暴発

まるさんかくしかく

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暴発

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 絵巳子が物体の中のイメージを頭の中で爆発させると、その物体が中から暴発させることが判ったのは、小学校の三年生の時だった。

 ただ、自覚的なものではなかった。

 母は自分が幼い時に離婚したが、小学校一年生の時に再婚、新しい父親が出来た。最初は、親切な人だと思っていたら、ある時、母がいない時間、部屋に入ってくると、勉強机で勉強している絵巳子を後ろから抱きしめて来た。

 ただのスキンシップだと思うとしていたが鼻息が荒い。やがて、絵巳子の頬に唇を這わせてきた。

 気持ち悪い虫が這うような感触だった。義父の血管が感じられ、幼い身体が熱くなってくる。

 やがて、父親の顔が正面に来ると、絵巳子の唇に自分の唇を這わせようしていた。
 その時、絵巳子の頭の中に父親の頭の中のイメージが入って来て、弾けてしまった。

 その瞬間、義父の頭が内側から、スイカ割りのスイカのように崩れてしまった。

 血だらけになった絵巳子には、何が起こったのか判らなかったが、義父の行為が一方的な男性による凌辱であるという事が判るのは、絵巳子が成人してからだった。

 母親が帰って来ると、血だらけの娘と無残に頭部が破戒された夫の姿で、叫び声も出せずに、立ち崩れて放心してしまった。

 母親が警察と救急車に電話をかけるのに、かなり、時間がかかったような感じだが、正確には10分という時間だった。

 母親は警察と救急車が来てから、ようやく感情を露わにして、泣いたり喚いたりし始めた。

 母親には婦人警官が寄り添い、絵巳子は救急車で病院に運ばれて、義父の遺体はストレッチャーで警察病院に運ばれていく。

 義父の検死の結果は内部からの異常な圧力による圧壊と断定されたが、それが可能なのか、どうかが問題になった。

 絵巳子の身体には異常はなかったが、PTSDを発症していないかどうか、あの時、何が起こったのか?と専門の心療士が付くことになった。

 だが、絵巳子の心の壁は厚く、謎は解けなかった。

 それから、母親と絵巳子のふたりの生活が始まった。

 週に数回の心療士によるPTSDの検査、義父が家に来る前までの日常に戻った。

 ある日、母親が何があったのかを絵巳子に聞こうとしたが、それは止めた。

 やがて、絵巳子は中学に進学して高校に行き、大学を卒業した。

 何も事件が起こらない10数年だった。

 就職が決まり、会社帰りのある日、事件が起こった。

 信号は青だった。

 横断歩道を歩いていると、猛スピードで走って来る暴走車が絵巳子の方に近付いた。

 絵巳子は突然の「質量」に驚き、一瞬、目に入った暴走車を視認した。

 その瞬間、暴走車は内部から暴発した。

 絵巳子はようやく自分の能力を自覚した。
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