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第一章 うさぎは何見て跳ねるのか

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「今日って、なんの日だっけ?」
「わかんない」

 なんだ、大樹くんもわかんないのか。
 私の気持ちが急いでいるからだろうけど、大樹くんはいつも通りゆっくりと歩き始めようとしてる。

「ねえ、急ごうよ、大樹くん! 会長が待ってるよ」
「あ、おい、廊下は走っちゃダメだって」

 大樹くんの声を置いてきぼりにしながら、二段飛ばしで階段を下る。
 だって、会長が私を待ってるんだもん。名指しで呼び出しちゃうくらい、待っているんだもん、足取りだって軽くなる。
 制服のベージュ色のジャケットをひるがえし、緑色のスカートのすそも、ツインテールといっしょにピョンピョンはねあがる。
 一階にたどりついて廊下を生徒会室に向かって、スキップしていたら。

「おい、高梨! 廊下を走るな」
「は、はい!」

 先生に怒られたのかとビクンと背筋を伸ばして立ち止まり振り向くと、副会長の吉居先輩がクスクスと笑っていた。
 そこに大樹くんも、ようやく追いついてきた。

「また跳ねてたね、うさぎちゃん」
「吉居先輩、ビックリさせないでください! この間、担任にめちゃくちゃ怒られたばかりなんです。階段を跳ぶなって」
「それは、うさぎちゃんが悪いよね。仕方がない」

 楽しそうに目を細めた吉居先輩に、私も確かにと反省しながらうなずいた。
 吉居先輩は、アイドルみたいなキレイな顔立ちで笑った。
 年は一つしか違わないのに、すごく大人な感じがする人。
 未来ちゃんも『副会長ってめっちゃかっこいいよね!』って言ってたし、ファンが多いと聞くからモテてるみたいだ。

「ちゃんと考えてきた? うさぎちゃんも大樹も」
「え?」
「ほら、昨日言ってたじゃない? 二人とも忘れてるね?」

 大樹くんと二人そろって首をかしげたら、苦笑いした吉居先輩が、先に生徒会室のドアをノックし内側へとドアを押し開けた。
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