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第八章 泣きうさぎ
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「そういう子だって思ってたんだって。本人も話しかけてこないから、一人の方が好きなんだろうって。休み時間には、クラスの男の子たちとサッカーをするわけでもなく、教室の片隅で本を読んでいるような子だったって。だから、誰も話しかけないでいたんだってさ」
教室の片隅で、本を読んでいる小学校の頃の会長。
今、一人一人の生徒を友達だといい、学園を大事に思っている会長とはどうしても違う人に感じてしまう。
「だって、会長が言ってたじゃないですか。友達ができないなら、生徒会室まで来てくださいって。会長が友達になってくれるって」
あんなに明るい笑顔で言ってたもん。
友達が一人もいない人がそんなこと言えるわけは――。
「あの挨拶は、なっちゃん先輩が、私達の入学式の時に話してくれたことと少し似てるの」
「え?」
「なっちゃん先輩の挨拶は、こうよ。『私が、あなた達一年生の最初の友達になります。ここにいる全員が、今から私の友達です。悩み事も、うれしいこと、楽しいこと、話しに生徒会室に来てくれませんか? 今日からずっとお待ちしてます。生徒会書記になってくれる子も二名、お待ちしてます。あ、一緒に活動できたら、親友になれちゃうかもしれません! 親友も募集してます』ってね」
ああ、確かに、似てる。
会長の挨拶の中に、なっちゃん先輩の挨拶が重なる。
「面白い人だなって私も思ったの。それで私も生徒会に興味を持って、やってみようかな、って。で、その日の放課後、生徒会室のドアをノックしようとしたら、声が聞こえちゃったんだよね。相原くんとなっちゃん先輩の。立ち聞きするつもりはなかったんだけど」
ペロッと舌を出して申し訳なさそうな顔をした明日香先輩は。
「俺の友達第一号は、生徒会長です。だから、もっと仲良くなりたいです、親友になりたいですって。相原くん、声がふるえてた、多分泣いてたんじゃないかな。なっちゃん先輩がその時どんな顔をしていたかはわからないけど、やさしい声が聞こえたの。『いいよ、ぜひぜひ親友になりましょう』って」
『入学早々、書記やりたいって立候補するやつ、俺以外にいたとは』
会長が私に言ったあの意味がようやくわかった気がする。
教室の片隅で、本を読んでいる小学校の頃の会長。
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あんなに明るい笑顔で言ってたもん。
友達が一人もいない人がそんなこと言えるわけは――。
「あの挨拶は、なっちゃん先輩が、私達の入学式の時に話してくれたことと少し似てるの」
「え?」
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ああ、確かに、似てる。
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