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一年目
5点 第一関門
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俺はいつもより一時間も早く目を覚ました。もう4月だというのに、今日は肌寒い気温だ。
自分の部屋を出て、リビングに入るとすでに母親が起きており朝ごはんの用意ができていた。
「おはよう。早く起きてくると思ったわ。」
どうやら母は俺の心情を読む特殊能力者のようだ。
ご飯やみそ汁からは湯気が立っている。おそらく出来立てなのだろう。俺は猫舌のためわがままを言うと、せめてあと少しだけ冷ましておいてほしかった。
椅子に座り箸を取ってみそ汁を口に注いだ。うん、熱いね。舌が受け付けない。しなし今日は時間に余裕があるため、ゆっくり食べてもよさそうだ。
俺が起きてから30分くらい経ったくらいに妹の朱美(あけみ)がリビングに入ってきた。
「おはよ。お兄ちゃん、今日は珍しく早起きなんだね。」
朱美は大きくあくびをしながら俺の前の椅子に座った。
「今日から中2になったんだっけ?」
口にご飯を含みながら聞くと、朱美もご飯を食べながら答えた。
「そそ、しかも今日転校初日だしね。」
妹のルックスだとクラスの男子からは歓喜の声が上がるだろうな。神奈川にいた頃もかなりモテてたと聞くし、俺自身も妹は全国の中学生の中でもトップクラスに可愛いと思っている。母からはシスコンと言われているが、実際にそれは否めない。
「まあ頑張りなよ。」
「お兄ちゃんもね。」
小さいときはずっとくっついてきたのに、今では冷たくなった気がする。年頃の女の子の気持ちには疎いため、嫌われないように注意しなければならない。
ふと時計を見るとそろそろ家を出なければいけない時間になっていた。思った以上にゆっくり食べていたようだ。
再び自分の部屋に戻り制服に着替えた。鏡でじぶんの顔を見るが今日は寝癖がついていなかった。いつもならいろんな方向に髪が暴れているのに珍しい。
カバンをかけ自分の部屋を出た。すると向かいの部屋から朱美が同じタイミングで出てきた。
「お、朱美も今から行くのか。なんなら一緒に行くか?」
朱美は動くのをやめて一拍おいて口を開いた。
「別にいいよ。」
「そうだよな、嫌だよな。....ん?」
朱美の言葉に俺は驚いた。まさかオッケーが出るとは。
「いいの?」
「自分から言ってきたじゃん。」
これは嬉しい誤算だ。今日は朝からついてる。
俺は朱美と家を出て、学校までの道のりを軽い雑談をしながら歩いた。転校初日とあって口数も少なかったが、朱美もときおり笑顔になってくれていたので、緊張も少しは和らいだであろう。
朱美の中学校が見えてくると、朱美の顔が少し引きつり始めた。
「俺も一緒に職員室行こうか?」
「いや、一人で大丈夫。それじゃあね。」
そう言って朱美は一人で学校の正門に歩いて行った。俺は朱美の背中を見送りふと腕時計に目をやると、すでに八時二十分だった。ここから俺の高校まで歩いてあと二十分はかかる。
「やべぇ、遅刻になる。」
全速力で学校に向かった。
教室に着くとあと五分で朝礼だった。なんとかギリギリ間に合った。
息づかいの荒いまま席に着くと日笠が足早に駆け寄ってきた。
「よう!まさか入学二日目で遅刻しそうになるとかお前もやるな。」
相変わらずニコニコしているな。
「そんなことよりも今日の放課後、時間あるか?」
俺は呼吸が整わないまま答えた。
「あぁ、空いてるよ。」
「ならマックで作戦会議な!」
一体なんなんだ、作戦会議って。
俺が日笠に尋ねようとすると担任の横山が教室に入ってきた。
「おーし、みんな席に着けよ。朝礼始めるぞ。」
今日は学校案内と教科書配布だけのためすぐに放課後はやってきた。
「よーし、菊川行くぞ。」
日笠は俺の背中を押すとニャハハハと笑いながら教室を出て行った。
自分の部屋を出て、リビングに入るとすでに母親が起きており朝ごはんの用意ができていた。
「おはよう。早く起きてくると思ったわ。」
どうやら母は俺の心情を読む特殊能力者のようだ。
ご飯やみそ汁からは湯気が立っている。おそらく出来立てなのだろう。俺は猫舌のためわがままを言うと、せめてあと少しだけ冷ましておいてほしかった。
椅子に座り箸を取ってみそ汁を口に注いだ。うん、熱いね。舌が受け付けない。しなし今日は時間に余裕があるため、ゆっくり食べてもよさそうだ。
俺が起きてから30分くらい経ったくらいに妹の朱美(あけみ)がリビングに入ってきた。
「おはよ。お兄ちゃん、今日は珍しく早起きなんだね。」
朱美は大きくあくびをしながら俺の前の椅子に座った。
「今日から中2になったんだっけ?」
口にご飯を含みながら聞くと、朱美もご飯を食べながら答えた。
「そそ、しかも今日転校初日だしね。」
妹のルックスだとクラスの男子からは歓喜の声が上がるだろうな。神奈川にいた頃もかなりモテてたと聞くし、俺自身も妹は全国の中学生の中でもトップクラスに可愛いと思っている。母からはシスコンと言われているが、実際にそれは否めない。
「まあ頑張りなよ。」
「お兄ちゃんもね。」
小さいときはずっとくっついてきたのに、今では冷たくなった気がする。年頃の女の子の気持ちには疎いため、嫌われないように注意しなければならない。
ふと時計を見るとそろそろ家を出なければいけない時間になっていた。思った以上にゆっくり食べていたようだ。
再び自分の部屋に戻り制服に着替えた。鏡でじぶんの顔を見るが今日は寝癖がついていなかった。いつもならいろんな方向に髪が暴れているのに珍しい。
カバンをかけ自分の部屋を出た。すると向かいの部屋から朱美が同じタイミングで出てきた。
「お、朱美も今から行くのか。なんなら一緒に行くか?」
朱美は動くのをやめて一拍おいて口を開いた。
「別にいいよ。」
「そうだよな、嫌だよな。....ん?」
朱美の言葉に俺は驚いた。まさかオッケーが出るとは。
「いいの?」
「自分から言ってきたじゃん。」
これは嬉しい誤算だ。今日は朝からついてる。
俺は朱美と家を出て、学校までの道のりを軽い雑談をしながら歩いた。転校初日とあって口数も少なかったが、朱美もときおり笑顔になってくれていたので、緊張も少しは和らいだであろう。
朱美の中学校が見えてくると、朱美の顔が少し引きつり始めた。
「俺も一緒に職員室行こうか?」
「いや、一人で大丈夫。それじゃあね。」
そう言って朱美は一人で学校の正門に歩いて行った。俺は朱美の背中を見送りふと腕時計に目をやると、すでに八時二十分だった。ここから俺の高校まで歩いてあと二十分はかかる。
「やべぇ、遅刻になる。」
全速力で学校に向かった。
教室に着くとあと五分で朝礼だった。なんとかギリギリ間に合った。
息づかいの荒いまま席に着くと日笠が足早に駆け寄ってきた。
「よう!まさか入学二日目で遅刻しそうになるとかお前もやるな。」
相変わらずニコニコしているな。
「そんなことよりも今日の放課後、時間あるか?」
俺は呼吸が整わないまま答えた。
「あぁ、空いてるよ。」
「ならマックで作戦会議な!」
一体なんなんだ、作戦会議って。
俺が日笠に尋ねようとすると担任の横山が教室に入ってきた。
「おーし、みんな席に着けよ。朝礼始めるぞ。」
今日は学校案内と教科書配布だけのためすぐに放課後はやってきた。
「よーし、菊川行くぞ。」
日笠は俺の背中を押すとニャハハハと笑いながら教室を出て行った。
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