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落下物
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その日、激しい振動があって飛び起きた。朝の五時の事であった。
隣近所のおばさんやおじさん、町内会長までやって来た。
中央にある児童公園の真ん中に、ミサイルが突き刺さっていた。
もしかすると、これって。
と、思って私が声を上げようとすると、町内会長が言った。
「不発弾なんだろうな、これは。自分の親父が父親の頃、落ちて来て、しばらく、そこにあったそうだ」
「で、どうしたんですか」
「うん、うちの親父に聞こうと思っていたが、その前に、一昨年、逝ってしまった。聞いとけば、良かったな」
「とありあえず、どうします?」
「まぁ、この場合、警察とその手の専門家、自衛隊を呼んで処分してもらうしかないだろうな。あ。すまんけれど、携帯で連絡してくれるかい」
と、町内会長に頼まれてしまった。
五分後に警邏中の警官がやって来て、ミサイルを確認すると、
「みなさん、ここは危険です。みなさん、家族を連れて避難してください」
と、言った。
「それは、言われなくてするけれど、これはミサイルだよね」
「誰が見てもミサイルでしょう。ここの所、頻発している隣国のミサイルが間違って、内地に落ちて来たんでしょう」
「爆発しないんですか?」
「本官には判断しかねますが、危険です。直ちに、避難してください」
気づけば、警官が連絡したのであろう、消防車やパトカーが中央の公園に集結していた。
「やっぱり、あれかい。ほら、あの核弾頭が付いているあれかい?」
と、町内会長は呑気に聞いた。
「それは判断しかねます。不発弾ある事は確かです」
と、警官は繰り返した。
「すみませんが、避難してもらえませんか?」
「あぁ、そうだね。避難しなくちゃいけないね。で、何処まで、避難しなくちゃいけないのかね」
「それは本官には判りかねます」
その警官と町内会長との頓珍漢なやり取りを聞きながら、何処まで逃げれば大丈夫だろうと計算し始めた。
もしかして、これが核弾頭を積んだミサイルである場合、あの大きさだと、広島サイズだとして、半径500メートルから一キロは爆心地になったとスマホでウィキペディアで調べた。
バイクで飛ばして、逃げれば何とかなるかもしれない。
家に帰ると、出勤前の父親と朝飯の用意をしていた母親、大学に行く前の姉に事の事情を説明した。
「うーん、それはえらい事になったな。ちょっと、会社に電話かけて、欠勤の届けを出して来る」
「姉さん、車あったよね。渋滞にならないうちに、逃げなくちゃ」
「何処に逃げるのよ」
「何処でも良いよ。ここから遠くへ。はやく」
「お弁当の用意は出来たわよ」
と、母親はおにぎりを握って、弁当を作っていたらしい。
何を呑気な事をしているんだと思ったが、朝の振動を地震と思い込んでいたから、仕方ない。
父親と母親は姉の運転する車に乗って、出かける準備をした。
「僕はバイクで行くから。落ち合うのは父さんの実家の」
「ああ。判った、判った。兄貴が継いだ家だな。」
姉が車を走らせた頃、まだ、パニックは街中に広がっておらず、スームズに市街を出られたらしい。
自分も父親の実家、伯父の家に着いたのは夕方前だった。
テレビをつけると、自衛隊の爆発処理班がミサイルを処理すべく公園周りに規制線を張った映像と血走った眼でがなり立てるレポーターを映し出していた。
「どうやら、今回は『積んでいなかった』みたいだな」
と、伯父は焼酎を父親に薦めながら言った。
「みたいだね、兄さん。いや、今回は迷惑をかけて」
「こんな。ご時世だ。お互い様だよ」
酒盛りもは一晩中、盛り上がった。
知らず知らずの内に、進められた焼酎を飲んで、自分も寝てしまった。
明け方、激しい振動があって、目が覚めた。
裏山に、ミサイルが落ちらしいが、今度も爆発しなかったらしい。
もしかすると、これって。
ふらつきながら、バイクで逃げる準備をした。
姉の車には今度は伯父の家の家族が乗っていたかが、あれでは人数過剰だろう。
二日酔いの脱力感の中、バイクを走らせた。
かなり遠くに来た時に、サービスエリアで伯父の家の方を見ると、凄い爆発音と雲が上がった。
今度はアタリを引いたみたいだった。
「あー」
と、伯父は声を上げたが、生きているだけマシではないか。
「まぁ、兄さん、とりあえずは一杯」
と、父親は伯父の家から持って来た焼酎で酒盛り始めた。
隣近所のおばさんやおじさん、町内会長までやって来た。
中央にある児童公園の真ん中に、ミサイルが突き刺さっていた。
もしかすると、これって。
と、思って私が声を上げようとすると、町内会長が言った。
「不発弾なんだろうな、これは。自分の親父が父親の頃、落ちて来て、しばらく、そこにあったそうだ」
「で、どうしたんですか」
「うん、うちの親父に聞こうと思っていたが、その前に、一昨年、逝ってしまった。聞いとけば、良かったな」
「とありあえず、どうします?」
「まぁ、この場合、警察とその手の専門家、自衛隊を呼んで処分してもらうしかないだろうな。あ。すまんけれど、携帯で連絡してくれるかい」
と、町内会長に頼まれてしまった。
五分後に警邏中の警官がやって来て、ミサイルを確認すると、
「みなさん、ここは危険です。みなさん、家族を連れて避難してください」
と、言った。
「それは、言われなくてするけれど、これはミサイルだよね」
「誰が見てもミサイルでしょう。ここの所、頻発している隣国のミサイルが間違って、内地に落ちて来たんでしょう」
「爆発しないんですか?」
「本官には判断しかねますが、危険です。直ちに、避難してください」
気づけば、警官が連絡したのであろう、消防車やパトカーが中央の公園に集結していた。
「やっぱり、あれかい。ほら、あの核弾頭が付いているあれかい?」
と、町内会長は呑気に聞いた。
「それは判断しかねます。不発弾ある事は確かです」
と、警官は繰り返した。
「すみませんが、避難してもらえませんか?」
「あぁ、そうだね。避難しなくちゃいけないね。で、何処まで、避難しなくちゃいけないのかね」
「それは本官には判りかねます」
その警官と町内会長との頓珍漢なやり取りを聞きながら、何処まで逃げれば大丈夫だろうと計算し始めた。
もしかして、これが核弾頭を積んだミサイルである場合、あの大きさだと、広島サイズだとして、半径500メートルから一キロは爆心地になったとスマホでウィキペディアで調べた。
バイクで飛ばして、逃げれば何とかなるかもしれない。
家に帰ると、出勤前の父親と朝飯の用意をしていた母親、大学に行く前の姉に事の事情を説明した。
「うーん、それはえらい事になったな。ちょっと、会社に電話かけて、欠勤の届けを出して来る」
「姉さん、車あったよね。渋滞にならないうちに、逃げなくちゃ」
「何処に逃げるのよ」
「何処でも良いよ。ここから遠くへ。はやく」
「お弁当の用意は出来たわよ」
と、母親はおにぎりを握って、弁当を作っていたらしい。
何を呑気な事をしているんだと思ったが、朝の振動を地震と思い込んでいたから、仕方ない。
父親と母親は姉の運転する車に乗って、出かける準備をした。
「僕はバイクで行くから。落ち合うのは父さんの実家の」
「ああ。判った、判った。兄貴が継いだ家だな。」
姉が車を走らせた頃、まだ、パニックは街中に広がっておらず、スームズに市街を出られたらしい。
自分も父親の実家、伯父の家に着いたのは夕方前だった。
テレビをつけると、自衛隊の爆発処理班がミサイルを処理すべく公園周りに規制線を張った映像と血走った眼でがなり立てるレポーターを映し出していた。
「どうやら、今回は『積んでいなかった』みたいだな」
と、伯父は焼酎を父親に薦めながら言った。
「みたいだね、兄さん。いや、今回は迷惑をかけて」
「こんな。ご時世だ。お互い様だよ」
酒盛りもは一晩中、盛り上がった。
知らず知らずの内に、進められた焼酎を飲んで、自分も寝てしまった。
明け方、激しい振動があって、目が覚めた。
裏山に、ミサイルが落ちらしいが、今度も爆発しなかったらしい。
もしかすると、これって。
ふらつきながら、バイクで逃げる準備をした。
姉の車には今度は伯父の家の家族が乗っていたかが、あれでは人数過剰だろう。
二日酔いの脱力感の中、バイクを走らせた。
かなり遠くに来た時に、サービスエリアで伯父の家の方を見ると、凄い爆発音と雲が上がった。
今度はアタリを引いたみたいだった。
「あー」
と、伯父は声を上げたが、生きているだけマシではないか。
「まぁ、兄さん、とりあえずは一杯」
と、父親は伯父の家から持って来た焼酎で酒盛り始めた。
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