深夜タクシー

まるさんかくしかく

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深夜タクシー

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 はい。どちらまで。はい。あそこですね。昔は酒場で栄えた所ですが、今は少し寂れているようで。えっ。知り合いの方がお店を開かれた。これはすいません。言葉が過ぎました。でも、お店を開くなら、今、お乗りなった辺りの方が栄えてますよ。お客さんの流れが少し変わって。ほら、ニュースでも話題になりましたでしょう。あそこの飲み屋街からボヤが大火事になって。店にいた客、飲み屋で働く女の人たち。煙に巻かれて、倒れている内に、火事に巻き込まれて。誰が誰やら判らない状態で。元々が戦後の闇市のバラックに取ってつけたようなアーケードを付けて、そこに飲み屋街出来たという。全国の何処にであるような、何とか銀座の典型で。で、まぁ、生き残った店主とか、ボヤで焼き残った店主がもう一度、やり直すという事で、やり始めたんですが、今の消防法だとアウトだったでしょうね、前の飲み屋街が。同じ通りの再現が出来ない。間隔を広げるような感じで。ガラーンとしてしまって。それに加えて、ここだけの話なんですが、その夜中にやっている店に、常連だった人や同伴の女の子が来るんですが、あの子、この前の事故で死んだ人だろうって。よくあるらしいんですよ。明るく、よぉと声をかけた人の顔を見たら、煤で汚れているとか。典型的都市型の幽霊話ですな、これは。で、お客さん、目的の場所まで、もうすぐなんですが、手前で止めますか、前で止めますか。あぁ、前まで。はい。でも、あそこは今日、お披露目された慰霊碑の前ですよ。えっ、私もあそこに用があるんだろうって。判ります?私もあの日にやられちゃって。お客さんみたいな人を乗せて運んでいるんですよ。いやぁ、お互い、大変でしたね。と、着きましたよ。私ですか?次のお客さんを迎えに、いかなきゃならない。まぁ、後で桜の下、飲み明かしましょうや。じゃ、私は、これで。
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