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5 最強の魔導師

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「はなし……?」

 わたしは、たちまちこの青年のことが嫌いになった。

 たまに、いるのだ。

 こいつみたいに、ここへ来たのは性欲の処理が目的じゃない、と言いだす男が。
 
 わたしみたいな性奴隷に優しくして、ちょっと恋人のように接してやれば、それだけでこちらが惚れてくれると高をくくっている。

 性奴隷をセフレにできれば、しめたもの。それからは無駄な金を使わずに、いつでも女のカラダを好き勝手に使える、って寸法だ。

「ナメんじゃないわよぉっ!」

 と叫んで、青年にツバを吐きかけてやりたくなったが、もちろんそんなことはできない。

「……じゃあ、ちょっとだけ」

 わたしは、喜んでるフリをしながら青年に近づき、並んでベッドに腰かけた。

「わたしみたいな女と、どんな話がしたいの?」

 わたしが暗い床を見つめながらいうと、青年は微笑んでいった。

「君のこれからについて、さ」
「……わたしをこの店から買い上げて、あなたの妻にでもしてくれるの?」
「いや、そんなつもりはない」

 青年は、あっさりいった。

 わたしは、その答えを意外に思った。
 
 わたしをセフレにするつもりなら、ここは「いつかはそうしたいと思ってる」とかなんとか適当なことをいって、わたしに希望を持たせなくてはいけないところだ。

 この男、まだこういうコトに慣れていないのか、それとも、ただのバカなのか。

「そうよね……わたしみたいな汚い奴隷を妻にしてくれるひとなんて、いるわけないわよね……」
 
 わたしがわざとしょげてみせると、青年は、信じられない言葉を口にした。

「君は汚い奴隷なんかじゃないよ、
「えっ!? どうして、その名を……?」

 わたしはびっくりして、青年の顔をまじまじと見つめた。

 わたしは、この町へ来てからはずっとただの「エメリア」であって、誰にもわたしの姓を教えたことはない。

 もし、仮に「わたしの本当の名は、エメリア・ウィレーヌ。わたしはフォーラス王国の大貴族、ウィレーヌ公爵の娘なの」なんて話をしたら、周りの人間からはさんざん笑われて、馬鹿にされ、みじめな思いをするだけだとわかっていたからだ。

 だから、この青年がわたしの姓を知っているのなんて、あり得ない。
 絶対にあり得ないはずなのだ。

「あなた……、いったい誰なの?」

 すこしでも危険だと感じたらいつでも逃げられるように身構えながらわたしがきくと、青年はまた微笑んで、さらりといった。

「僕は、ルーフェイ。世界最強の魔導師だ」
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