SANYO

キンカク

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一年目

9点 誘い

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  俺と日笠は昼ごはんを食べ終え、最初に1年1組の教室に向かった。教室に向かう途中、一切男子の制服を見ることなく女子としかすれ違わなかった。男子は少ないがその分いいこととして、廊下を歩くだけで甘い香りが鼻孔を刺激してくる。様々なシャンプーの匂いや香水の匂いがいい意味で喧嘩していない。
  1組の教室に着きチラッと教室の様子をのぞいた。やはり教室の様子は俺のクラスと同様、女子しか目に写ってこない。そんな中から男子を探すと一人、教室の一番後ろの席でアゴに手を添えながら、校庭を見て黄昏ている生徒がいた。
  俺と日笠は同時に教室に入りその男子生徒の元に歩いた。周りの女子生徒からは誰だろう、という視線を感じたがそろそろこれにも慣れ始めていた。
  俺たちが近くまでくると男子生徒が顔を振り向けてきた。
  「はじめまして。俺は1年4組の日笠ってもんで、こいつは同じクラスの菊川ってもん。急に押しかけてすまないね。」
  日笠の話を表情一つ変えることなく聞いていた。
  「名前を聞いてもいいかな?」
  日笠が質問すると彼はアゴから手を離した。
  「俺は東堂竜也(とうどう たつや)って名前だけど。何しに来たの?」
  「東堂くんはどうしてこの学校に入学したの?」
  「特に理由はないけど、強いて言うなら家から近いからかな。」
  「東堂くんは中学の頃は何部に入ってたの?」
  「中学の頃はバドミントン部だったけどそれがなんなの?」
  日笠は徐々に核心に迫るように質問を繰り返した。
  「数少ない男子だから仲良くなりたくてさ。放課後とかはいつも何してるの?」
  「バイトがある日はバイトしてるよ。それ以外の日はすぐ帰ってる。」
  「バイトは何曜日にあるの?」
  「だいたい水曜日と土曜日に入ってる。」
  日笠は東堂に自らのペースで話しかけ続けた。そしてついに核心に迫る質問をした。
  「東堂くん、バスケに興味ないか?」
  「バスケ?特には無いけど。」
  「俺と菊川でさ男子バスケ部を作ろうと思ってるんだ。でも今は二人しかいないから人数がどうしても欲しいんだよ。ということで一緒にどう?」
  東堂はいまいちピンときていない様子だった。
  「俺バスケには興味ないからごめんな。」
  日笠は東堂の言葉を聞いてもなお詰め寄った。
  「それならさ、今日女子バスケ部の練習見に行かないか?バスケがどういうものか知ってみるのもいいと思うぜ。それに今日は木曜日だからバイトも無いだろ?」
  「たしかにバイトは無いけどさ。」
  日笠は東堂の反応を見てトドメをさした。
  「ここの女バス可愛い子多いんだよ。興味ないか?」
  「え、いく。」
  東堂は一瞬にして表情を変え、あっけなく承諾した。東堂は結局のところ可愛い女の子に目がないんだろうという事が分かった。
  「よし!そうと決まれば今日の放課後見に行こうか。」
  「分かった。」
  それにしても東堂、さっきまでと食いつきようが全くの別人だぞ。すごい話しかけるなオーラを放っていたのに。
  しかし日笠も人を乗せることが上手だな。これならすぐにでも人数が集まる気がする。
  それから東堂と連絡先を交換して教室を出た。
  「お前かなり強引な手を使ったな。」
  「男は結局女好きなんだよ。こんな女子しかいない学校に来る時点でそれは確定してるんだよ。」
  日笠はにんまりしながらニャハハハと笑った。
  次に俺たちは2組の教室へと向かった。
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