SANYO

キンカク

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一年目

6点 話し合い

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  日笠を追い昇降口へと向かうと、日笠ともう一人のクラスメイトの男子、千田がいた。
  「おう、菊川。たまたま千田もいたから3人で行くか!」
  「日笠、作戦会議って昨日話したことか?」
  「もちろんだとも。」
  昨日の話とは、日笠と職員室を出た後に二人で話し合ったことだろう。それは二人でバスケ部を発足させよう、という話し合いだった。
  日笠を先頭に俺と千田は学校を出た。
  「千田は今から帰るとこだったのか?」
  日笠が顔を後ろに回し尋ねた。
  「うん、特にやることないしね。」
  「そっか、なら誘って正解だったな。よーし、マックへ行くぞ!」
  日笠はハイテンションのまま歩き出した。
  そうこうするうちに学校を出て二十分くらいで目的地に到着した。店内に入り各々セットメニューを注文し、空いている席に座った。
  「よし!じゃあ作戦会議だな。」
  日笠は注文したコーラを飲みながら話した。
  「作戦会議ってなに?」
  千田はいまいちピンときていないようだ。それもそのはずだ。急に誘われてここにいるのだから。
  「千田は知らないだろうけどな、俺と菊川はバスケ部に入るつもりだったんだよ。でも昨日進路の先生から聞いたらなんと、俺たちの高校には男子バスケ部がないらしいんだよ。」
  日笠は淡々と千田に説明して言った。しかし千田自身はまだピンときていない様子だった。
  「だから昨日話し合って、俺と菊川でバスケ部作ろうぜ、ってなった訳よ。」
  俺はチーズバーガーをむさぼりながら二人の話を聞いた。
  「だからよ、一緒にバスケしないか?」
  日笠は千田にキラキラした視線を向けながら身を乗り出した。
  「いや、僕は別にいいよ」
  千田はうつむきながら答えた。
  「何でだよ?他の部活に入るつもりなのか?」
  「この学校に中学の先輩がいて、サッカー部に入るように言われてるからさ。」
  そういえば昨日、進路の先生が男子の運動部はサッカー部しかないって言っていた気がする。
  「そこを何とかならないかな?」
  日笠は両手をこすり合わせながらお願いした。
  「ごめんね、日笠くん。今サッカー部は部員が10人しかいないらしくて、僕が入らないと試合ができる人数にならないんだよ。」
  「そこをなんとか頼む!」
  日笠はまだ攻め込んできた。しかし千田が入らないと試合ができる人数にならないなら無理な気がする。千田はバスケ部に入る気はないはずだ。
  「日笠、もういいよ。千田くんはサッカー部に入るって言ってるんだからしょうがないよ。また明日他の人あたろう。」
  俺の言葉を聞き日笠はようやく諦めがついたようだ。
  「そっか、残念だけどしょうがないか。千田、しつこくて悪かったな。」
  「いや僕こそ期待に応えれなくてごめんね。」
  日笠は飲んでいたコーラを勢いよく一気に飲み干した。
  「ならこの話は終わり!クラスの数少ない男子同士仲良くしようぜ!」
  日笠は俺と千田に満面の笑みを浮かべた。
  「うん、よろしく。」
  千田もようやく笑顔をこぼした。
  「華やかしい高校生活送らなくちゃな。」
  俺の言葉に日笠は敏感に反応した。
  「そうとも!せっかくの高校生活楽しまねーと!せっかく女子の方が多いんだから、彼女の一人や二人作らないと。菊川は顔整ってるし高身長でモテそうだから羨ましいぜ。」
  「うん、昨日の菊川くんの自己紹介のときに、僕の周りの席の子たちが、カッコいい、ってずっと言ってたよ。」
  千田も日笠の意見に賛同してきた。
  「いや、そんなことないよ。俺まだ女の子と付き合ったことないし。」
  俺の言葉を聞き二人は驚いた様子だった。
  「えっ、お前彼女出来たことないの?!」
  「ああ、ないよ。」
  日笠と千田は驚きのあまり食べる手を止め、俺の方を見ていた。
  「絶対色々してそうな感じだったのに。なんか意外だね。」
  千田は一体どういう目で俺を見ていたんだ。
  それからも軽い雑談を話しながら、気づくと19時をもう回っていた。
  「もう暗くなってきたから、解散としましょうか。」
  日笠の提案で俺たちはマックを出た。外はすでに街灯がつき始めていた。
  「それじゃ、また明日な。」
  「うん、今日は楽しかったよ。日笠くん菊川くんありがとう。」
  「いいってことよ、なあ菊川。」
  「うん、同じクラスだから仲良くなりたかったし。」
  俺たち三人は別々の方向だったためマックで解散した。
  それにしても今日は千田とも仲良くなれたしいい一日になった。
  
  
  
  
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