魔法少女はまだ翔べない

東 里胡

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七月一日金曜日 晴天「優しさ日和」

7/1②

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 ぼんやり、キラとノビルが遊んでいる姿を砂浜に座って見ていた。
 その視線に気づかれたのか、キラが私の方に走ってきてフリスビーを差し出してくる。
 
「キラリも投げてみるか?」
「キラ、私さ」
「うん?」
「ボールとか物を投げるのは苦手なんだ」
「嘘だろ?」
「なにが?」
「だって、お前すげえじゃん。足だって速いし頭もいいし、なんでもできるって思ってたんだけど」
「なんでもって! できるわけないじゃん! 足はともかくとして、勉強はちゃんとしてたもん。天才じゃあない」
「ちょっと安心した、ヤバイ、天才きたって思ってて。もしかしたら全部敵わねえかもって。だから、俺今回の期末ほどめっちゃ勉強したことなかった」

 私が以前キラに対して思っていたことと、似ているから何となく安心してしまう。

「キラこそ、苦手なものなんかないんじゃないの?」
「ある、すっごい、ある!!」
「なに?」

 う~んと困ったような顔をして、私の隣に腰かけたキラは頭をガシガシとかいて。

「言うなよ? うるさい女子」
「え!? 私?」
「いや、お前は平気。あと、カノンの口うるさいのも平気。そういうんじゃなくって、アンみたいな感じのが苦手。アイツらって、なんか俺らの方見てコソコソ内緒話したりするじゃん。んで、なにかつうとキャーキャーうるせえし?」

 ああ、それは多分、アンちゃんはキラのことが好きだからで、とは絶対に言ってはいけない。
 せっかく仲直りしたばかり、そんなことしたら新たな火種を生んでしまう。
 アンちゃんの弁明をしてあげたいところだけれど、それは一旦心に留めおきながら。

「でも、女子って少なからずそういう感じだと思うよ。私だって、小学生まではそうだったかもしれない」
「へ? 中学で急に変わったわけ?」
「いや、そういうわけじゃなくって。私が通ってた中学校ってさ、中高一貫の進学校だったの。だから、大体の人が初めて会う人同士で、小学校とは勝手が違うから、皆手探り状態。話こそすれど、距離はそんなに近くないというか」

 スマホの中には、一応まだ所属をしている元の中学のクラスグループがある。
 だけど、それは四月の途中で会話が終了した。
 一通り皆の自己紹介がすんだからだ。
 私が一旦転校するって挨拶した日も、誰からも何のメッセージも入ってこなかった。
 もちろん、学校では『キラリちゃん、向こうの学校でも頑張って』とか『また二学期に会おうね』など、声をかけてくれた人はいた。
 でも、小学校の卒業式の時みたいに『キラリと同じ中学校に行けなくて寂しい』と泣いちゃう子は誰もいなかった。
 その小学校の時の友達だって、卒業して二ヶ月も経つと連絡が無くなった。
 皆でキャーキャー毎日楽しかったのにな。
 あんなに仲良かったはずなのに。
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