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六月二十八日火曜日 虹色の雨「おばあちゃんの正体」
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「なんと、雷を落とす魔法だったんだよ……、本人もだけど、私もおじいちゃんもどうしたらいいのかわからなくてね。なにせ、コントロールができないんだ。怒ると家の中の電化製品の何かが壊れる。さすがに、おじいちゃんが大好きだった大相撲を見ている時にテレビを壊された時には、家中がお通夜のように静まり返ったさ。その翌日だったかね、希帆の方から、泣きながら魔女使いを辞めたいと。あまりに泣きじゃくるからね、可哀そうになって。あの子の能力を石の中に封印したんだ。十三歳、今のキラリと同じ頃だよ。希帆が実質魔女修行をしたのは、ほんの二年ほどだったろうねえ」
おいで、と歩き出すおばあちゃんの後ろをついていくと、おじいちゃんの仏壇の前に座る。
「これが希帆の力を封印した石さ。あ、素手で触っちゃダメだよ。感電するから」
仏壇の引き出しを開けると、宝箱みたいな箱があって、おばあちゃんはそれを私の前に置くと開けた。
「う、わー……、本当に雷、みたい」
透明な水晶みたいな手のひらほどの石の中では、紫色の小さな雷のようなものが時々水晶の外にまで放出しそうな勢いで動いていた。
これが、ママが持っていた魔法の力……。
「うまくコントロールできりゃ、今頃立派な魔女だったろうにね」
ママもきっとショックだったんだと思う。
だって魔法って、もっとワクワクする気がするもん。
「キラリの特技魔法は生き物と話せることみたいだね、平和そうな魔法で一安心だ。それに、何年修行したって、私はその魔法を習得できなかったからね、羨ましい力だよ。あ、ノビルには話しかけてみたかい?」
チラリと中庭のノビルに目を向けたら、しっかり私の方を見ていた。
見張られているようだ。
「それが、ね? 話しかけたんだけど、ノビルとだけは話せなかったの」
嘘なの、おばあちゃん、ごめんなさい。
でも、ノビルが絶対に言うなって……、あれ? でも、なんでおばあちゃんに言っちゃダメなのかな?
「そう、何でだろうねえ? キラリのような魔法は、焦点をあてれば、どんな生き物とも話せるはずって。魔法書には、そう書いてあったのに」
「魔法書!?」
身を乗り出した私に、おばあちゃんはクックックと笑った。
「随分、興味津々だね。キラリも修行してみるかい?」
私は熱に浮かされたように、いや、実際に浮かされてたのだけれど、ブンブンっと何度も首を縦に振った。
「でも、まあ希帆に反対されるのがオチだろうけどね」
「どうして!?」
「希帆にキラリに魔法のことを聞いた時にね、釘を刺されたんだ」
「え?」
「希帆は『キラリには何も言っていないし、今までもこれからも言うつもりはない。魔法の力を封印した自分が生んだ子だから、キラリにも、そんな力はないはずだ。だから絶対にキラリには言わないでほしい』って、そう言われてたんだよ。普通の子として育てようと思ってたんだろうさ」
さて、どうしようね、とちっとも困って無さそうに笑うおばあちゃん。
それどころか、なんだかワクワクしているようにも見える。
「ねえ、おばあちゃん。ママには内緒で、じゃダメかなあ?」
「……内緒なら、いいんじゃないかね? ここにいる間はさ」
ニヤリと笑ったおばあちゃんに私も笑う。
「修行は厳しいよ? なんたって体力勝負だ、大丈夫かい?」
「はいっ!」
まるで部活の先輩後輩みたいで、私は正座をしてびしっと返事をしたのだけれど。
「だったら、まずは風邪を治すんだね! 布団に戻ってさっさと眠って体力回復させておいで」
「でも、」
もっともっと魔法の話が聞きたくて部屋に戻れずにいる私に。
「熱が下がったら、魔法書でも読ませてあげようかねえ」
もったいぶった笑みに私はハッとして部屋に戻ろうと立ち上がる。
「おやすみなさい! 絶対、絶対ね? 約束だよ、おばあちゃん!」
「はい、おやすみ」
私の様子におばあちゃんは笑いを堪えていた気がする。
布団に潜った後で、自分の体が相当熱いことに気づいた。
今度は興奮で熱が上がってしまったのだろう。
枕もとにあるティッシュを一枚つかみ、宙に浮くように念じてみる。
もちろん、ビクともしないけれど、いずれこういったことも魔法でできるようになるのかな?
そう思ったら、またどんどんヒートアップしちゃって。
結局、私の熱がちゃんと下がったのは木曜日のことだった。
おいで、と歩き出すおばあちゃんの後ろをついていくと、おじいちゃんの仏壇の前に座る。
「これが希帆の力を封印した石さ。あ、素手で触っちゃダメだよ。感電するから」
仏壇の引き出しを開けると、宝箱みたいな箱があって、おばあちゃんはそれを私の前に置くと開けた。
「う、わー……、本当に雷、みたい」
透明な水晶みたいな手のひらほどの石の中では、紫色の小さな雷のようなものが時々水晶の外にまで放出しそうな勢いで動いていた。
これが、ママが持っていた魔法の力……。
「うまくコントロールできりゃ、今頃立派な魔女だったろうにね」
ママもきっとショックだったんだと思う。
だって魔法って、もっとワクワクする気がするもん。
「キラリの特技魔法は生き物と話せることみたいだね、平和そうな魔法で一安心だ。それに、何年修行したって、私はその魔法を習得できなかったからね、羨ましい力だよ。あ、ノビルには話しかけてみたかい?」
チラリと中庭のノビルに目を向けたら、しっかり私の方を見ていた。
見張られているようだ。
「それが、ね? 話しかけたんだけど、ノビルとだけは話せなかったの」
嘘なの、おばあちゃん、ごめんなさい。
でも、ノビルが絶対に言うなって……、あれ? でも、なんでおばあちゃんに言っちゃダメなのかな?
「そう、何でだろうねえ? キラリのような魔法は、焦点をあてれば、どんな生き物とも話せるはずって。魔法書には、そう書いてあったのに」
「魔法書!?」
身を乗り出した私に、おばあちゃんはクックックと笑った。
「随分、興味津々だね。キラリも修行してみるかい?」
私は熱に浮かされたように、いや、実際に浮かされてたのだけれど、ブンブンっと何度も首を縦に振った。
「でも、まあ希帆に反対されるのがオチだろうけどね」
「どうして!?」
「希帆にキラリに魔法のことを聞いた時にね、釘を刺されたんだ」
「え?」
「希帆は『キラリには何も言っていないし、今までもこれからも言うつもりはない。魔法の力を封印した自分が生んだ子だから、キラリにも、そんな力はないはずだ。だから絶対にキラリには言わないでほしい』って、そう言われてたんだよ。普通の子として育てようと思ってたんだろうさ」
さて、どうしようね、とちっとも困って無さそうに笑うおばあちゃん。
それどころか、なんだかワクワクしているようにも見える。
「ねえ、おばあちゃん。ママには内緒で、じゃダメかなあ?」
「……内緒なら、いいんじゃないかね? ここにいる間はさ」
ニヤリと笑ったおばあちゃんに私も笑う。
「修行は厳しいよ? なんたって体力勝負だ、大丈夫かい?」
「はいっ!」
まるで部活の先輩後輩みたいで、私は正座をしてびしっと返事をしたのだけれど。
「だったら、まずは風邪を治すんだね! 布団に戻ってさっさと眠って体力回復させておいで」
「でも、」
もっともっと魔法の話が聞きたくて部屋に戻れずにいる私に。
「熱が下がったら、魔法書でも読ませてあげようかねえ」
もったいぶった笑みに私はハッとして部屋に戻ろうと立ち上がる。
「おやすみなさい! 絶対、絶対ね? 約束だよ、おばあちゃん!」
「はい、おやすみ」
私の様子におばあちゃんは笑いを堪えていた気がする。
布団に潜った後で、自分の体が相当熱いことに気づいた。
今度は興奮で熱が上がってしまったのだろう。
枕もとにあるティッシュを一枚つかみ、宙に浮くように念じてみる。
もちろん、ビクともしないけれど、いずれこういったことも魔法でできるようになるのかな?
そう思ったら、またどんどんヒートアップしちゃって。
結局、私の熱がちゃんと下がったのは木曜日のことだった。
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