【完結】だからウサギは恋をした

東 里胡

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第四章 うさぎパパ、おかえりなさい

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 玄関前で立ち止まり、全てを忘れるように首をふる。
 違う、私はあの頃の自分ではない。今が楽しくて、幸せなんだ。
 ぺしっと気合いを入れるようにして顔をあげ、玄関ドアに手をかけたら、鍵がかかっていない。
 ママってば、鍵かけ忘れたのかな? そっとドアを引いて中を覗いたら。

「おかえり、卯依。久しぶりだね!」

 私を待ち構えていたらしいパパの笑顔があって、ビックリしてただいまを言い忘れてしまった。

「なんで!? パパ、今日帰ってきたの?」
「うん、本社で打ち合わせがあってね! また明日すぐに、九州に戻らなければならないけど」
「ええ? もっとゆっくりしてってよ~! パパに話したいこといっぱいあるんだもん。あ、私ね、今生徒会書記をやっててね」
「ママから聞いてるよ。学校は? 楽しい? 聞くまでもないか、その笑顔を見れば」
「うん、楽しい! 毎日とっても楽しいよ。友達もできたんだ」

 私の返事にパパは何度も何度も嬉しそうに目を細めてうなずいている。
 そうだよね、パパが知ってる私は、今と違ってたもんね。

「パパも卯依もいつまでも玄関にいないで。リビングで話せばいいじゃない。パパが九州から美味しいお土産買ってきてくれたのよ、三人で食べましょう」

 ウサギのアイを抱っこしたママが私とパパを迎えに来る。

「はーい」
「卯依は手を洗ってからね」
「待っててね、二人ともまだ食べちゃイヤだよ」

 あわてて、手を洗いながらさっきのパパの顔を思い出す。
 私の話、喜んでくれてたよね。安心してくれてるね。
 生徒会だけじゃなく、クラスでもお友達ができたんだよ、そのお話もしたらもっと嬉しいかもしれない。
 あの時、鈴城学園を受験して本当に良かった。
 パパとは離ればなれになっちゃったのは寂しいけれど……。
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