した先は緩やかなカーブが二手に分かれていた。
「左に行くと俺らの高校で、右に行くと練習場所。つうか、俺の家」
マルさんの家!?
いくらなんでも初対面の人の家に行くのは、どうなんだろう。
二人きりは、やはり……と思ったけれど、夏月もいるし大丈夫、よね?
夏月の顔色を伺ってみたけど、多分気分はよろしくなさそう。
プライベートな部分に私が入るのは、嫌なのかもしれない。
歩みを緩めたマルさんと自然に隣同士になる。
傍から見たら二人だけ、でも私の右には夏月がいる。
残念ながらマルさんには夏月の姿も見えてなさそうだし、声にも反応してなかった。
パパやママでも見えないんだから、相棒さんにも見えないのかも?
そういえば夏月の相棒って、彼氏じゃないならばどんな関係なの?
そして練習場所? なんの練習してるの?
私の知らない事だらけで、面食らってる。
夏月の秘密を勝手に探るというのは、申し訳ない気もするけれど……。
昨夜、夏月がはぐらかしたのも悪いんだからね。
でもね、私はただ知りたかったんだよ、東京で夏月がどんな風に生きてきたのか。
そして、どんな風に過ごしたら、友達が二人しか来ないような葬式になってしまったのか。
そういえば、あの女の子のことを、マルさんは知っているのだろうか?
考えをまとめていると、住宅街にある少し大きなお家の前でマルさんは急に足を止めた。
「ここが俺ん家。で、あっちが練習場所!」
家の中には入らず、家の横を通り大きな庭に案内される。
その庭の端っこにプレハブのような建物があった。
「あれが、俺と夏月の練習場所。あの日も、十八時過ぎまで練習してたんだ」
あの日……、きっとそれは八月五日のこと。
「狭いけど、どうぞ」
プレハブの扉をゆっくり開き、私の方を振り返ったマルさん。
通されたその扉の向こうには、私の知らない不思議な空間が広がっていた。
35
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。
みみぢあん
恋愛
ミレイユの婚約者、オルドリッジ子爵家の長男クレマンは、子供の頃から仲の良い妹のような従妹パトリシアを優先する。 婚約者のミレイユよりもクレマンが従妹を優先するため、学園内でクレマンと従妹の浮気疑惑がうわさになる。
――だが、クレマンが従妹を優先するのは、人には言えない複雑な事情があるからだ。
それを知ったミレイユは婚約破棄するべきか?、婚約を継続するべきか?、悩み続けてミレイユが出した結論は……
※ざまぁ系のお話ではありません。ご注意を😓 まぎらわしくてすみません。
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる