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3年目
今年も君と【β×Ω】
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今年も新しい年が明けた。
前年までと違うのは、全寮制の高校を卒業して自分だけの住み処を得たこと。辺境の地にある高校の寮以外にも、恋人を引き込む場所が出来たこと。
「あけましておめでとう」
大学に進学した仁科儀冬弥の部屋にやって来たのは、高校時代から付き合っている恋人の行家春真だ。
外でデートをしていた時に見つけて贈った服と靴をまとい、二人で作った揃いの首輪を着けて。どこか落ち着かない様子で立っていた玄関から室内へ入ってくる。
「すぐに分かったか?」
「やっぱり建物が立派すぎて一回スルーした」
今後のために一人暮らしがしたいと願った冬弥だったけれど。仁科儀家の跡取りであることを理由に、一般募集をしている物件は許可されなかったのである。
住まうことになったのはオートロックにコンシェルジュ駐在の、独身向けというには少し豪勢なマンション。これでもまだ提示されたものの中から、ネットで募集を見ていた物件に近いものを選んだ方だ。
「相変わらずか」
一人きょろきょろしながら周りをうろついていたのだろうかと一瞬考え、思わず笑ってしまった。
そんな冬弥に、春真はじとりとした視線を向ける。
「だって夏休みに来ただけだし。しかも一晩だったし。そんなすぐ慣れない」
「それもそうだな」
高校を卒業した去年は春真を部屋に連れ込んで夏休みを過ごすつもりだったけれど。観覧席で花火を見るために遠出をしたり、その流れで仁科儀の家に連行されたせいでゆっくりは出来なかった。
今年こそはと意気込んで、家族の集まりもそこそこに年始から恋人を呼び寄せたのである。
「すげ、ベッドでかいな。冬弥は小さいのに」
若干腹の立つセリフが聞こえて声のした方を見る。
いつの間にか寝室に入っていた春真に、とくりと心臓が少し大きく脈打った。
あの部屋は高校時代と同じルームフレグランスを置いて、ベッドの上にわざと自分の服を撒いてある。流れるようにその中へ潜り込んだ春真は、案の定その身に服を被せ始めた。
恐らく無意識なんだろう。来て早々に巣を作っている恋人に、そっと近付いて覆い被さった。
「わっ!? とーや、なに……んっ」
振り返った顔に口付けて、仰向けにした春真をシーツに押し付ける。
ここにきてようやく目論見に気付いたらしい。ジタバタと暴れ始めたけれど、先程身に巻きつけていた服が絡み付いて動きにくそうだ。
まさかの自滅で真っ赤になって焦る恋人に、こみ上げてくる笑いが止まらない。
「わっ、笑うなーっっ! ちょっ、いま昼だぞ! 真っ昼間から何してんだよ!」
「姫初め。……いや、男同士は菊初めだったか」
「な、何だよそンンっ!」
ぎゃんぎゃん文句を言うくせに。キスをした直後の顔はどこかとろんとした視線を向けてくる。
嗚呼、この天の邪鬼さが可愛くて仕方がない。
「新年の一発目の事だ。昼にやるのが伝統らしいぞ?」
たまたまネットで出てきただけだから、どこまで本当かは知らないが。都合のいい行事は徹底的に使わせてもらおう。
そんな思考が透けて見えたのか、我に返ったらしい春真はキッと睨んでくる。顔は赤いままだけれど。
「勝手に変な伝統作んな! クリスマスにホテルで沢山しただろ! とーやの誕生日に頑張っただろオレ!!」
……確かに、クリスマスはデートと夕食の後にホテルへ直行したな。
誕生日だからと一晩中、春真に触れて抱いて。夜が明けても手放しがたくて、予定より長めに部屋を押さえておいた自分の周到さを心から賞賛したものだ。
しかし。
「もう一週間経ってる」
学生時代は週に二回触れていた。二年近くそんな生活をしていたのに、今は物理的な距離のせいで週に一回以下だ。
この機会を、逃せるはずもない。
「す、すけべ!」
「そのとおりだ」
「否定しろよ! っ、う、ぁ……ッ!」
否定もなにも、恐らく春真の言うとおりなのだろう。
だがそれがどうした。可愛い恋人に触れたいのだ。助兵衛で何が悪い。
昔ならば人の評判を気にして控えていたかもしれないけれど。紆余曲折を経て完全に開き直ってしまった今の冬弥には、焼け石に水でしかなかった。
「はるま」
口を耳元に寄せて囁くと、くたりと春真の体から力が抜ける。
「っ、う、ぅうーっ……どすけべ……手加減しろよな……」
「分かった。ゆっくり触る」
観念したらしい恋人の瞳は少し潤んでいて、頬は熟れたリンゴのように真っ赤になっていた。服の下の肌に触れるとひくんと揺れ、手の平を滑らせれば悩ましげな吐息がこぼれる。
何だかんだで、その気になっていたらしい。そっと唇を重ねると、春真の腕が背中に回って抱きついてきた。
――約束したとおり、徹底的に優しく触れてみたけれど。
「じ……っ、焦らしすぎなんだよバカとーやぁっ!!」
出てきたのがこの発言なのだから理不尽である。
けれどそんなワガママすら可愛い。焦らすなという恋人様からの要求に、冬弥はこれ幸いと手を早めて。
じっくりと時間をかけ、何度も何度も美味しく頂いたのだった。
前年までと違うのは、全寮制の高校を卒業して自分だけの住み処を得たこと。辺境の地にある高校の寮以外にも、恋人を引き込む場所が出来たこと。
「あけましておめでとう」
大学に進学した仁科儀冬弥の部屋にやって来たのは、高校時代から付き合っている恋人の行家春真だ。
外でデートをしていた時に見つけて贈った服と靴をまとい、二人で作った揃いの首輪を着けて。どこか落ち着かない様子で立っていた玄関から室内へ入ってくる。
「すぐに分かったか?」
「やっぱり建物が立派すぎて一回スルーした」
今後のために一人暮らしがしたいと願った冬弥だったけれど。仁科儀家の跡取りであることを理由に、一般募集をしている物件は許可されなかったのである。
住まうことになったのはオートロックにコンシェルジュ駐在の、独身向けというには少し豪勢なマンション。これでもまだ提示されたものの中から、ネットで募集を見ていた物件に近いものを選んだ方だ。
「相変わらずか」
一人きょろきょろしながら周りをうろついていたのだろうかと一瞬考え、思わず笑ってしまった。
そんな冬弥に、春真はじとりとした視線を向ける。
「だって夏休みに来ただけだし。しかも一晩だったし。そんなすぐ慣れない」
「それもそうだな」
高校を卒業した去年は春真を部屋に連れ込んで夏休みを過ごすつもりだったけれど。観覧席で花火を見るために遠出をしたり、その流れで仁科儀の家に連行されたせいでゆっくりは出来なかった。
今年こそはと意気込んで、家族の集まりもそこそこに年始から恋人を呼び寄せたのである。
「すげ、ベッドでかいな。冬弥は小さいのに」
若干腹の立つセリフが聞こえて声のした方を見る。
いつの間にか寝室に入っていた春真に、とくりと心臓が少し大きく脈打った。
あの部屋は高校時代と同じルームフレグランスを置いて、ベッドの上にわざと自分の服を撒いてある。流れるようにその中へ潜り込んだ春真は、案の定その身に服を被せ始めた。
恐らく無意識なんだろう。来て早々に巣を作っている恋人に、そっと近付いて覆い被さった。
「わっ!? とーや、なに……んっ」
振り返った顔に口付けて、仰向けにした春真をシーツに押し付ける。
ここにきてようやく目論見に気付いたらしい。ジタバタと暴れ始めたけれど、先程身に巻きつけていた服が絡み付いて動きにくそうだ。
まさかの自滅で真っ赤になって焦る恋人に、こみ上げてくる笑いが止まらない。
「わっ、笑うなーっっ! ちょっ、いま昼だぞ! 真っ昼間から何してんだよ!」
「姫初め。……いや、男同士は菊初めだったか」
「な、何だよそンンっ!」
ぎゃんぎゃん文句を言うくせに。キスをした直後の顔はどこかとろんとした視線を向けてくる。
嗚呼、この天の邪鬼さが可愛くて仕方がない。
「新年の一発目の事だ。昼にやるのが伝統らしいぞ?」
たまたまネットで出てきただけだから、どこまで本当かは知らないが。都合のいい行事は徹底的に使わせてもらおう。
そんな思考が透けて見えたのか、我に返ったらしい春真はキッと睨んでくる。顔は赤いままだけれど。
「勝手に変な伝統作んな! クリスマスにホテルで沢山しただろ! とーやの誕生日に頑張っただろオレ!!」
……確かに、クリスマスはデートと夕食の後にホテルへ直行したな。
誕生日だからと一晩中、春真に触れて抱いて。夜が明けても手放しがたくて、予定より長めに部屋を押さえておいた自分の周到さを心から賞賛したものだ。
しかし。
「もう一週間経ってる」
学生時代は週に二回触れていた。二年近くそんな生活をしていたのに、今は物理的な距離のせいで週に一回以下だ。
この機会を、逃せるはずもない。
「す、すけべ!」
「そのとおりだ」
「否定しろよ! っ、う、ぁ……ッ!」
否定もなにも、恐らく春真の言うとおりなのだろう。
だがそれがどうした。可愛い恋人に触れたいのだ。助兵衛で何が悪い。
昔ならば人の評判を気にして控えていたかもしれないけれど。紆余曲折を経て完全に開き直ってしまった今の冬弥には、焼け石に水でしかなかった。
「はるま」
口を耳元に寄せて囁くと、くたりと春真の体から力が抜ける。
「っ、う、ぅうーっ……どすけべ……手加減しろよな……」
「分かった。ゆっくり触る」
観念したらしい恋人の瞳は少し潤んでいて、頬は熟れたリンゴのように真っ赤になっていた。服の下の肌に触れるとひくんと揺れ、手の平を滑らせれば悩ましげな吐息がこぼれる。
何だかんだで、その気になっていたらしい。そっと唇を重ねると、春真の腕が背中に回って抱きついてきた。
――約束したとおり、徹底的に優しく触れてみたけれど。
「じ……っ、焦らしすぎなんだよバカとーやぁっ!!」
出てきたのがこの発言なのだから理不尽である。
けれどそんなワガママすら可愛い。焦らすなという恋人様からの要求に、冬弥はこれ幸いと手を早めて。
じっくりと時間をかけ、何度も何度も美味しく頂いたのだった。
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