天使が来た日

まるさんかくしかく

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天使が来た日

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 ノックの音がした。ある日の昼下がり。休日の洗濯も掃除も終えて、のんびりとテレビを見ながら過ごしていると、玄関をノックする音が聞こえた。誰だろう。友人はドライブで小旅行に行くと言っていたし、彼女はない。身内はおらず天涯孤独の人間だ。誰だろう。少し身構えてしまう。
 「どちら様ですか?」と私は聞いた。すると、綺麗な声で「こんにちは。私は天使です。ドアを開けて私を入れて下さい」と言って来た。
 のぞき窓から、外を見ると綺麗なドレスに羽を付けた女性が立っていた。
 「あの。すいません。コスプレをした新興宗教の勧誘はお断りです」
 私はドアを開けるのを拒否した。すると、彼女は「信じて下さい。本当に天使です。玄関に置いてある花瓶に枯れた花が入れたままでしょう。生き返らせてみます」と言うと、ゴミとして処分しこねた花が見る見るうちに生き返った。
 「すみません。これは新手の手品ですか?」
 「違います。神の御業です。信じてください」外の女性が懇願するので、ドアを開けた。「ありがとうございます。信じて下さったんですね」
 「いえ、らちが明かないから、開けただけです。用事は何ですか?」
 「実は、天国からお迎えに来ました」ふざけていると思い、ドアを閉めかけた。「もうすぐ、この上空にミサイル飛んできて、この辺一帯の人はお亡くなりになります。無辜の命が不幸な戦争で死ぬのは耐えられません」
 マンションの他の部屋を見渡すと、同じような衣装の人たちが立っていた。
 空を見上げると、何か黒い影がやって来て、激しく光を放った。
 爆発したのだろう。
 私は天使に手を引かれて天国に行った。
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