59 / 69
第十三章 全力うさぎ、背中を押してくれた人
13-1
しおりを挟む
『うさぎちゃん、がんばれよ! 決勝で会おうぜ!』
『うわあ、プレッシャーです! でも、頑張ります』
『がんばれ、八組はめちゃくちゃ強いぞ。女子で肩が強いやつもいたから気を付けろ!』
八組に負けた四組の大樹くんの応援にうなずく。
なっちゃん先輩や、明日香先輩の応援も聞こえたけれど会長の声はなくて、少しさびしい。
そうして、この日二度目の試合に臨んだのだけれど。
「よろしくお願いします」
対戦相手の八組、真ん中にいたサツキちゃんが無表情で私を見ていた。
う、怖い、やっぱり怖い。
『ごめん、二度と話しかけたり同じ学校だったなんて言わないから安心して。メールも辞めるから』
あの言葉を思い出して胸が痛む。
吉居先輩にあの後聞いたことは、私の知らないサツキちゃんの六年間だった。
転校すると決まる前から、何度も謝る機会をうかがって、帰り道で私を待っていたこと。
それなのに私はサツキちゃんの顔を見ただけで泣いて逃げてしまうから、謝ることができなかった。
最後の最後まで謝ることができなかったサツキちゃんは、夏休み明けからイジメられたそうだ。
サツキちゃんが、ウイちゃんをイジメたって。
だからウイちゃんは学校に来たくなくて、転校してしまったんだって。
実際に私のことを『赤ちゃん』って呼んだのは、サツキちゃんだ。
でも、それってなんだか違うと思う。
サツキちゃんの言葉にうなずいたのは、他の皆も一緒だったはず。
だけど、サツキちゃんは私を傷つけたことに気づいて謝ろうとしてくれていたのに。
他の人は皆、ただの傍観者だったのに。
小学校の六年間、サツキちゃんに睨まれたらイジメられるよと陰口を叩かれたんだって。
クラス替えしても前のクラスで一緒だった子が、すぐにその噂を広めて、いつも一人ぼっちで。
そのサツキちゃんの姿を想像したら、ほんの少し前、鈴城学園に入学するまでの自分と重なった。
ちゃんと最後までサツキちゃんの声を聞けば良かった。
『うわあ、プレッシャーです! でも、頑張ります』
『がんばれ、八組はめちゃくちゃ強いぞ。女子で肩が強いやつもいたから気を付けろ!』
八組に負けた四組の大樹くんの応援にうなずく。
なっちゃん先輩や、明日香先輩の応援も聞こえたけれど会長の声はなくて、少しさびしい。
そうして、この日二度目の試合に臨んだのだけれど。
「よろしくお願いします」
対戦相手の八組、真ん中にいたサツキちゃんが無表情で私を見ていた。
う、怖い、やっぱり怖い。
『ごめん、二度と話しかけたり同じ学校だったなんて言わないから安心して。メールも辞めるから』
あの言葉を思い出して胸が痛む。
吉居先輩にあの後聞いたことは、私の知らないサツキちゃんの六年間だった。
転校すると決まる前から、何度も謝る機会をうかがって、帰り道で私を待っていたこと。
それなのに私はサツキちゃんの顔を見ただけで泣いて逃げてしまうから、謝ることができなかった。
最後の最後まで謝ることができなかったサツキちゃんは、夏休み明けからイジメられたそうだ。
サツキちゃんが、ウイちゃんをイジメたって。
だからウイちゃんは学校に来たくなくて、転校してしまったんだって。
実際に私のことを『赤ちゃん』って呼んだのは、サツキちゃんだ。
でも、それってなんだか違うと思う。
サツキちゃんの言葉にうなずいたのは、他の皆も一緒だったはず。
だけど、サツキちゃんは私を傷つけたことに気づいて謝ろうとしてくれていたのに。
他の人は皆、ただの傍観者だったのに。
小学校の六年間、サツキちゃんに睨まれたらイジメられるよと陰口を叩かれたんだって。
クラス替えしても前のクラスで一緒だった子が、すぐにその噂を広めて、いつも一人ぼっちで。
そのサツキちゃんの姿を想像したら、ほんの少し前、鈴城学園に入学するまでの自分と重なった。
ちゃんと最後までサツキちゃんの声を聞けば良かった。
44
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
今、この瞬間を走りゆく
佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】
皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!
小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。
「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」
合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──
ひと夏の冒険ファンタジー
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
1000本の薔薇と闇の薬屋
八木愛里
児童書・童話
アルファポリス第1回きずな児童書大賞奨励賞を受賞しました!
イーリスは父親の寿命が約一週間と言われ、運命を変えるべく、ちまたで噂の「なんでも願いをかなえる薬」が置いてある薬屋に行くことを決意する。
その薬屋には、意地悪な店長と優しい少年がいた。
父親の薬をもらおうとしたイーリスだったが、「なんでも願いをかなえる薬」を使うと、使った本人、つまりイーリスが死んでしまうという訳ありな薬だった。
訳ありな薬しか並んでいない薬屋、通称「闇の薬屋」。
薬の瓶を割ってしまったことで、少年スレーの秘密を知り、イーリスは店番を手伝うことになってしまう。
児童文学風ダークファンタジー
5万文字程度の中編
【登場人物の紹介】
・イーリス……13才。ドジでいつも行動が裏目に出る。可憐に見えるが心は強い。B型。
・シヴァン……16才。通称「闇の薬屋」の店長。手段を選ばず強引なところがある。A型。
・スレー……見た目は12才くらい。薬屋のお手伝いの少年。柔らかい雰囲気で、どこか大人びている。O型。
・ロマニオ……17才。甘いマスクでマダムに人気。AB型。
・フクロウのクーちゃん……無表情が普通の看板マスコット。
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる