14 / 18
一年目
14点 4人目
しおりを挟む
2組の男子と連絡先を交換した次の日の放課後、一通のメールが届いていた。メールの差出人は4人の中でも小太りの男子からであった。確か彼は太っているから部活をする気はない、と断っていた人のはずだ。
メールの内容は『今日の放課後に中庭のケヤキの木のベンチで待ってる。』という内容であった。この学校の中庭にはいくつもの種類の木が立っている。その中でも他の木よりも倍近く大きいケヤキの木があり、その前のベンチには大きな木陰が出来ているため、昼休みや放課後によく生徒が座って友達と談笑しているところをよく見ていた。
日笠にこのことを話すと、俺も行くわ、と言い教科書を整理しながらカバンの中を素早く整えていた。同様に東堂にも連絡を取ると『分かった』とシンプルな内容のメールが届いた。
日笠と昇降口に向かうと、1組の靴箱の前に東堂がもたれかかって俺たちを待っていた。俺たちに気づくと、ようと軽く手を挙げてきた。それから学校指定の上履きから普段履いている靴に履き替え、彼が待っているケヤキのベンチへと三人で歩いた。
中庭には数人の女子生徒が仲良く話していた。恋愛話や最近のJ-POPについて熱い話し声が聞こえてくる。女子の甲高い声が俺の耳までよく届いて来ていた。
ケヤキのベンチが見えてくると、昨日会話をした彼がいた。彼は猫背のまま携帯を構いながら、ベンチに座っていた。俺たちが彼に近づくと足音に気づいたのか、ふと顔を上げた。
「あっ」
彼は俺の顔を見るとベンチから立ち上がり背筋を正した。よく近くで見ると額にうっすらと汗が光っているのが見えた。
「待たせてごめんね。確か真泉 修一(まいずみ しゅういち)くんだよね?」
「うん」
真泉は俺の後ろにいた日笠と東堂をチラチラと見ていた。
「この二人が昨日言っていたバスケ部を一緒に作る日笠と東堂だ。左にいるのが俺と同じ4組の日笠で、こっちが1組の東堂ね。」
二人を紹介すると真泉は軽く一礼した。そのとき首を曲げるとできるお肉がなんとも柔らかそうだった。
「それでどうかしたの?」
俺が質問すると真泉は一拍間をおいて話し出した。
「昨日バスケ部を作るって言ってただろう?実は俺小学生のころにバスケしてたんだ。」
「え、まじかよ!なら一緒に...」
真泉の言葉を聞き日笠は嬉しそうに話した。しかしそれを阻むように真泉は続けた。
「でも、高校受験をきっかけに体重が90キロを超えてしまったんだ。バスケは特に走るスポーツだから、こんな状態じゃあの頃みたいに走ることなんかできないよ。練習や試合も皆の足を引っ張ることになるだろうし。」
真泉は俯きながら話をしていた。日笠も真泉の言葉を聞き話を打ち切った。
「バスケをする気はあるの?」
俺は真泉に少し近づきながら尋ねた。
「小学のころバスケをしてて楽しかったんだ。」
「だったら高校でも一緒にどう?」
なんとか日笠が説得するが体重がとか、体系がとかで中々話がまとまらない。本人的にはあまり強くやる気が感じられなかった。
「だったらダイエットって目的で始めたらどうなんだ?」
俺の後ろで聞いていた東堂が直球に発言を投げてきた。東堂の言葉を聞き、さすがの日笠も驚いていた。
「ダイエット?」
「あぁ、ダイエットっていう目的ですれば、練習や試合で足を引っ張るなんか思わなくてすむだろ?」
真泉は東堂の言葉を静かに聞いていた。
「俺だってバスケする気になったのはさ、女子バスケ部の先輩に一目惚れしたからだしさ。」
「え、一目惚れ?」
真泉は驚いたように尋ねた。
「あぁ、それが顔がすごい俺好みでしかもおっぱいが大きいんだよ。それにこいつらだって試合に勝ちたいとか以前にバスケがしたいから作ろうとしてるんだから、理由なんてくだらないものなんかいらないんじゃないか?」
「東堂の言う通り体型とか体重とか気にしなくていいんだぜ?」
日笠も東堂の意見に賛同しているようだ。しかし真泉は納得のいっていない顔をしていた。
「真泉は身長いくつあるんだ?」
真泉は不意に顔を上げて答えた。
「最近測ってないから分からないけど、中学卒業時には179cmだったよ。」
「だったら体重が75キロになるまでバスケ部を続けるってのはどうだ?目的があるなら目標も定まってた方がやる気になるだろ。」
真泉は未だうつむいたままだった。
「どうする?」
俺が真泉の肩に手を置くと、決心したような顔をしていた。
「分かった。バスケ部に入る。体重が75キロになるまでダイエット目的でやるよ。」
「よっしゃ、よろしくな。」
無理やりではあるがなんとか4人目のメンバーを確保することが出来た。話を聞くと、小学生の頃にはCのポジションだったらしいので、即戦力だ。これであと一人人数が増えれば試合が一応はできる。また顧問の先生も併用に探さなければならない。
「他の2組の人はどうだって?」
真泉に聞くとこもった声で話し始めた。
「一人はもうサッカー部に入っているらしくて、あとの二人はたぶん無理だと思うよ。しつこ過ぎたら逆に避けられるだろうから。」
これでとうとう1年生全員に当たったため、2年生の人を考えなければならなくなった。
メールの内容は『今日の放課後に中庭のケヤキの木のベンチで待ってる。』という内容であった。この学校の中庭にはいくつもの種類の木が立っている。その中でも他の木よりも倍近く大きいケヤキの木があり、その前のベンチには大きな木陰が出来ているため、昼休みや放課後によく生徒が座って友達と談笑しているところをよく見ていた。
日笠にこのことを話すと、俺も行くわ、と言い教科書を整理しながらカバンの中を素早く整えていた。同様に東堂にも連絡を取ると『分かった』とシンプルな内容のメールが届いた。
日笠と昇降口に向かうと、1組の靴箱の前に東堂がもたれかかって俺たちを待っていた。俺たちに気づくと、ようと軽く手を挙げてきた。それから学校指定の上履きから普段履いている靴に履き替え、彼が待っているケヤキのベンチへと三人で歩いた。
中庭には数人の女子生徒が仲良く話していた。恋愛話や最近のJ-POPについて熱い話し声が聞こえてくる。女子の甲高い声が俺の耳までよく届いて来ていた。
ケヤキのベンチが見えてくると、昨日会話をした彼がいた。彼は猫背のまま携帯を構いながら、ベンチに座っていた。俺たちが彼に近づくと足音に気づいたのか、ふと顔を上げた。
「あっ」
彼は俺の顔を見るとベンチから立ち上がり背筋を正した。よく近くで見ると額にうっすらと汗が光っているのが見えた。
「待たせてごめんね。確か真泉 修一(まいずみ しゅういち)くんだよね?」
「うん」
真泉は俺の後ろにいた日笠と東堂をチラチラと見ていた。
「この二人が昨日言っていたバスケ部を一緒に作る日笠と東堂だ。左にいるのが俺と同じ4組の日笠で、こっちが1組の東堂ね。」
二人を紹介すると真泉は軽く一礼した。そのとき首を曲げるとできるお肉がなんとも柔らかそうだった。
「それでどうかしたの?」
俺が質問すると真泉は一拍間をおいて話し出した。
「昨日バスケ部を作るって言ってただろう?実は俺小学生のころにバスケしてたんだ。」
「え、まじかよ!なら一緒に...」
真泉の言葉を聞き日笠は嬉しそうに話した。しかしそれを阻むように真泉は続けた。
「でも、高校受験をきっかけに体重が90キロを超えてしまったんだ。バスケは特に走るスポーツだから、こんな状態じゃあの頃みたいに走ることなんかできないよ。練習や試合も皆の足を引っ張ることになるだろうし。」
真泉は俯きながら話をしていた。日笠も真泉の言葉を聞き話を打ち切った。
「バスケをする気はあるの?」
俺は真泉に少し近づきながら尋ねた。
「小学のころバスケをしてて楽しかったんだ。」
「だったら高校でも一緒にどう?」
なんとか日笠が説得するが体重がとか、体系がとかで中々話がまとまらない。本人的にはあまり強くやる気が感じられなかった。
「だったらダイエットって目的で始めたらどうなんだ?」
俺の後ろで聞いていた東堂が直球に発言を投げてきた。東堂の言葉を聞き、さすがの日笠も驚いていた。
「ダイエット?」
「あぁ、ダイエットっていう目的ですれば、練習や試合で足を引っ張るなんか思わなくてすむだろ?」
真泉は東堂の言葉を静かに聞いていた。
「俺だってバスケする気になったのはさ、女子バスケ部の先輩に一目惚れしたからだしさ。」
「え、一目惚れ?」
真泉は驚いたように尋ねた。
「あぁ、それが顔がすごい俺好みでしかもおっぱいが大きいんだよ。それにこいつらだって試合に勝ちたいとか以前にバスケがしたいから作ろうとしてるんだから、理由なんてくだらないものなんかいらないんじゃないか?」
「東堂の言う通り体型とか体重とか気にしなくていいんだぜ?」
日笠も東堂の意見に賛同しているようだ。しかし真泉は納得のいっていない顔をしていた。
「真泉は身長いくつあるんだ?」
真泉は不意に顔を上げて答えた。
「最近測ってないから分からないけど、中学卒業時には179cmだったよ。」
「だったら体重が75キロになるまでバスケ部を続けるってのはどうだ?目的があるなら目標も定まってた方がやる気になるだろ。」
真泉は未だうつむいたままだった。
「どうする?」
俺が真泉の肩に手を置くと、決心したような顔をしていた。
「分かった。バスケ部に入る。体重が75キロになるまでダイエット目的でやるよ。」
「よっしゃ、よろしくな。」
無理やりではあるがなんとか4人目のメンバーを確保することが出来た。話を聞くと、小学生の頃にはCのポジションだったらしいので、即戦力だ。これであと一人人数が増えれば試合が一応はできる。また顧問の先生も併用に探さなければならない。
「他の2組の人はどうだって?」
真泉に聞くとこもった声で話し始めた。
「一人はもうサッカー部に入っているらしくて、あとの二人はたぶん無理だと思うよ。しつこ過ぎたら逆に避けられるだろうから。」
これでとうとう1年生全員に当たったため、2年生の人を考えなければならなくなった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説



切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

AGAIN 不屈の挑戦者たち
海野 入鹿
青春
小3の頃に流行ったバスケ漫画。
主人公がコート上で華々しく活躍する姿に一人の少年は釘付けになった。
自分もああなりたい。
それが、一ノ瀬蒼真のバスケ人生の始まりであった。
中3になって迎えた、中学最後の大会。
初戦で蒼真たちのチームは運悪く、”天才”がいる優勝候補のチームとぶつかった。
結果は惨敗。
圧倒的な力に打ちのめされた蒼真はリベンジを誓い、地元の高校へと進学した。
しかし、その高校のバスケ部は去年で廃部になっていた―
これは、どん底から高校バスケの頂点を目指す物語
*不定期更新ですが、最低でも週に一回は更新します。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる