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一年目
14点 4人目
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2組の男子と連絡先を交換した次の日の放課後、一通のメールが届いていた。メールの差出人は4人の中でも小太りの男子からであった。確か彼は太っているから部活をする気はない、と断っていた人のはずだ。
メールの内容は『今日の放課後に中庭のケヤキの木のベンチで待ってる。』という内容であった。この学校の中庭にはいくつもの種類の木が立っている。その中でも他の木よりも倍近く大きいケヤキの木があり、その前のベンチには大きな木陰が出来ているため、昼休みや放課後によく生徒が座って友達と談笑しているところをよく見ていた。
日笠にこのことを話すと、俺も行くわ、と言い教科書を整理しながらカバンの中を素早く整えていた。同様に東堂にも連絡を取ると『分かった』とシンプルな内容のメールが届いた。
日笠と昇降口に向かうと、1組の靴箱の前に東堂がもたれかかって俺たちを待っていた。俺たちに気づくと、ようと軽く手を挙げてきた。それから学校指定の上履きから普段履いている靴に履き替え、彼が待っているケヤキのベンチへと三人で歩いた。
中庭には数人の女子生徒が仲良く話していた。恋愛話や最近のJ-POPについて熱い話し声が聞こえてくる。女子の甲高い声が俺の耳までよく届いて来ていた。
ケヤキのベンチが見えてくると、昨日会話をした彼がいた。彼は猫背のまま携帯を構いながら、ベンチに座っていた。俺たちが彼に近づくと足音に気づいたのか、ふと顔を上げた。
「あっ」
彼は俺の顔を見るとベンチから立ち上がり背筋を正した。よく近くで見ると額にうっすらと汗が光っているのが見えた。
「待たせてごめんね。確か真泉 修一(まいずみ しゅういち)くんだよね?」
「うん」
真泉は俺の後ろにいた日笠と東堂をチラチラと見ていた。
「この二人が昨日言っていたバスケ部を一緒に作る日笠と東堂だ。左にいるのが俺と同じ4組の日笠で、こっちが1組の東堂ね。」
二人を紹介すると真泉は軽く一礼した。そのとき首を曲げるとできるお肉がなんとも柔らかそうだった。
「それでどうかしたの?」
俺が質問すると真泉は一拍間をおいて話し出した。
「昨日バスケ部を作るって言ってただろう?実は俺小学生のころにバスケしてたんだ。」
「え、まじかよ!なら一緒に...」
真泉の言葉を聞き日笠は嬉しそうに話した。しかしそれを阻むように真泉は続けた。
「でも、高校受験をきっかけに体重が90キロを超えてしまったんだ。バスケは特に走るスポーツだから、こんな状態じゃあの頃みたいに走ることなんかできないよ。練習や試合も皆の足を引っ張ることになるだろうし。」
真泉は俯きながら話をしていた。日笠も真泉の言葉を聞き話を打ち切った。
「バスケをする気はあるの?」
俺は真泉に少し近づきながら尋ねた。
「小学のころバスケをしてて楽しかったんだ。」
「だったら高校でも一緒にどう?」
なんとか日笠が説得するが体重がとか、体系がとかで中々話がまとまらない。本人的にはあまり強くやる気が感じられなかった。
「だったらダイエットって目的で始めたらどうなんだ?」
俺の後ろで聞いていた東堂が直球に発言を投げてきた。東堂の言葉を聞き、さすがの日笠も驚いていた。
「ダイエット?」
「あぁ、ダイエットっていう目的ですれば、練習や試合で足を引っ張るなんか思わなくてすむだろ?」
真泉は東堂の言葉を静かに聞いていた。
「俺だってバスケする気になったのはさ、女子バスケ部の先輩に一目惚れしたからだしさ。」
「え、一目惚れ?」
真泉は驚いたように尋ねた。
「あぁ、それが顔がすごい俺好みでしかもおっぱいが大きいんだよ。それにこいつらだって試合に勝ちたいとか以前にバスケがしたいから作ろうとしてるんだから、理由なんてくだらないものなんかいらないんじゃないか?」
「東堂の言う通り体型とか体重とか気にしなくていいんだぜ?」
日笠も東堂の意見に賛同しているようだ。しかし真泉は納得のいっていない顔をしていた。
「真泉は身長いくつあるんだ?」
真泉は不意に顔を上げて答えた。
「最近測ってないから分からないけど、中学卒業時には179cmだったよ。」
「だったら体重が75キロになるまでバスケ部を続けるってのはどうだ?目的があるなら目標も定まってた方がやる気になるだろ。」
真泉は未だうつむいたままだった。
「どうする?」
俺が真泉の肩に手を置くと、決心したような顔をしていた。
「分かった。バスケ部に入る。体重が75キロになるまでダイエット目的でやるよ。」
「よっしゃ、よろしくな。」
無理やりではあるがなんとか4人目のメンバーを確保することが出来た。話を聞くと、小学生の頃にはCのポジションだったらしいので、即戦力だ。これであと一人人数が増えれば試合が一応はできる。また顧問の先生も併用に探さなければならない。
「他の2組の人はどうだって?」
真泉に聞くとこもった声で話し始めた。
「一人はもうサッカー部に入っているらしくて、あとの二人はたぶん無理だと思うよ。しつこ過ぎたら逆に避けられるだろうから。」
これでとうとう1年生全員に当たったため、2年生の人を考えなければならなくなった。
メールの内容は『今日の放課後に中庭のケヤキの木のベンチで待ってる。』という内容であった。この学校の中庭にはいくつもの種類の木が立っている。その中でも他の木よりも倍近く大きいケヤキの木があり、その前のベンチには大きな木陰が出来ているため、昼休みや放課後によく生徒が座って友達と談笑しているところをよく見ていた。
日笠にこのことを話すと、俺も行くわ、と言い教科書を整理しながらカバンの中を素早く整えていた。同様に東堂にも連絡を取ると『分かった』とシンプルな内容のメールが届いた。
日笠と昇降口に向かうと、1組の靴箱の前に東堂がもたれかかって俺たちを待っていた。俺たちに気づくと、ようと軽く手を挙げてきた。それから学校指定の上履きから普段履いている靴に履き替え、彼が待っているケヤキのベンチへと三人で歩いた。
中庭には数人の女子生徒が仲良く話していた。恋愛話や最近のJ-POPについて熱い話し声が聞こえてくる。女子の甲高い声が俺の耳までよく届いて来ていた。
ケヤキのベンチが見えてくると、昨日会話をした彼がいた。彼は猫背のまま携帯を構いながら、ベンチに座っていた。俺たちが彼に近づくと足音に気づいたのか、ふと顔を上げた。
「あっ」
彼は俺の顔を見るとベンチから立ち上がり背筋を正した。よく近くで見ると額にうっすらと汗が光っているのが見えた。
「待たせてごめんね。確か真泉 修一(まいずみ しゅういち)くんだよね?」
「うん」
真泉は俺の後ろにいた日笠と東堂をチラチラと見ていた。
「この二人が昨日言っていたバスケ部を一緒に作る日笠と東堂だ。左にいるのが俺と同じ4組の日笠で、こっちが1組の東堂ね。」
二人を紹介すると真泉は軽く一礼した。そのとき首を曲げるとできるお肉がなんとも柔らかそうだった。
「それでどうかしたの?」
俺が質問すると真泉は一拍間をおいて話し出した。
「昨日バスケ部を作るって言ってただろう?実は俺小学生のころにバスケしてたんだ。」
「え、まじかよ!なら一緒に...」
真泉の言葉を聞き日笠は嬉しそうに話した。しかしそれを阻むように真泉は続けた。
「でも、高校受験をきっかけに体重が90キロを超えてしまったんだ。バスケは特に走るスポーツだから、こんな状態じゃあの頃みたいに走ることなんかできないよ。練習や試合も皆の足を引っ張ることになるだろうし。」
真泉は俯きながら話をしていた。日笠も真泉の言葉を聞き話を打ち切った。
「バスケをする気はあるの?」
俺は真泉に少し近づきながら尋ねた。
「小学のころバスケをしてて楽しかったんだ。」
「だったら高校でも一緒にどう?」
なんとか日笠が説得するが体重がとか、体系がとかで中々話がまとまらない。本人的にはあまり強くやる気が感じられなかった。
「だったらダイエットって目的で始めたらどうなんだ?」
俺の後ろで聞いていた東堂が直球に発言を投げてきた。東堂の言葉を聞き、さすがの日笠も驚いていた。
「ダイエット?」
「あぁ、ダイエットっていう目的ですれば、練習や試合で足を引っ張るなんか思わなくてすむだろ?」
真泉は東堂の言葉を静かに聞いていた。
「俺だってバスケする気になったのはさ、女子バスケ部の先輩に一目惚れしたからだしさ。」
「え、一目惚れ?」
真泉は驚いたように尋ねた。
「あぁ、それが顔がすごい俺好みでしかもおっぱいが大きいんだよ。それにこいつらだって試合に勝ちたいとか以前にバスケがしたいから作ろうとしてるんだから、理由なんてくだらないものなんかいらないんじゃないか?」
「東堂の言う通り体型とか体重とか気にしなくていいんだぜ?」
日笠も東堂の意見に賛同しているようだ。しかし真泉は納得のいっていない顔をしていた。
「真泉は身長いくつあるんだ?」
真泉は不意に顔を上げて答えた。
「最近測ってないから分からないけど、中学卒業時には179cmだったよ。」
「だったら体重が75キロになるまでバスケ部を続けるってのはどうだ?目的があるなら目標も定まってた方がやる気になるだろ。」
真泉は未だうつむいたままだった。
「どうする?」
俺が真泉の肩に手を置くと、決心したような顔をしていた。
「分かった。バスケ部に入る。体重が75キロになるまでダイエット目的でやるよ。」
「よっしゃ、よろしくな。」
無理やりではあるがなんとか4人目のメンバーを確保することが出来た。話を聞くと、小学生の頃にはCのポジションだったらしいので、即戦力だ。これであと一人人数が増えれば試合が一応はできる。また顧問の先生も併用に探さなければならない。
「他の2組の人はどうだって?」
真泉に聞くとこもった声で話し始めた。
「一人はもうサッカー部に入っているらしくて、あとの二人はたぶん無理だと思うよ。しつこ過ぎたら逆に避けられるだろうから。」
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